10/31『トリック・オア・トリート』

「「「「トリックオアトリート!」」」」

「はーい、いらっしゃい。ゆっくりしていっていいからね」


 部活動の時に涼くんのお姉さんに誘われて、その時に教室にいた桜ちゃんとはーちゃんと来栖くんと私は、ハロウィンに日に涼くんの家に来ていた。


「今涼に用意させてるから、リビングで座ってていいよ〜」

「姉ちゃんとっとと戻ってきて手伝え!」


 キッチンの方から涼くんの声が聞こえた。お菓子作りを手伝わされてるのかな?

 私たちは藤ヶ谷咲さんのお言葉に甘えて、リビングで待っていることにした。座った途端に、


「ねね、お菓子何持ってきた?」

「はーちゃんはしゃぎすぎ。桜ちゃんとクッキー作ったよ」

「ねー。美味しくできたんだから。来栖あんたは?」

「俺はマドレーヌ買ってきたぜ」


 みんなで交換するための自分のお菓子を見せ合っている。

 と、キッチンからいい匂いが漂ってくる。


「みんなできたよー。藤ヶ谷家特性チーズケーキだ!」

「「「「おぉぉぉぉぉ!!」」」」


 それは見事なホールケーキだった。香ばしい匂いが漂って鼻をくすぐる。


「みんな思う存分食べて良いからな?」

「姉ちゃんは調味料の分量量っただけでしょう……」


 ドヤ顔で胸を貼って威張っている咲さんとは対照的に、どうやら料理のほぼ全般を担当して涼くんはぐったりしていた。

 どうやら藤ヶ谷家の家事は涼くんがやってるようだ。……この感じだと、涼くんは毎日大変そうだな。


「ともかくみんな、焼き立てのうちに食べちゃお。切り分けるから、涼が」

「「「「はーい!」」」」

「結局そうなるのか……」


 涼くんが切り分けていて、その間に咲さんもみんなとお菓子の食べ合いをしている。

 他の人の目を盗んで、涼くんの盛りつけの手伝いに向かう。


「お皿並べちゃうね」

「ん、さんきゅ」


 そして。

 しれっと、隣に立って。

 スッと、涼くんのポケットにお菓子を入れる。


「紅葉、なんか入れた?」

「さぁ? どうだろね」


 それは他のクッキーとは別に、りょうくん用に作ったものだった。

 涼くんはポケットを確認し、ふっ、と声を殺して笑った。そして私の方を見て手招きをする。


「じゃあ俺からも、これ」


 冷蔵庫から涼くんはシュークリームを取り出した。少し不細工な、手作り感の溢れるものだった。


「後で持って帰って、……初めて作ったから少し変かもしれないけど」

「……ふふ。同じこと考えてたみたいだね」


 二人とも互いを見て、笑い合った。


「ハッピーハロウィン、涼くん」

「あぁ。ハッピーハロウィン」





「……おーい、いちゃいちゃしてないで早くチーズケーキ運んでくれー」

「「い、いちゃいちゃしてないし!」」

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