第26話 最終準備

 金曜日。今週最後の居残り時間。

 宿の手配は滞りなく終わった。

 他にも必要な新幹線やバスのチケットや、団体参加の劇場の予約。


 そして、それらをまとめたしおり。

 なるべく見やすくまとめて、退屈しないように豆知識とかミニゲームのページも作って。

 手をかけた私たちの努力の結晶が……。


「「「できたぁ!!」」」


 林間学校の実行委員——主に学級委員会だ——が遅くまで教室に残り、最後の仕上げが終わってみんなで喜びあう。


「やっと仕事終わったぁ」

「お疲れ様、菊原さん」

「うん、矢下くんもお疲れ様」


 作業を始めた頃の窓から差し込んでいた夕日は、いつの間にか沈んで月が顔を出し始めていた。委員会のみんなで疲れを労いつつ、最終下校時刻が迫っているので片付けを始める。


「あ」


 ふと窓から外を眺めると、涼くんの姿が見えた。

 その後ろに咲さんの姿も見えたので、部活終わりだろう。


「菊原さん、行ってきたら?」

「え、でも片付けが……」

「いいよ。やっとくから」


 矢下くんは私の分の片付けまで始めてしまった。


「こういうのは任せ溶けばいいんだよ」

「そうそう! 今行かなきゃいつ行くのさ!」


 他のクラスの委員会の人もそう言ってくれる。

 ——なんかみんなニヤニヤしてるから、揶揄われてるだけな気もするけれど。


「えっと、じゃあ行ってきます……!」



 ***



「涼くん! 咲さん!」


 急いで階段を駆け下りて、なんとか二人の背中に追いつく。


「お、紅葉ちゃんじゃないか」

「お疲れ様。委員会の居残り?」

「そ。二人は部活?」

「うん。まぁそんなとこ」


 涼くんを咲さんと挟むようにして、3人で並んで歩く。


「あ、そうだ。林間学校のしおりできたの! 見てみて!」

「お、どれどれ」


 咲さんが涼くんから奪い取って、懐かしむように読んでいる。涼くんはすぐに読むのは諦めている。後でちゃんと見せてあげよう。


「ね、涼くん。楽しみだね」

「うん。実行委員様のプラン、楽しみにしてる」

「そ、そんなプレッシャーかけられても……」


 2人でふざけて笑い合う。


 さぁ、いよいよ勝負の林間学校の始まりだ。

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