第23話 閑話

 突然ですが、一年三組恋愛ROM委員会(非公式)会員のわたくし山田太郎は、現在重要な任務を任されていた。


「頼んだぞ山田!」

「お前にすべてがかかってるぞ山田!」


 自分の近くの席で組員の一員でもある香川かがわ君と桐谷きりたに君にもそう言われ、責任重大の状態である。その任務とは……。


「本当にありがとな、山田」

「ハイキングの時に続いて、ありがとうね。山田君」


 それは、藤ヶ谷涼×菊原紅葉のカップリングを上手く繋ぐことである。

 なんとこのカップリング、傍から見たらどう見ても付き合っているのに、まだ恋人ではないという。


 さらにそれだけではない。

 その二人とも同じ班員でもある来栖尊×和泉桜のカップルの進展も任されているのである。ここのカップルは付き合っているものの、先述のカップリングのフォローをしすぎて二人の時間が取れていないのだ(当委員会比)。


「あのコミュニティに入れるのは山田だけだ!」

「我々委員会の名誉にかけて、頑張ってくれ!」


 そして恋愛ROM委員会(非公式)の信条として『基本カップリングには手を出さない』があるので、もどかしい二組の男女ペアに助け舟を出すことができない。


 そこで二組共に面識があり、同じ班にも頼まれたので、わたくしが立ち上がったというわけだ。……といっても四人ともなかなかに鈍感なのである。それはハイキングの時にわかったことである。


「……ほんと、先が思いやられるでごわすな」





 ***



 班決めが終わった後、帰りの支度をしていると狩谷葉月が話しかけてきた。


「山田君、よろしくね。えへへっ」


 そうあざとく話しかけてきた彼女は、わたくしと同じく二組のカップルと同じ班になったのだ。


「狩谷はんも、助け舟を出すために?」

「うん、まぁね。もどかしいの見てられないじゃん?」

「でごわすね」


 一対一で話すのはほぼ初めてだけど、どうやららしいので何か通ずるものがあって、話すのはなんだか楽だった。

 最近もどかしいカップルたちのサポートが多かったので、たまには同じ目的を持ってる者同士お互いに語り合うのも悪くないだろう。


「というか、クラスのほとんどの人は応援してるんじゃないでごわすかね」

「そうよねぇ。なんか、すごく甘酸っぱくていい感じだし。あの二人」

「二人?」


 ん……?

 十中八九二人とは、藤ヶ谷菊原ペアのことだと思うけれど、なんだか少し違和感があった。


「? うん、ふじーとくーちゃん。だからさーちゃんたちと協力して仲を取り持つんでしょ? なるべく四人と二人で行動するようにして」

「二人ずつ三つに分かれるでごわすよ?」

「え?」


 あ、もしかして。


「……来栖はんと和泉はんが付き合ってるの、知らないでごわすか?」

「……え?」


 おしゃべりしてる場合じゃなくなった。

 これからちゃんと作戦会議をしなければならないようだ。

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