第22話 意識

「じゃあ私こっちだから。またね」

「うん。また明日」


 久しぶりに二人きりの下校。

 俺たちは電車で紅葉と分かれる。お互いの最寄駅が隣駅なのが少し惜しいけれど、まだ寄りを戻せていないのにそこまですることもないだろう。


「……」


 先ほどの紅葉の笑顔は、久しぶりに見た満面の笑みだった。


 ——いつもありがとね?


「くっ……」


 めちゃめちゃ可愛かった……。

 俺は自分の最寄駅に降りてから悶える。


 そして今日の自分の行動を振り返る。

 常に車道側を歩いたり、寄せるときに気をつけたりとか。


「わざとらしく、なかったよな……?」


 久しぶりの二人の時間だったから、舞い上がったというか。

 別に調子に乗ったわけじゃないんだけれど。


 今更ながら、自分の行動を振り返ってみて、急に恥ずかしくなってくる。

 らしくないこと、するもんじゃないなぁ。





「ただいま」

「お、帰ったか」

「姉ちゃんこそ帰ってたんだ」

「今日はバイトないからねぇ」


 家に帰ると、リビングに従姉妹の咲がいた。


「でも明日から6連勤だよ、辛いね……」

「うわ、きつそー」

「人足りねぇんだよ。涼もバイトする? 林間学校のお小遣いがてらに」

「んー、ありかもなぁ」


 林間学校でどのくらいお金を使うかわからないけど、多くにあるに越したことはない。日頃のお小遣いだけでちょっとした旅行を過ごすのは、厳しいかもしれない。


「考えとくよ。みんなにも相談してみる」

「おー、それがいい! 人手が増えると楽になるねぇ」

「結局それ目当てじゃんか!」


 とは言いつつも、みんなに相談してみる価値はある。みんなで短期でやるのも楽しいだろうし。


 2階に上がって自室に入ると、グループラインで相談してみることにした。



 ***



 りょー『と、言うわけなんだけど、みんなどうかな?』

 くるみこ『確かに』

 Saku『ありだなぁ』


 林間学校の班のメンバーのグループにチャットを送る。

 みんなも反応も悪くはない。


 紅葉🍁『あ、ごめん。学級委員と林間学校の準備でできないかも……』

 狩谷葉月『あら。それは残念ですね』


 が、紅葉はどうやら都合が合わないらしい。

 んーどうしたものか。


 山田『みんなでできないなら、やめとくでごわすか?』

 りょー『そうだね』

 Saku『大変なら手伝うからね−!』

 紅葉🍁『みんなありがとー!』


 委員会も林間学校の準備も、大変らしい。

 ……一緒にバイトもしてみたかったなぁ。


 姉ちゃんには後で謝っておこう。

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