第19話 日直

「……じゃあ今日の授業はここまで。日直は5限が始まる前に黒板を消しておくこと」

「涼くん、消しに行こ」

「あぁ」


 2人ともぎこちなさは残っているけれど、お互いにいい感じになってきていると思う。やっぱあたし努力して正解だったなぁ。なんて考えていると、あたしに向かってくる二つの影があった。


「ちょっとあんた、いったいどっいうつもりさ」

「涼ちゃんと菊原さんに変なこと吹き込んでないだろうな」


 確か、くーちゃんの親友の和泉桜さんとふじーの親友を名乗る来栖尊くん。二人の件で何か用事かな。


「どうしたの? 何か言いたそうな顔してるけれど」

「言いたそう、じゃなくて言いたいんだよ」

「いったいどういうつもり?」

「どういうつもりも何も、二人に幸せになってもらいたいだけだけど?」

「そういう人に限って裏があるんだよ」

「何を企んでいるの?」


 どうやら二人は私のことを疑ってかかっているようだ。別に悪いことしてないのになぁ。かくなる上は……。


「バレてしまっては仕方ない……。あたしの計画の全てを話そうか……」

「かっこつけなくていいからな」

「かっこよくないからね」

「ひどい言われようだね!!」








「……だから二人がすごく尊いと思うの!」

「「わかるー!」」

「あたしも少しだけ似たような境遇だからさ? 共感できるって言うか、あの二人には同じようになって欲しくないって言うか」


 休み時間をほとんど使って語り尽くしたらわかってくれた。それどころか意気投合して3人で見守ることになった。やっぱ話せばわかるってやつだね!


「それにほら、あの二人いい感じだよ?」



 ***



「さっきの先生筆圧濃いよなー。黒板にめっちゃ残るじゃん」

「ほんと。これじゃあ何往復すれば終わるかわかんないね」


 日直の仕事の定番として、黒板消しがある。これはめちゃくちゃ綺麗に消すタイプとそこそこ綺麗にするタイプとそれなりに消すタイプに分かれるが、僕はそれなりの人である。対して、紅葉はめちゃくちゃ綺麗にしたがるようだった。


「そこの長い黒板消し取って」

「おう」

「あ、こっちクリーナーかけといて」

「……はい」


 ど定番の高いところが消せないから僕が代わりに消してあげる、と言ったシチュエーションは起きなかったけど、これはこれでありな気がしてきた。


「クリーナーが甘い! もっと粉落として!」

「は、はい! 師匠!」



 ***



「あれはうまく行ってるのか?」

「なんかすごいことになってるけど」

「うん、思ってたのと違う」


 ……まぁそういう日もあるよね!

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