第18話 作戦会議 菊原紅葉の場合

『やっほー、くーちゃん!』

「やっほー、はーちゃん!」


 晩ご飯が終わり自室に戻ったところで、約束通り電話がかかってきた。ちなみにこの呼び方は夕方のLINEで話していたときに決めたもの。


『さて、作戦会議と行こう!!』

「……あー、やっぱりその話になる?」

『当たり前じゃん!』

「そっかぁ……」

『単刀直入に聞くけど、ふじーのことが好きなんだよね?』

「……う、うん」

『おぉー、こっちは素直だ』

「こっち?」

『今のなし。……それでふじーとは付き合いたいの?』

「それはまぁ……」

、付き合いたいの?』

「それができればいいんだけどね……」


 どうしてもこの話題は口籠ってしまう。確かにまだ涼くんのことが好きだ。もう一度付き合えればそれほどいいことはない。


「でも、それだとダメかなって思っちゃう自分がいるの」

『そうなの?』

「だって一度自分から身を引いちゃった身だし……」

『ふむ』

「それに微妙に涼くんに距離をとられているような気がするし……」

『ふむふむ」 』

「だからこそ悩ましいと言いますか、困っちゃうんだよね」

「ふむふむふむ。……一ついい?」

『は、はい! どうぞ先生』


 電話越しでもわかるような間の開け方、これはため息をついたのだろう。少々、いやかなり呆れたように彼女はこう言った。


『一度離れたことが、好きになったりもう一度付き合ったりしちゃいけない理由になるの?』

「それは……」

『この際だから言うけれど、多分ふじーはまだくーちゃんのこと好きだと思うよ? くーちゃんと同じような罪悪感も抱えてるだけで』

「……」


 この話をどこまで信じていいかわからない。だけれど、この子なら涼くんに聞きかねないとも思った。


『くーちゃん最初の頃は結構積極的に行ってたでしょ。あれでいいと思うけどな』

「そう……だよね。やっぱり、諦めたらいけないよね」

『うんうん! その方がいいよ!』


 これが作戦会議だったのかどうかはわからないけれど、私たちはその後もいろんなことを話し合った。桜ちゃん以外でここまで楽しく話せる人は初めてかもしれない。


「なんでくーちゃんはここまでしてくれるの?」

『んー、なんでだろうね。2人があたしに似てるからかな』

「似てる?」

『そ。あたしもね、中学の頃付き合ってた人と別れたから。自分としては結構本気だったんだけど、所詮中学生の恋愛だったんだなって思って』

「そうだったんだ」

『だから2人には諦めて欲しくないの。頑張ってね!』

「うん!」

『林間学校終わるまでには告白すること!』

「はい! 先生!」


 勇気はもらった。あとは実行に移すだけだ!


 通話を切ったあと、ピロンと携帯が鳴る。はーちゃんからだ。


『また明日。学校で会いましょう』


 ……実は相当無理してあのキャラ作ってる?

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