第16話 協力

「咲さん! 涼くんはいますか!」

「うわびっくりした!」


 委員会が終わり、すぐに部室である理科実験室へ向かった。ドアを音が出るほど勢いよく開けたのは初めてかもしれない。


義弟あいつならまだ来てないけど」

「そ、そうですか! じゃあ図書室寄ってきます!」

「まぁ落ち着きなさいな。お姉さんに何があったか話してみな?」

「えっと、なんと言ったらいいのか……」


 少し息を整えて、荷物を下ろす。そうだ、何も急がなくても彼はここに来るじゃないか。そう思っていた時だった。


「お邪魔しまーす!」

「本当に邪魔だよ。帰れよ」


 涼くんが入ってくるのと同時に、茶色のツインテールを揺らしながら入ってくるもう一つの影があった。


「あぁ……。そゆこと」

「咲さんは何納得してるんですか!」



 ***



「ここがビーカーでコーヒーが飲めるところかー!」

「おい涼、私だって怒れるんだからな」

「今回に限ってはまじで僕は悪くない」

「二つの意味で言っているんだけど?」

「僕だって二つの意味で言ってる」


 ふ、二つ? なんか藤ヶ谷姉弟が不思議なやりとりをしているが、それはそれ。


「なんで狩谷さんがいるんですか!」

「だめかな?」

「あなたここの部員じゃないでしょ!」

「まぁまぁそう堅苦しいこと言わずに〜」


 なんでこの子は涼くんとこんなに仲良さそうなんだ……。接点とか今までなかったでしょう!


「ふじーには内緒なんだけどさ、あたし最近失恋しちゃってさ」

「……うん」

「寄りを戻したいんだよね。それで、もしかしたら菊原さんもかなーって」

「!?」

「どう? 協力しない?」

「……前向きに検討しておきます」

「うん! とりあえずLINE交換しよー」


「なぁ姉ちゃん。あの2人仲良くなってない?」

「なぁ弟よ。あの子は策士だな」


 今日の部活動では、強力な(?)助っ人を迎えることができた。めでたしめでたし!


「……あれ、私何かに怒ってなかったっけ」

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