第15話 委員会

「これより、学級委員会を始めます」


 委員会決めのあった日の放課後、すぐに委員会があった。


「と言っても、この委員会はほとんど集まってやることは少ないんですがね。クラス単位で行われるアンケートなどの集計や、その司会などをお願いします」


 まぁ推薦されて委員にはなったものの、司会をしただけだし、この分だと早く部活に行けそうだ。……部活というか図書委員の様子を見にいける。なんせあの子狩谷葉月に危機感を覚えている。


「それじゃあ各自解散! 仕事がある時は基本放送で連絡するから、定期ミーティングもなし! みんな頑張ってねー!」

「というわけらしいが、菊原さんはこの後用事とか……」

「今日部活! ごめんなさい!」


 急がなきゃ!






「まさか天下無敵の優男やのしーが、珍しく自分からアプローチしたと思えば、口説ききるまえにフラれたな」

「うるさい。それにまだ諦めてないしフラれてない」



 ***



「それでは作戦会議といこうじゃないか!」

「うるさい。それにお前は委員会をなんだと思っているんだ」


 図書委員会のために図書室に向かいながら、葉月は威勢よく叫んだ。


「え、委員会って雑談の場所じゃないの?」

「少なくとも正解では絶対にないな」

「てへっ☆」

「語尾に星をつけるな! 今見えた気がしたぞ」

「じゃあ改めて、作戦会議だー!」


 こりゃダメだ。委員会の仕事をもしかしたら2人分やらなければならないかもしれないが、我慢しよう。覚悟が決まった瞬間だった。







「ではこれより図書委員会を始めます」

「ではこれよりどうしたら2人が自然消滅した元恋人と復縁できるかの作戦会議を始めます」

「お前ほんとブレないな。一周回ってありだと思ってきたじゃないか」


 2人とも三役にはならなかったし、基本仕事も多くはなさそうなので雑談しても平気そうだが。


「……菊原さんには悪いことしちゃったかなぁ」

「お前めっちゃ意地悪してる子供みたいな目で笑ってたもんな」

「まぁあれで大体のお二人の関係は分かったので」

「え、あれでわかったのか! もしかして恋愛博士か、そうなのか!」

「いやぁ、それほどでもないですよ〜」


 うわぁ。こいつ思い切り片目で澄まし顔しながらこっちを見てきやがる。ムカつくなぁ。


「でも、もう余計なことするなよ?」

「わかりました。二度としません」

「言質取ったからな」

「ところでふじーは今日部活だっけ。あたしも行くね」

「は?」

「え、だって菊原さんと同じ部活でしょ?」

「いやそうだけども。余計なことしないって言ったじゃん」

「二度としないから一度はするんだよ」

「うわ、やり方が詐欺師のそれだ」

「……今回ふじーが得るべき教訓は、あたしをもう少し対等な同志として認めるべきだということだ。そうすれば意地悪もしなくなるだろう」

「意地悪だとは思っていないが。ただ、性格悪いなって」

「それ女子に言ったらダメなやつだよ? あたしでも傷つくんだからね?」


 まぁいいだろう。おそらく紅葉も何かしらの誤解があるはずだから、それを解いてくれるならにはならないだろう。


「ともかく、俺は部活に行く。お前は勝手にしてろ」

「はーい! 勝手に一緒についていきます!えへへっ」

「……言っとくけど最後の笑い方、それあざとさを演出してるつもりかもしれないけど、いらないと思うぞ」

「あたしのアイデンティティが全否定された!? なんか扱いひどくない?」

「それが俺とお前の関係性だろ?」


 こいつとは大人になっても友達として酒飲んでそうだなぁ。それこそ来栖とかと一緒に。そう思いながら、部室へ向かった。


「あたしは認めてないからね!」

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