第10話 帰り道

「あー、疲れたー!」

「低めの山とはいえ、斜めの道はきついな……」


 ハイキングは無事終了した。遅れて山頂で合流し、写真を撮って、現在山を下っているところである。


「いやー、それにしても虹綺麗だったな!みんな写真撮ったか?」

「正直、儂が一番綺麗に撮れてると思うでごわす」

「えー、私には勝てないよ!」


 山田、来栖、そして和泉が虹の写真の見せ合いをしている。


「涼ちゃん達は撮らなかったの?」

「いやぁ……」

「撮ったんだけどね?」

「おいなんだよ、2人してもじもじしてー」

「ほらほら、見せなよー」






 〜数十分前〜


「あ、でもここからでも虹見えるじゃん」

「え。ほんとだ!」

「俺たちも行こうか」

「うん、そうだね」

「あ、待って。虹の写真撮りたい!」

「お、いいね」

「ほら、早く来て?」

「お、おう?」

「はい、チーズ!」






「別に見せてもいいんだけど……」

「何も言わないでね??」

「あー」

「これは……」


 紅葉が撮った虹と俺たちが綺麗に写っている写真と「涼くんも撮って!」と言われて撮った、ほとんど虹が写っていない2人の写真を見せた。


「こんなことストレートにいうのは忍びないんでごわすけど」

「君たちさ」

「まだ付き合ってるでしょ??」

「「うるさいなぁ!」」



 ***



「なぁ山田。『寝たやつの負けな!』って威勢良く言ってたやつ誰だっけ」

「……藤ヶ谷はんの隣でぐっすり寝てる来栖はんどす」


 帰りの電車で勝負しようと意気込んでいた来栖を含め、僕と山田以外の3人は寝てしまった。


「……なぁ山田。来栖と和泉の荷物頼む」

「了解でごわす」

「……ついでに俺の荷物も少し動かしてくれ」

「任せてくれでごわす」

「さんきゅ」


 ほとんどの荷物を山田に任せる形になってしまった。だが仕方ないだろう。うんうん。


「……なぁ、藤ヶ谷はん」

「おおっと、山田。それ以上何もいうな。今でも精神をすり減らしてるんだ」

「……やっぱ今でも仲良しでごわすね」

「うっ……」


 山田がそういうのも無理はない。なんせ、僕の肩には紅葉の頭があるのだから。


「あと、言いたいことはそれじゃないでごわす」

「あ、違うの?」

「少し前から来栖はん起きてて、そちらを見てにやにやしてるでごわす」

「おい来栖、面貸せや!!」


 なんやかんやで、楽しいハイキングだった。

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