第8話 ハイキング
「よっしゃー! みんなアゲてるかー!」
『うぇーい!』
「来栖、うるさい……」
「まぁまぁ涼くん。最初の行事だし許してあげようよ」
学校に集合した我々高1学年は、一斉に盛り上がっていた。ハイキングに浮かれるのも気持ちはわかるが、そんなに声出さなくても聞こえるって。
「涼くんもはしゃぐときははしゃぐでしょ?」
「少なくとも朝っぱらから声出すほど元気はないな。それに……」
「うぇーい! 涼ちゃんテンション低いぞ!」
そう言って来栖は首に腕を巻きつけて来た。こいつ調子乗ると酔っ払いみたいになるからな。
「こいつが酒飲んだみたいにだる絡みしてくるから嫌だ」
「お、お酒はダメだよ……?」
「涼ちゃんに菊原まで、酷い言われようだな! 飲んでないよ!」
まぁそんなこんなで、“ドキドキハイキング!”なるものが始まった。ちなみに、ハイキング自体は嫌いじゃないことは明言しておく。
『歩こう〜、歩こう〜。私は元気〜』
「お前ら小学生か!」
「涼くん落ち着いて? ね?」
近所迷惑か否かの微妙なラインで来栖を中心とするクラスメイトの一部が歌い始めた。班行動とはいえ、行き先は同じなので途中までは一緒なのだ。
「まぁこれくらい騒がしいのもたまにはいいでごわす」
「そうか?」
「涼ちゃんがそんなに不満なら大人しめな曲に変えるぜー!」
「歌自体がまずうるさいんだよ!」
『白い光の中に 山並みは萌えて〜』
「卒業式か!」
「なんだかんだ言って藤ヶ谷くんものりのりじゃない」
まぁテンション高いのが男子の特権みたいなものだからな。こんなテンションのまま、山の麓まで着いた。
***
「さて、ここからは危険な山道だ。慎重に行くぞ……」
「言うて600mだけどな」
「山の天気は変わりやすいって聞く。現に今雨雲が出て来ている。心してかかれ……」
「天気予報で曇りって言ってたでごわす」
「みんなして雰囲気壊すなよー!」
班別行動は、いくつかに分かれている山登りルートをそれぞれ登って山頂で合流すると言うもの。僕らは中級者向けのコースを選んだ。
「とにかく雲行きは怪しいけれど、とっとと登っちゃおう!」
5人で歩き始める。並び方は来栖と和泉の2人が前で僕、紅葉、山田の3人が後ろだ。
「ん」
来栖が山田を引っ張り前に連れて行く。それだと来栖と和泉が2人にならないじゃないか。僕は黙って山田を引き戻す。また来栖が引っ張る。僕が引き戻す。
「儂で遊ぶなぁぁぁ!」
「「あ、はい。すいません……」」
***
結局、2-1-2の並びで行くことに安定した。
「男子達は何をやってるんだろー」
「ほんとねー、ハハ」
「山田、なんか巻き込んでごめんな」
「今度何か奢るよ」
改めて巻き込んでしまった山田に対して罪悪感を覚えた僕と紅葉、そして何故か来栖と和泉も棒読み気味になる。
「これは先が思いやられるどすなぁ」
まだハイキングは始まったばかり。
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