あとがき 前編

 ミドエンシリーズはepisode0.【片翼】からepisode5.【雪華】までがシリーズ全体の起承転結を表す章になっています。


起(ep0.片翼)→起(ep1.春雷)→承(ep2.蛍狩)→転(ep3.夏霞)→転(ep4.月影)→結(ep5.雪華)を繋いで【Midnight Eden】というひとつの物語となりました。

どれかひとつでも話が欠けるとこのシリーズは成立しません。


 いつも通り最後のあとがきは長々と2ページ使って語っています。流し読み程度にゆるゆる~とお付き合いくださいませ💠


        *


 まずはW主人公のメリーバッドエンドとも言えるラストシーン。美夜と愁の結末は初期プロットの段階で決定していました。


 刑事と殺し屋の逃避行の行き先は栃木県日光市。最期の場所を日光の中禅寺湖にした理由は私が想像したラストシーンに一番近い風景が中禅寺湖だったのです。

奥日光は12月でも降る時は結構な積雪になるらしく、最期の場所にぴったりでした❄️


湖畔にあるイタリア大使館別荘記念公園内のベンチを見つけた時はイメージ通りで感動しました。風景が気になる方はぜひ、栃木県のイタリア大使館別荘記念公園をネットで検索してみてください。


 ミドエンシリーズのプロットを練っていた昨年(2020年6月)に新国立劇場バレエ団の動画配信でロメオとジュリエットの舞台を視聴しました。

※クラシックバレエではロミオではなくロメオの表記が正しい表記となります。そして私は日本のバレエ団なら新国立劇場バレエ団が一番好き。


ロミジュリは有名過ぎてロミオとジュリエットの関係や結末は説明不要ですね。細部のストーリーを詳しく知らなくても結末だけはご存知の方も多いと思います。


 刑事の美夜と殺し屋の愁の恋のイメージの根底にロミジュリはずっと存在していたのですが、二人の結末が明確になったのもロミジュリのバレエの舞台配信を見た辺り。


 死んだ後に魂で結ばれるなんて美夜も愁も信じてないけれど、どうせこの先に待つのは地獄だけ。


刑事の美夜が初めて殺した人は愁。

殺し屋の愁が最後に殺した人は美夜。

どうせ地獄に堕ちるなら永遠に二人で堕ちていよう。これが美夜と愁が出した結論です。


 でもね……ラストの心中シーンは仕上がりに時間がかかりました。ラストシーンを書くための気持ち作りがなかなか難しくて💧

主人公を死なせる結末が初めてなので、この場面を書くともう美夜と愁とは会えなくなっちゃう……いーやーだぁぁぁって直前で駄々こねが始まり。


結局、夜中に泣きながら執筆。自分でも引くほど泣いた……。

美夜が愁を撃って止血する辺りは二人への感情移入で涙が止まらなくてボロボロ泣いてました。そんなに泣くなら二人とも生かせよ!って思います……が、この結末のために【春雷】から【雪華】まで一連の流れを決めて書いてきたので結末は変えません。


 美夜は左手の薬指に鈴蘭の指輪をつけていますし、愁も左手首に指輪の代わりになる手錠をつけています。指輪は愁から美夜へ、手錠は美夜から愁へ。

地面を覆う白銀の雪に落ちる赤色の血。これは二人きりの赤と白の結婚式。


夏目漱石の〈月が綺麗ですね〉は告白の言葉で有名ですよね。

心中の前日に愁が呟いた『明日の月は綺麗だろうな』(明日の月は綺麗でしょうね)には〈明日あなたを殺します〉の殺人予告の意味があるそうですよ。


 ep0【片翼】とは意味が異なる“殺してくれてありがとう”。

【片翼】では「私が殺したい相手を代わりに殺してくれてありがとう」の意味で美夜と伶の心情を表すフレーズに使用しました。

この言葉から本編の伶の復讐代行人エイジェントへ繋がります。


 【雪華】ラストシーンのモノローグの“殺してくれてありがとう”は【片翼】とは意味が異なります。これは美夜のモノローグでもあり、愁のモノローグでもありました。

ここで【片翼】~【雪華】を一周して、最後はすべての始まりの【片翼】に戻る仕掛けです。


 ここでミドエンシリーズ始まりの物語である【片翼】の話になりますが、美夜の幼なじみの佳苗がなぜ援助交際(売春)をしていたのか。

それは本気で美夜と同じ顔に整形するために整形費用を稼いでいた……という作中には出していない怖い裏設定がありました。


佳苗は美夜になりたかったんだ。美夜は佳苗が嫌いだけど佳苗は美夜が好きだった。(歪んだ愛)

だから最期に電話をかけて助けを求めるのも親や警察じゃなくて美夜。


美夜からすべてを奪っていくのも、あんたには私以外の人間は必要ないのよ~あんたは私のものなのよ~って愛憎が込められています。自分で考えた設定ながら怖いなぁ……。


 まず先に佳苗を見殺しにしたのは愁だから、やっぱり愁と美夜は10年前から共犯関係にあったんですね。

愁だけは、佳苗にられなかった唯一の人でした。


 美夜と愁が出会ったのはトラットリア(イタリアンレストラン)の相席。

ロミオとジュリエットの舞台は14世紀のイタリア。

中禅寺湖の湖畔に建つイタリア大使館別荘記念公園。

偶然の産物なのだけど、すべてがぴったりハマったイタリアの奇跡。

ありがとうイタリア。グラッツェ!!🍅


        *


 主人公二人がいなくなったその後のエピローグの担当は九条くんと新バディの南田くんにお任せしました。ミドエンシリーズの締めくくりは美夜と愁を俯瞰して見ているキーパーソンの九条くんにしかできない役目です。


美夜はヒロインでもなく、愁もヒーロー(ダークヒーロー)ではありません。このシリーズはW主人公は存在してもヒロインとヒーローは不在なんです。

そんなヒーロー不在の世界で九条くんは正統派のヒーローポジションのキャラクターでした。


 所々で美夜と愁と九条くんの三角関係っぽい描写がちらっとありましたね。Act2のメイン視点は愁であり、サブ視点が九条くんでした。

Act2の神社での愁vs九条の場面やAct3の愁と九条の共闘は書いていてとっても楽しかったです。良い男同士の静かなるバチバチのバトルは美味しいね。笑


 九条くんには恋愛を抜きにした美夜の相棒のままでいてほしい派の人と、少しは美夜とラブの展開があってもいいのにと思っている派の人、読者さんの中にはどちらもいるような?と私は勝手に思っていて……。

もちろんどっちでもいいよ派もいるとは思いますが💦


 本作の執筆を終えてからは、ミドエンシリーズをエピソードゼロから順に読み返そうセルフキャンペーン❇️をしていましたが、ep1【春雷】の頃の美夜と九条くんがそれはそれは仲が悪くてねぇ……。


九条くんの心には相棒としての気持ちと男としての気持ち、情と恋の両方があったんだろうな。ep4【月影】を経てep5【雪華】に辿り着いた時の九条くんにはどちらの気持ちも共存していました。


 愁も九条くんの存在によってこれまでに見せたことのない嫉妬の顔を見せてくれました。

Act2での美夜とのラブシーンを愁視点にしたのも、九条くんへの嫉妬が入り交じってオスになる愁を全面に出したかったからです。


 作者の本音は九条くんにも少しは望みを持たせてあげたかったのよ。愁から奪っちゃえよ~キスしちゃえよ~て思って、美夜と九条くんのキスシーンも少しは考えてみたのです……が。

美夜の性格的に愁以外の男キャラとのキスシーンは無理でした。美夜と九条のイチャイチャもまったく想像できない。このバディはそんな甘い雰囲気にならないから良いのだ。


美夜は九条くんには〈女〉としては一度も寄りかからなかったですね。そういうところが彼女はいじらしいです。

Act1での抱擁とAct4の遠回しな告白が九条くんの精一杯の愛情表現でした。



→あとがき 後編に続く

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