第16話 罪と償い

 「ヘルメッ、うちの可愛い可愛いエルピスも頼むっ」


 「アイデースッ、ヘルメェーーーッ」

 「兄貴っ、落ち着け、アイデースッ、ルメッ、早くしろっ、長く持たないぞっ」

 「ポー兄貴っ、もう少しおさえてくれっ」


 「はなせっ、ぽーちゃんっ」

 「どっちも無茶むちゃ言うなよっ」

 「アイデース様っ、私一人では無理ですよ」


 「ぽーーーちゃんっ、はなせーーーっ、放さないとアムちゃんに色々言っちゃうぞっ」

 「ちょーーーっ、兄貴っ、それとこれは色々違うだろっ、アイデースッ、ヘルメェッ、早くしろっ、とばっちりで俺ん家が大変な事になるだろっ」

 ぴしゃー、ばっち。「あ痛っ、そんな事言われても、あの辺りにいる者達をどうやって」


 わからないっ、どうしてこんな烈火れっかごとく、いかくるうのよっ。

 「あんおばあちゃん、神様はどうしてこんなにおこってるの」

 「ばあちゃんにはよぉ~ようわからん」


 「お、お前達っ、おのれが今、何をしているのかわかっているのかっ」

 「兄貴、ひど過ぎるよ」


 「アイデースッ、お前は罪科ざいかおかせしたましいさばくく神だろっ、罰した者を助ける者がいたら、むくいにならぬっ、つぐないにならぬっ、罪の重さをかえりみぬっ、それで良いのかっ」

 「「「・・・」」」


 「はなせっ、ぽーちゃん」

 「う、うん、分かったよ」


 「アイデースッ、ぽーちゃん、ヘルメ、我等われらは神ぞ、我がいとし子達を導いてやらねば、良き世にしてやらねば、その為にもあやまちは正してやるのが我等われらが神のつとめぞっ」


 うっわぁ~、恰好かっこう良いぃ~、でも、この神様、あっちこっちの女の子にちょっかい出して、言ってる事としてる事にギャップあり過ぎ。

 そもそも取り決めをしてる人、じゃなかった、この神様が問題なんじゃない。


 「うぅ~ん、不敬ふけいだぞ、春奈はるな

 「だって本当の事じゃない、あのお姉さんも、あの子も手当たり次第に、えっ」

 「何を言う、見目麗みめうるわし乙女をでるは、神たる我のつとめだ」

 「・・・ぇぇぇええええーーーーーーーーーーっ」


  がたん。

 「あいたぁ~、いつの間に、机にして寝てたのかぁ~」

 ゆめ、…夢かぁ~。

 「・・・罰している人を助けたら、つぐないにならない、もで罰する事を取り決めた、それ自体が理不尽りふじんでも、やっぱり駄目なの、…何か可笑おかしい」


 「あんおばあちゃん、むつかしくて分かんない」

 「ええよええよ、じゃがなぁ~、春奈はるなぁ~、むずかしくても、思い悩む事を、考える事を、止めてはいかんよぉ~」

 「わかったっ」

 なでなで。「ええ子じゃ、ええ子じゃ」「えへへへぇ」


 「…分かってるよ兄貴、それなら、神が見誤みあやまった時は誰がいさめるのさ」


 「そりゃ、あれだ、あれだよ」

 「神々自身だろう」


 「うるさいっ、アイデースッ」

 「兄貴ぃ~、落ち着けよぉ~」


 「引っ張るな、ぽーちゃん」

 「ヘルメッ、俺の馬車を使えっ」

 「アイデース様っ、ペル様をさらった時に使つか

 「もうっ、いいから早く行けよぉー」

 「はいっ、アイデース様っ」


 「そらっ、好きなだけ受け取れっ、雨をくれてやるっ」

 「「兄貴っ」」


 「黙れっ、お前達の好きにしろっ、俺は好きなだけ雨を降らせるからな」

 「アイデース、行こう、兄貴はきっとわかってくれる」

 「ポー兄貴、うん」


 頑固がんこ者、皆が止めてるのに。


 「・・・でもまぁ、いきなり大雨は大変だし、少しづつだな、まだ日が出てる時だし、イーリス、・・・イーリス、ちょっ、イーリスっ」

 「何ぃ、あたし、忙しいぃんですけどぉ~」


 「大雨を降らせる」

 「じゃぁ~、あたしの出番はないっすねぇ~」


 「いや、だから始めちょろちょろにしようかと」

 「もうぅ、聞いてたっすよぉ~、伝えて上げるっすから、言ってみるっす」


 「だから、始めちょろちょろで、日が出てる時だから」

 「何すかっ、煮え切らないっすねっ、それでも男っすか」


 「あっ、それ、差別だから」「あたし、忙しいっすから」

 「言う、ちゃんと言うから」「それでぇ、誰に何を伝えればいいっすか」


 「我がいとし子達をみちびいてやくれ、大雨で流されぬ様、安全な場所に虹で渡してやってくれ」

 「えっ、良いすっか、神々が渡る橋を使わせても」


 「一人や二人では無からな、我がいとし子達に、神々の恩恵おんけいを見せてやると良い」

 「さすが主神様、太っ腹っす」


 「急げよう、イーリス、罪は罪、つぐなわねばならん」

 「了解っす」


 「こうしてのぉ~、虹の女神イーリス様やヘルメ様が、大雨を人々に知らせて、皆を離れた土地に渡したんじゃぁ~」

 「ふう~、良かった」

 「それがのぉ~、神様は大事な事を忘れておったんじゃぁ~」


 えっ、何、大事な事って何、まだ何かあるの。

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