第17話 エルピス(希望)、お出まし

 ざわざわざわ。

 「何だろう」「神々が我等を集め何をするんだ」

 「あれ、ヘルメ様だろう」「海の神もおられるぞ」


 「あの方は誰だろう」「う~ん、あっ、冥界めいかいべる神では、何故ここに」

 「誰かを連れに来たのか」「お前、何かしたのか」


 がやがやがや。

 「み~てぇ~、イーリス様、ちょ~可愛くない」

 「「 「「可愛いぃ~」」 」」


 「あ~しも、髪型真似ようかなぁ~」「止めときなって、似合わないって」

 「向こうは女神様なんだかんね」「あんたがしたら、ちょ~うけるし」

 「「 「「きゃははははは」」 」」「笑う事ないっしょ」


 「エピメ、パンドーラ、ジュリエット、それにモンタギュー、ここいらの者はこれで全てか、エルピスはどこに」

 「そうです、ヘルメ様、…それでエルピスは、あちらの神がかめごとさらって行かれまして」

 「しっ、し~っ、エピメ、冥界めいかいべる神、アイデース様だ、訳あってさらうは禁句きんくだ、いいな、僕は行くよ」


 「エルピス、俺だ、分かるだろう、怖い思いをさせたな、もう大丈夫だ、出ておいで、可愛いお顔を見せておくれ」

 「…本当、お兄ちゃんだけ」


 「「 「お兄ちゃんっ」 」」

 「うーーーん、いや、ヘルメも、イーリスも、ポー兄貴もいる、沢山の人々や獣達もいるが、誰もエルピスをいじめたりしないよ」

 「…は、恥ずかしいぃ~」


 「そうかぁ~、それは残念だなぁ~、可愛いエルピスのお顔が見たかったなぁ~、ヒュンプやオニロも心配してたし、ペルも寂しがってる」


 「うん、じゃぁ、お兄ちゃんだけに見せてあげる」

 「有難うエルピス、元気な姿を見せておくれ」ぱっか。


 んっ、あっ、かめふたが開いた。

 きゃぁーーーーーっ、エルピスすっごく可愛いぃ~。

 癖っ毛の金髪、お目目がおっきいぃ~、ほっぺが柔らかそうぉ~、触りたいぃ~。


 おっ、ぉ、ぉぉぉおおお、大きい、10歳ぐらいにしか見えないのに、私より立派、ぐじょ~~~。


 ぱたぱたぱた。「ママっママっ、見て見て見てっ、エルピス、可愛いぃ~」

 「痛いはジュリエット、エルピスがどうし、…まぁまぁまぁまぁ、どうしましょう、可愛らしいぃ~~~、エピメっエピメっ」


 「ん~、エルピスかっ、ぉぉぉおおお、なんともうあいらしい~、エルピスっ、エピメだっ、パパだよっ」

 「いやっ」ぱたん。


 あっ、かめの中に入っちゃた。う~~~ん、可愛いぃ~。

 「あんおばあちゃん、エルピスどうしたの」


 「エピメ様の大きな声におどろいたのよぉ~、それにのぉ、もともと恥ずかしがり屋さんなんじゃぁ~、たぁ~くさんの人の前にいるのに気付いてのぉ~、恥ずかしくなったんじゃぁ~」


 「あっ、エルピス、…うん、元気そうだ、ヘルメ、あの者達を呼んでくれるか」

 「ええ是非、エルピスを害悪がいあく達から救ってくれた者達です」


 「エピメ、ヘルメ様がお呼びだわ、神罰かしら」

 「パンドーラ、いくら何でも」


 「でもおそばのお方は冥界めいかいの神様でしょう」

 「ジュリエット、それは、…まさかさっきのをお聞きになったのか」


 「うん、来たかい、エピメ、パンドーラ、ジュリエット」

 「あの、何か不敬ふけいをいたしましたでしょうか」

 「いやいや、こちらは冥界めいかいべる神、アイデース様だ」


 「私達わたくしたちが何か」

 「俺は、お前達に礼を言いたいのさ、エルピスを救ってくれて有難う」


 「そんな、お顔を上げて下さいっ」

 「なんの、お前達を救う為に、エルピス(希望)を入れたのだが、逆に救われた」


 「そんな、おめ頂けるのなら、娘のジュリエットを、私達は恐ろしくてふたを開ける事が出来ず、目をそらしてしまいました」

 「前がジュリエットか、エルピスを救ってくれて有難う、なかなかの美形だ」


 「ペル様に言いつけますよ」

 「黙れ、ヘルメ」「はいはい」

 なでなで。


 あ~~~、ジュリエット様の頭をでた。

 ロリーなんだ。

 「神様、私より少しお姉ちゃんが好きなの」

 「そうぉ~じゃぁなぁ~、そうかも知れんのぉ~、しかしのぉ、これはお礼だったんじゃぁ~」


 「ジュリエット、俺は冥界めいかいの神だ、ゆえに直ぐに何かをしてやる事は出来ぬ、しかし良く覚えておくがいい、苦しくて、辛くて、どうしようも無く悲しい時、俺に願いなさい、お前でなくても良い、お前を心からいとおしく思う者の願いなら必ず聞き届けてやろう、エルピスを救ってくれたお礼だ」


 「有難う、え~っと」

 「冥界めいかいべる神、アイデースだ」

 「うん、有難うアイデース様」


 こんこん。「エルピス、俺とお家に帰るか」

 「・・・ジュリエットと一緒が良い、パパもママも出来たから」


 「オニロは良いのかい、寂しがるよ」

 「大丈夫、オニロにはヒュンプがいるから、でもたまには遊びに来て」


 「分かったよ、ちゃんと伝える、時折ときおりオニロやヒュンプも連れて来よう」

 「うん、待ってる」


 「ジュリエット、エピメ、パンドーラ、エルピスを、エルピスをよろしくたのむよ」

 「はいっ」

 「は、はい、アイデース様」

 「こ、こんなにあいらしい娘を授かって嬉しい限りです、アイデース様」


 「…アイデース様、泣かなくても」

 「うるさいっ、うぅぅぅ、可愛い可愛い妹を手放す兄の気持ちが、お前に分かるかっ」


 「声、裏返ってますよ、それに、小さな雨粒が降って来ましたよ、急ぎませんと」

 「良いっすか、あたしの出番すっね」


 「兄貴も分ってくれたんだな、イーリスをよこしたのだから」

 「『我がいとし子達に、神々の恩恵おんけいを見せてやると良い』、だって」


 「頼んだよイーリス特大のやつで」

 「あたしは良いけど、ヘルメはどうするのさ」


 「僕はね、アイデース様の馬車で、ジュリエット、エピメ、パンドーラ、そしてエルピスのかめを運ぶよ、アイデース様が離れないし」

 「了解っす」


 「じゃ、ポー兄貴、我がいとし子達に言ってやってくれ」

 「・・・おっ、俺っ」

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