第14話 モンタギュー

 そこは、丘を一つ越えただけなのに、緑に溢れ、川からはせせらぎが聞こえ、沼には獣達が水を飲みにおとずれる。

  池では見目麗みめうるわしいニンフ達が、楽しく語らい沐浴もくよくを楽しんでいる。

 野にはさわやかな風がそよぎ、山からは鳥のさえずりが、この風に乗って聞こえて来る。

 「何この違いは、ジュリエット様達の所はからからなのに、この神様勝手かってすぎっ」


 「エピメ様とパンドーラ様はなぁ、ヘルメ様の言う通り、モンタギュー様の処へ水と食べ物を分けてもらいに行ってのぉ、おどろいたぁ~」

 「ご飯もらえなかったの」


 「うんにゃぁ~、水も食べ物もぉ、たぁ~んと分けてもらえたんじゃぁ~」

 「う~~~、どうしておどろいたの」


 「春奈はるな、そこのお菓子かしをおばあちゃんにおくれぇ~」

 「でも、あと一つしかないから」あーーー、私のいやしんぼう。


 「ええよええよ、沢山たくさんあったら、おばあちゃんにもくれるかぁ~」

 「うん、いっぱいあったら分けてあげる」


 「丘を一つしか越えておらんのにのぉ、モンタギュー様の処にはなぁ、エピメ様とパンドーラ様に分けてあげられるくらい、沢山たくさんの水や食べ物があったんじゃぁ~」

 「ふ~ん、良かったねぇ、あんおばあちゃん、みめうるわしいにんふって何」


 「見えんかったかぁ」

 「んん、何が」


 「あんおばあちゃん、この子には見えてないんじゃない」

 「お~、さきも、きもちわるくない、いってた」


 「そうかぁ~、その方がええかもしれんのぉ」

 「あんおばあちゃん、やっぱり春奈はるなにはまだ、ジュリエット様のがそのまま流れ込んでくるから」


 「ことねぇ~、わたしたち、いつか、しるねぇ」

 「スージー」「ぺったんこも、いつかわかるねぇ」「スージーっ」


 「見えてないなら、今がえぇ~」

 「ママ、にんふってどこかにあるの」


 「春奈はるな、ニンフはねぇ、野原や山、川や池やみずうみ綺麗きれいな所にいる女神様の一年生見たいなお姉さん達よ」

 「ちっがうねぇ~、あれはFairyだねぇ」


 「スージーお姉ちゃん、ふぇあり~って何」

 「あ~~~、ようせいさん」


 「あんおばあちゃん、どっち」

 「そ~さなぁ、少しだけ不思議な力を持っとる、綺麗きれいな女の子達かのぉ~、おばあちゃんにもようらん」


 「パンドーラ、あそこだ」

 「本当に分けてもらえるかしら、水は川からませてもらえれば、運ぶ事は出来るけど、食べ物はどうかしら」


 「分からない、ヘルメ様を信じるしか、思い悩んでも仕方ない、とにかく行ってみよう」

 「そうねぇ」


 とんとん、とんとん。「モンタギュー、モンタギューいないか」

 どたどた、ごとん、きー。「・・・エピメ、エピメか」


 「モンタギュー、お前モンタギューか」

 「「はぁはっはっはっはっはっ」」

 ぱんぱんぱん。「久しぶりだなぁ、エピメ」


 ばしばしばし。「痛いじゃないか、モンタギュー」

 「「はぁはっはっはっはっはっ」」


 「ん、後ろにいる美しい乙女の人な誰だい、妹はいなかったよな、エピメ」

 「あ、あのう、美しい乙女のパンドーラです」


 「乙女」つねり。「いったっ」

 「まさか、エピメ」


 「あ~、妻のパンドーラだ」

 「エピメ、ちょっとこっち来い」「なっ、何だよ」

 「いぃーからこっち来いっ」「なんだぁ~」


 「エピメっ、妻って事は、したのか」

 「嫁さんだからな、娘が一人いるよ」


 どーして男の人って、えっちの事しか頭に無いの、ばっかじゃない。

 ロミオ様とは大違い、はにゃ~~~、ロミオ様ぁ~~~。


 「モンタギュー様はなぁ、大長老様、ロミオ様のお父上様なんじゃぁ~」

 「やったぁー、ロミオは」


 「まぁ~だじゃぁ、もっと先じゃぁ」

 えぇ~~~、そう言えばあんおばあちゃん、そんな事も言ってたっけぇ~。


 「娘は幾つだ」

 「あのなぁ~娘はまだ子供だ、例え年頃でもお前にはやらん、お前はまだなのか」

 「そうだ、何処かに器量好きりょうよしの乙女はいないかぁ」


 「探しといてやるよ」

 「あてにするぞぉ~、…それでヘルメ様の神託しんたくを受けた」


 「言いにくいんだが、その水と」

 「分かった、分かった、とにかく中に入れ」


 「悪いな」

 「パンドーラさん、中に入って、いやぁ~、本当にお美しい」

 「ま、まぁ、お上手です事」


 「こうして、独り身じゃったモンタギュー様からはのぉ、水と食べ物を毎日の様に分けてもらえたんじゃ」

 「ご飯もらえて良かったえね」

 「「 「「 「「 「「 「「はあ~~~」」 」」 」」 」」 」」


 「…神様はなぁ~、大変お怒りになられたぁ~」

 「どうしてなの、何も悪い事してないよ」

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