天変地異

第13話 神々の忠言

 主神様は悩まなかった。

 周りの神々の忠言ちゅうげんも聞かなかった。

 「どうして、…今の私より小さい子のした事なのに、エルピスを助けたかっただけなのに、全知全能なんでしょう」


 「神々の中にはなぁ、ジュリエット様は幼い、許してくださる様にいさめたのじゃがのぉ、聞いてはもらえなんだぁ」

 「でも、エルピスを助けたのに」


 「主神様、どうか許して下さい、ジュリエットはまだ幼いのです、不死と産まれて十数年なのです。」

 「俺をそでにした女の娘だっ」


 「そこですか」

 「黙れっ、がましいぞ、ヘルメっ」


 「アイデース様、これで人々に神罰を与えるのはあんまりですよ」

 「なぁ~、兄貴ぃ~、俺の所の可愛いエルピスを助け様としての事だし、心優しい子じゃないか」


 「嫌っ」「嫌って、そんな、にべもない」

 「嫌なものはい~やっ」「俺の話も聞けよっ」

 「やだっ」「ポー兄貴からも言ってやってよ」「そうだなぁ」


 「兄貴さぁ~、俺もこれはちょっとひど」

 「アムちゃん、怒るだろうなぁ~、何処の姫君だっけぇ~」


 「アイデースっ、あの子は神々をないがしろにした、ちょっとだけ罰しよう」

 「ポー兄貴ぃ~、又どっかの姫君に何かしたぁ~、どうして兄貴達はあっちこっち手を出すのさっ」


 「あっ、アイデース、そう事言う」

 「俺は、ペルだけだよ」


 「アイデース、お花畑でお花のかんむりを作ってた遊んでたペルを、かっさらって冥界めいかいに連れてったの、誰だったかなぁ」

 「あ、あれは、…兄貴が良いって言ったじゃん」


 「それってさぁ、先の世では女児誘拐じょじゆうかいって言うらしいぞ」

 「アイデース様っ、幼いペル様が何故冥界めいかいにおられるのか、不思議でしたが」


 「いや、ヘルメ、ちょっ」

 「えぇ~、無理やりあんな事やそんな事、折って畳んで裏返して、何っていやらしぃ~」

 「ぁぁぁあああーーー、ノーマル、ノーマルだからっ、実家にも帰らせてるからっ」


 「たくもうぅ」

 「あーーー、何だヘルメ、その態度は」


 「良いんですか主神様、私にそんな言い方をして」

 「な、何だ」


 「近頃ちかごろニンフ達が『この子可愛いぃ~ぃ』って言ってる子がいまして、へら様はまだご存知ないんです、け、ど、ねっ」

 「あーーー、そうだな、幼い子供のしでかした事だしな、少しらしめるぐらいにしといてやろう」


 「有難う御座いますっ、主神様」

 「あの辺りだけ、雨を降らさない様にする」


 「本当に心根こころねやさしい子なのです、お手柔てやわらかにお願いします、」

 「言うなよ、絶対言うなよ」


 「心得こころえております」

 「兄貴ぃ~、又どっかに子供出来た」

 「しぃーーーっ、アイデースっ、みなまで言うな」


 この神様達って、どうしてこんなに女性関係にルーズな訳、アイデースって言う神様はまともだと思ってたのに、女児じょじ誘拐ゆうかいして、お嫁さんにしてたとわ。


 「ヘルメ様の気転きてんでのぉ、全ての人々にわざわいいが及ぶ事は無くなったんじゃぁ」

 「ジュリエット達は」


 「ジュリエット様達はなぁ、神罰しんばつを受ける事になったぁ」

 「どうして、どうしてエルピスを助けちゃいけないの」


 「春奈はるな、ばぁ~ちゃんには分からんのぉ~」

 そしてその年はかんばつとなり、水を必要とする人も、獣も、鳥も、みずうみや川の魚も、かわきに苦しみ、野や山の草木も耐えきれず枯れだした。


 「パパ、お水がない」

 「エピメ、どうしましょう、川もみずうみ干上ひあがてお水がないわ」

 「パンドーラ、これはきっとかめを開けたむくいだ」


 「御免なさい」

 「ジュリエット、お前は良い事をしたのだ、あやまる事はない」

 「そうよ、ジュリエット、神様もきっと解って下さるわ」


 「しかしパンドーラ、どうしたものか」

 「そうねぇ~、このままでは肉も魚も穀物も無くなってしまうわ」


 こんこん。「パパ、ママ、ジュリエット」

 「どうしたのエルピス、お腹空いた、…何か、探してみるわね」

 「うぅん、違うの、ヘルメ様とお話したの、ちゃっとで」


 「ヘルメ様が“ちゃっと”と言うのをするのかい」

 「うん、近頃ちかごろ一緒にもんすたー狩りに行ってくれるの」

 「それもねっとげーなのエルピス」

 「そう」


 「便利べんりねぇ~、それでヘルメ様は、何ておっしゃってるの、教えてもらえるかしらエルピス」

 「うん、ヘルメ様は、雨が降らないのは主神様が怒ってるからだって」

 「あ~、やっぱりそうか」


 「御免なさい、私」

 「エルピスも悪くない、あやまる事は無いんだ、いいね」


 「…うん、有難うパパ、それでね、少し離れた所にモンタギューと言う人がいるから、必要な物を分けて貰いなさいって」

 「モンタギューか」


 「知ってるのエピメ」

 「ああ、子供のころ、モンタギューとは良く遊んだ」


 「分かった、有難うエルピス」

 「えへへへ、それでね、モンタギューって人には神託しんたくを与えたから、主神様に、人々は助け合える素晴らしい者達で、神々をうやまっている事を示しなさいって」


 「良し、分かったよエルピス」

 「そうすれば、きっと許してもらえるって」

 「良かったわ、エピメ、ジュリエット」


 「良かったね、あんおばあちゃん、許してもらえるんだね」

 「それがのぉ~、ちぃ~とちがたんじゃぁ~」

 えぇ~、助け合う事の何が駄目だめなの。

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