第12話 逃亡

 「「 「「 「「 「「 「けけけけけっ」 」」 」」 」」 」」

 「「 「「 「「 「「 「けらけらけら」 」」 」」 」」 」」

 「「 「「 「「 「「 「ぐひひひひっ」 」」 」」 」」 」」

 「「 「「 「「 「「 「うひゃうひゃ」 」」 」」 」」 」」


 赤いもの、青いもの、黄色いもの、紫のもの、緑のもの、だいだいのもの。

 腹を下した時の汚物おぶつの様にき出したそれは、いやしく、きたならしく、あさましく、醜悪しゅうあくな笑い声を発していた。


 聞く者に悪寒おかんしょうじさせ、体中の毛が逆立ち、誰もが嫌悪けんおきらう気持ちの悪さ。

 からみ合い、混ざり合い、黒く黒く朦朦もうもうとした得体の知れぬものとなる。


 「「ジュリエットっ」」ばんっ。

 黒々くろぐろ禍々まがまがしいそれは四散しさんした。

 「ジュリエット、大丈夫、怪我けがはしてない」

 「・・・・・・だ、大丈夫」


 「不気味ぶきみ悪い、・・・鳥肌とりはだ立ってる」

 どうして、さっきから何、このイメージ、キモい、グロい、キッショい。

 女性陣は皆、げんなりとして、私を除き酷い表情で、これだったんだ。


 「・・・気色きしょく悪いのぉ~」

 「・・・Oh~gross!」

 「うぅん、大丈夫だよ」


 「ならえぇ~、それでじゃ、エピメ様とパンドーラ様がけ付けてふたを戻したのじゃがのぉ、間に合わんかったぁ」

 「でもエルピスもお外に出れたから、もういじめられないね」

 「それがのぉ~」「どうしたの」


 「ヘルメ様、このかめは何なのです」

 「エピメ、君たちを試す為の贈り物だよ」


 「中にったのは何なのですか」

 「パンドーラ、あれは良くないものだよ、だから開けてはいけなかった」


 「パパ、ママ、御免なさい、でもエルピスを助けてあげたかったの」

 「しいたげられし者を救おうとしたのだ、素晴らし事だよジュリエット」

 「ジュリエット、これでエルピスも外に出れた、いじめられる事も無いわ」


 「それでヘルメ様、このかめはどうしたら」

 「エピメ、これは神の中でも最高のたくみ、ヘファイが丹精たんせい込めてつくった、この世に二つと無い物だ、水でも食べ物でも何でも入れると良い、悠久ゆうきゅうの時の中でも守ってくれるだろう」

 「ではそうしますわ、ヘルメ様」


 「ママ、もうエルピスとお話できないね」

 「そうね~、でもきっと会いに来てくれると思うの」


 「・・・ヘルメ様、このかめは音をかなでるのでしょうか」

 「…いや、いくらヘファイがつくったとて」


 「み~んなかめに耳を近付けるとなぁ、何やら楽しそうな音楽が聞こえたんじゃとぉ」

 「オルゴールが入ってるの」

 「い~やぁ~、残っておる者がおったんじゃぁ~」「誰」


 ごんごん。「ヘルメだよ、誰か残っているのかい」

 ♪~~~。「・・・何が残っているのかしら」


 ごんごん。「エピメだが、誰かいるのか」

 ♪~~~。「・・・エルピス、・・・かなぁ」


 ごんごん。「・・・パンドーラと言うの、誰かいるの」

 ♪~~~。「・・・」


 ごんごんごんごんごん。「エルピス」

 ♪~~~。「あーーーーーっ、ジュリエット、う、る、さぁ、いぃ~」


 ♪~~~。「「 「「エルピスっ」」 」」

 ♪~~~。「…うん」


 ♪~~~。「エルピス、お外に出なかったの」

 ♪~~~。「…だって、あの子達出て行ったもん、一緒に出たら、又いじめられるもん」


 ♪~~~。「ヘルメだよ、エルピス、お外に出ておいで、君がいないと人々は希望を無くしてしまうよ、出ておいで」

 ♪~~~。「嫌っ」


 ♪~~~。「ほ、ほらぁ~オニロもさみしがってるよ、お友だ」

 ♪~~~。「嫌っ嫌っ嫌っ、オニロ、近頃ちかごろ遊んでくれない、ヒュンプとばっかり」


 ♪~~~。「でも人々が」

 ♪~~~。「いやあーーーっ、あの子達が出て行ったここが、私の聖域せいいきなのっ」

 ♪~~~。「エピメ、パンドーラ、ジュリエット、人々は希望を無くした様だよ」


 ♪~~~。「エルピス、この楽しそうな音は何」

 ♪~~~。「ねっとげー」

 ♪~~~。「「 「「ねっとげー」 」」


 ♪~~~。「パパは嬉しいよエルピス、お前がいてくれて、で、それは何だい」

 ♪~~~。「う~っとねぇ、ずっとず~っと先の世の遊び道具、取り寄せたの」


 ♪~~~。「私とお話するより面白い」

 ♪~~~。「…お友達が出来たの、でもパパもママもジュリエットもまたお話してくれる」


 ♪~~~。「もちろん、もちろんだよエルピス」

 ♪~~~。「私もよエルピス、でも食べ物はどうするんの」


 ♪~~~。「…お腹が空いたら言う」

 ♪~~~。「そう、分かったわ」


 ♪~~~。「それでエルピスは今、ねっとげーをしているの」

 ♪~~~。「うん、ふぁーすと・ふぁんたじぃーせぶん、先の世のお友達とぱ~てぃ~を作って、悪い子をらしめるの」


 ♪~~~。「先の世のお友達と私もお話したい、できる」

 ♪~~~。「う~~~ん、エルピスがちゃっとで伝えてあげる」


 ♪~~~。「じゃぁ~、あのね先の世ってどんなかん」

 ♪~~~。「あっ、あっ、あっ、きんきゅーうくえすとっ」


 ♪~~~。「どうしたのエルピス、ねぇ、エルピスっ」

 ♪~~~。「あ~、待ってぇ~、山野ぷ~うさ~ん、憮然ぶぜん乙女おとめさ~んも、おいてかないで~ぇ」


 「エルピスはなぁ~、かめ底でのぉ、ですぷれいのあかりをたよりにのぉ、今もねっとげーをしておるのよぉ~」

 「えっ、今も、ファースト・ファンタジー・セブンをしてるの」


 「そうじゃぁ~、春奈はるなもねっとげーをしとるんかぁ~」

 「ママが怒るから、ちょっとだけぇー」


 「そうかぁ、ならもし『エルピス』と言う名前の子を見つけたら、友達になってあげるとえ~よぉ~」

 「うん、でもエルピスは、リアルの名前で参加してるの」


 「そう言っとたぞぉ~」

 「Oh~、わたしもきいたよぉ」

 「スージーお姉ちゃんも知ってるの」


 「みんな、しってるよぉ~、ことねぇ~もしってるよぉ~」

 「ママも知ってるの」

 「そ、そうだったかしら、・・・あんおばあちゃん、あの大きなかめはまだあるの」


 「お~、忘れておったぁ、くらの奥にあるはずじゃぁ」

 「久しぶりにお話して来ようかのぉスージー、春奈はるなもおいでぇ」

 「うん、行くぅ~」


 「そうかぁ、春奈はるな、エルピスをお外に出しておあげぇ~」

 「うん、分かった、お友達になる」


 あぁ~~~、そう言えば、あんおばあちゃんのお話の後、女性陣がくらに行って、私も付いて行ったっけ。

 大きなかめの前で、皆も、私も楽しく誰かとお話してた。

 ・・・様な、気が、・・・あのかめ今もるのかな。

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