第9話 甕《かめ》

 「かめさん、置いて行っちゃたね、あんおばあちゃん」

 「神様からの贈り物のかめはなぁ、家の真ん中にのぉ~、大事に大事に置かれたんじゃぁ~」


 「このかめさん何食べるの」

 「・・・かめはぁ、何も食べんがのぉ」


 「お腹空かないの」

 「ぉお~、はるなぁ、かめじゃなくて、かめねぇ」

 「スージーお姉ちゃん、かめさんじゃないの、かめ君」


 「おほぉぅ、さすが、ぺったんこ、ことねぇーのこどもね」

 「なぁ~におぉ~、大きけりゃ良いてもんじゃないんだから」

 「琴音ことね、いい加減にしな」


 「だって母さん、スージーが」

 「本当の事じゃない」


 あぁ、そうだ、この時おばあちゃん、腕組みをして胸を強調してた。

 「ぐじょ~~~、ぐれちゃる」

 おばあちゃん爆乳なのに、私はママ

 「何ばかな事言ってるの、良い大人が」


 大きけりゃ良いてもんじゃないよねっ、私、頑張がんばれっ。

 「へぇ~ぃ、へぇ~ぃ、ぺったんこぉ~」


 ぐしょ~~~、スージーお姉ちゃんがうらめしいぃ~~~。

 ぺん。「あいたぁっ」


 「スージーももう止めな、春奈はるなかめって言うはね」

 おばあちゃんは、飲み口より、底が小さくすぼんだコップを持って説明してくれた。


 「このコップを春奈はるなが入れるくらい大きくした物よ」

 「かめさんが入ってるの」


 「うぅん、コップと同じで、お水を入れて置いておくの、むか~し昔は水道が無いからね」

 「じゃぁ、お水が入ってるの」


 「いいえ、それも違うの、神様は、大事な贈り物を入れたの、ほら、春奈はるなも良くコップにおもちゃを入れたでしょう、そうして、お手手でふたをしていたでしょう」

 「ぉお~、分かったぁ~」


 「母さん、話しを進めて頂戴ちょうだい

 「春奈はるなもええかぁ」


 「うん、良いよ」

 「そうかぁ~、それじゃ、エピメ様もなぁ、パンドーラ様もなぁ、かめを開ける事は決してなかったぁ」


 「パパ、このかめ、凄く邪魔じゃまなの、部屋の隅に動かしちゃだめ」

 「ジュリエット、神様からの贈り物を粗末にあつかっちゃだめよ」

 「ママ、中に何が入ってるの」


 「分からないわ、…でも、きっと良い物が入っているわ」

 「ふ~ん、開けないの」


 「ヘルメ様が言っておられたでしょう、決して開けてはいけないの」

 「じゃぁ~、邪魔じゃまなだけね」


 「ジュリエット、ママもパパも、とても素敵な贈り物をさずかっているわ」

 「ママもパパもだぁ~い好きぃ~、…でもママ、気にならない」

 「う~~~ん、少しね」


 「開けちゃ駄目だめ

 「駄目だめ


 「だって、時折ときおり中から声がするし」

 「確かに、…するわね、だから駄目だめ


 「それに、しくしく泣いてる子がいるみたい」

 「ママも気になってわいるの、でも駄目だめよ、神様の言いつけだから」


 「おい、お前もっと向こうへ行けよっ」

 「だ、だって、これ以上」


 「うるさい、黙れっ」

 「いやぁ~、触らないでぇ~、いやーーー」


 「おっ、俺にもませろや」

 「いやぁー」


 「なんだなんだぁ~、おっ、くのか、俺も手伝うぞ」

 「止めて止めてっ」


 「うっせっ、一回ぐらいさせろっ、何も出来ないお前が、どうしてここにいるのか考えろっ」

 「だ、駄目だめっ、パンツは駄目だめっ」


 「何だこいつ、だいたいお前、何も出来ない、何も与えない、害にもならなきゃ、益にもならない役立たずじゃねぇか」

 「いやいや、・・・いやあーーー」


 「いやじゃねーよ、役立たずのお前は、俺らにご奉仕する為に居るんだよ、察しろよっ」

 「ちっ、違うもん、いやだぁー」


 「あぁー、何ねんね見たいな事、言ってんだよ、・・・ちゃんと濡れて来てんじゃねぇか」

 「やめてーーー」


 「夢とセットでも何も出来ない奴が、すかしてんじゃね、入れさせろっ」

 ごんごん。「あのう、誰かいるの」


 「ちっ、邪魔が入りやがった、向こうへ行ってろっ」

 「きゃーーー」


 ごんごん。「あ、あのう、大丈夫、どうかしたの」

 「うぅぅぅ、しくしく、しくしく」


 ごんごん。「あ」

 「だ、大丈夫、大丈夫だから」


 「私はジュリエット、あなたは」

 「・・・」


 「私ね」

 「・・・エルピス」

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