第7話 神は思う

 人は何時いつしか神様をうやまわず、自らのわざが、神をも超えると言う者まであらわれる様になったらしい。

 「人はおごっておったぁ~、しかしのぉ~、神の御業みわざに並ぶ者もぉ、確かにおったそうじゃぁ~」


 「最近の我がいとし子は、全然我等をうやまわない」

 「兄貴、近頃ちかごろ愚痴ぐちが多くないか」


 「だってさぁー、我がいとし子と思えばこそ、庇護ひごする訳じゃん」

 「まぁ~、そうなんだけどさぁ」


 「アイデースは、お気楽でいいなぁ~」

 「何だよその言い方、兄貴達が気前きまえよく庇護ひごするからだろう」


 「いやまぁ、そう~なんだけどさぁ~」

 「鳥や魚や獣だけだと、真面まともにペルにつかえる者がいなくて困ってるんだけどっ」


 「分かった、分かったから、みなまで言うな」

 「本当に、ポー兄貴の所でもいいからさ、いい加減、俺の所にも来させてよ」

 「あ~そうだな、…近いうちに何人か逝かせるかもな」


 「えっ、ぽーちゃん庇護ひごしてやらないの」

 「それがさ、最近ちょっと、人魚族の態度が悪くてさぁ~、らしめてやろうかと思って」


 「そんなに態度悪いの」

 「まぁ~ね、兄貴の所と同じ、俺をないがしろにするんだよね」


 「神の俺等をかろんずるとは、そら~ばっしないと駄目だめだな」

 「それがねぇ~、ちょっと厄介やっかい代物しろものを持ち出してさ」

 「あっ」


 「ん、アイデース、何か知ってる」

 「いっ、いやぁ~それが」


 「にいちゃん怒らないから、言ってみ、神様嘘つかない」

 「・・・本当に、・・・何処どこから入ったのか、オリハルコンを盗まれちゃって」

 ぽかぽかぽかぽかぽか。「痛いっ痛いっ痛いっ痛いっ痛いっ、嘘つきっ」


 「何やってんだ、アイデースっ」

 「仕方ないだろっ、俺とペル、鳥や魚や獣だけで、どうやって冥界めいかいおさめろって言うのさっ、だから人を送ってくれって言ってるじゃないかっ」


 「・・・分かったっ、兄ちゃん達が悪かった、うん、ちゃんと送るよ」

 「ちゃんと送ってよ」


 「分かった分かった、で、ぽーちゃんはどうするの」

 「どうもこうも、オリハルコンで造られた得物えものを持ってる時点で、一戦交えるしかない、下手したらこっちがほろぶ」

 「ポー兄貴なら大歓迎っ」

 ぽかぽかぽかぽかぽか。「痛いっ痛いっ痛いっ痛いっ痛いっ、やぁ~めてっ」


 「ぽーちゃん、手伝うか」

 「お~、それは助かる、じゃぁ~さっ、人魚族を海面に追い込むからさ、いかづちを落としてくれない」


 「…でも、それじゃぁ、しびれて、ぷかぷか浮くぐらいじゃないの」

 「まぁねぇ~、何のかんの言っても、我がいとし子達だから」

 「何だよっ何だよっ何だよっ、それじゃ俺の所に来ないじゃないかっ、ポー兄貴の嘘つきっ、もうっ、ポー兄貴が来てよっ」

ぽかぽかぽかぽかぽか。

 「痛いっ痛いっ痛いっ痛いっ痛いっ、ペルの可愛いお手手が荒れちゃったらどうするのさっ」


 「待った待った、ぽーちゃん止めてやれよ」

 「だって兄貴ぃ~、アイデースが、俺に冥界めいかいに来いって」


 「俺達が悪い、アイデースの所に誰も送って無いからな、許してやれ」

 「だったら兄貴の所から送ってやってくれよ」


 「しかしなぁ~、神をうやまわないと言うだけで、我がいとし子をあやめる事は出来ないしなぁ~」

 「でも近頃じゃ、神々より優れたわざを持っていると言ってる者もいる見たいだし、不敬ふけいと言う事で」


 「ぽーちゃん、神様がそんな実態のない事で、いとし子達をあやめちゃ駄目だめでしょう、神は寛大かんだいでなくっちゃ」

 「ぇぇぇえええ、兄貴ぃ~」


 「分かってる分かってるよアイデース、だからと言って、神をうやまわない事をゆるすつもりはない」

 「じゃぁ、どうする兄貴」


 「俺は心が広い、我がいとし子に今一度機会きかいを与えよう」

 「何をするのさ」


 「幸薄そうな者に、俺達神々から贈り物をする」

 「何故それが機会きかいを与える事になるのさ」


 「まぁ、聞け、その贈り物の中身は、あらゆる災禍きかい、全ての害悪がいあく、様々な悪疫あくえきを入れ、決して開けてはいけないと告げる、まだ神をうやまう心があるなら開ける事は無いだろう」

 「へぇー、面白そう」


 「ぽーちゃんもそう思うだろう、神をうやまう心があると分かったその者には、改めて一層の加護と祝福と素晴らしい贈り物をしよう」

 「でも誰にするの、兄貴ぃ~」


 「アイデースっ、ま~かせて、丁度いい女がいる」

 「こんな重大な事を背負せおえる人間がいるの」


 「いる、それはそれは美しい女が、くそ~っ、神である俺をそでにして、エピメとか言うおろか者とつがいになりよってぇーーーーーっ」

 「「・・・・・・」」

 「なぁ~、兄貴、心せまあー、全然寛大かんだいじゃない」


 「だってぽーちゃん、俺は神、神様だよっ」

 「兄貴ぃ~、可哀想かわいそうだよぉ~」


 「そんな事ないからっ」

 「分かったよぉ~、ならせめて、俺からも贈り物をさせてよ」

 「そうだろう、アイデースも何か入れてやれっ」


 何この神様、振られたからって、嫌がらせするぅ。

 「末っ子の神様はなぁ~、それはそれは不憫ふびんに思われてなぁ~、贈り物の最後に希望を入れたんじゃぁ~」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る