第3話 神の加護

 「さてさて、我が愛し子はどんな感じかな、増えとるかぁ~」

 「兄貴ぃ~」


 「何だ、アイデース」

 「いや、・・・『何だ』はないだろう」


 「ちょっと待ってくれ~、おっ、家を作れる様になったのか、粗野そやだが立派りっぱだ」

 「なぁー、兄貴」


 「何、どうした」

 「俺の所に誰も来ないんだけど」


 「えぇ、そうかぁ」

 「ちゃんと話を聞いてくれよ」


 「聞いてるって、・・・あっ、増えてる増えてる」

 「なぁ~、俺の所に来るの、人間にわれた、魚とかぁ、鳥とかぁ、獣とかぁ」


 「あーっ、今ちょっと待ってくれ、我が愛し子が獣に襲われてるんだっ」

 「なあー聞いてる」


 「聞いてる聞いてる、あっ、こら、駄目だろう、此奴こいつ、おい、ちょっ」

 「なあー、聞けよぉー、兄貴が言ったんだろう、冥界めいかい統治とうちを任せるってぇ」


 「こらこらこら、・・・そうだ、あわれにも器を離れたたましいを集め、罪過ざいかおかした者にはつぐないを、清き者は転生てんせいさせる」

 「だーかーらっ、誰も来ないじゃないかっ」


 「あーーーーーっ、此奴こいつめ、我が愛し子に何をするかあーーーっ」

 「あーーーもう、こうしてやる」


 「あっ、アイデース、止めろよぉ~、折角せっかく助けたのにぃ~」

 「そーやて皆助けるから、俺の所に来ないんじゃないかっ」


 「待ってろよ、今助けてやる、神の加護だ、感謝も忘れるなぁ~」

 「なぁ~、俺は何をすれば良いのさぁ~」


 「うんうん、良きかな良きかな、・・・アイデース、新婚だろう~、する事はいっぱいあるだろう、いっぱい、忙しくなるまで、いちゃいちゃしてれば良いじゃないか」

 「まぁ、そうだけどぉ、こぉ~何て言うの、恰好かっこう良く神らしいところも、見せたい訳よ」


 「・・・飽きたのかぁ」

 「全然、全然足りない、一億年と二千年後も愛してる、ペル可愛いから」


 「あ~、はいはい、ならいいだろう」

 「いやぁ~、でも兄貴」


 「まぁ、もうしばらく待ってろ、数が増えれば自然と冥界めいかいく者も増えるはずだ」

 「分かったっ、もうしばらく待ってみるわ、でも、少しはこっちにもかせてやってよ、ペルにつかえる者も欲しいから」


 「分かった分かった、で、どんな子が良いんだ」

 「このぐらいでぇ、御目目おめめがぱっちりしてて、膨らみかけ、見たいなぁ~」


 「お前の趣味じゃ無い、ペルに、つかえさせるんだろう、ペル怒るぞ、俺は止めないぞ」

 「ほ、ほ、ほら、近い子が良いでしょう」


 「お前、話し、聞いてた、これから増やそうとしてるのに、そんな子いないよ」

 「じゃぁ~、良さげな子がいたらさぁ、話してみてくれない、通いでもいいから」


 「あほ、通いは駄目だ、そう言うのはヘルメにまかせてある」

 「とにかくよろしくっ、今日は帰るわ」


 「分かった、ペルによろしくな、今度は一緒に来いよ」

 「あぁ、姉さんにもよろしく言っといて」


 「おう」

 「じゃ、また」


 あんおばあちゃんの話だと、神様ってこんな感じだったかなぁ~。

 「いくさに勝った神様はのぉ、兄弟で、おさめる地を分けたんじゃぁ~」


 「仲良しさんだね、めぐみちゃんは弟がいるの、直ぐにたたくから、春奈はるなは妹が良いの」

 「春奈はるなは一人っ子なんかぁ~」


 「うん」

 「そうかい、ばぁ~ちゃんが言ってやろうかぁ~」


 「うん、可愛い赤ちゃんが欲しい」

 「そうかいそうかい、ちょっとまっときぃ~、ことちゃん、・・・ことちゃん」

 「はい、ちょっと、これすみません」

 「こっちこぉ~」


 ママはそそくさとやって来た。

 「はーい、何かしら、あんおばあちゃん」

 「ことちゃん、旦那さんは元気ないのかのぉ~」


 「えっ、いえ、凄い元気ですけど、あっ、すみませんうちの人にも気を使ってもらっちゃって、もうこっちがへとへとになるくらい元気だから、気を使わないで」

 「あぁ~そうかい、それはおさかんでええ、春奈はるな、赤ちゃんは、す~ぐに見られるわ、待っとりぃ~」


 「分かった、ママ、私妹が良いの」

 「はいぃ、・・・あんおばあちゃん、そうじゃないから、春奈はるなっ」


 なあはははははは、ママの顔可笑おかしかったぁ~。

 耳まで真っ赤にして、私をにらんでごまかしてた。

 今のところ一人っ子だけど。

 「続きじゃぁ~、神様の一番上のお兄さんはな、おそらおさめる事にしたのよぉ、二番目の神様は海をおさめ、三番目の神様は地を治める事にしたのじゃぁ」


 「ち」

 とんとん。「ここじゃぁ、べたじゃ」


 「本当っ、春奈はるな神様に会いたい、おうち何処」

 「会う事は出来できんのじゃ、死んだ人しかけんのよぉ」


 「そうなの」

 「じゃがのぉ、大長老様のお話でなぁ、何処かに入り口が、あるらしいのよぉ」


 大長老様は実在した。

 はぁ~、あの素敵な大長老様は、今も私の胸の奥にいるの。

 だとすると、黄泉よみへの入り口は、この世の何処かに実在するのかしら。

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