第2話 初めの人

 あんおばあちゃんはお話しを続けた。

 「むかぁ~し昔の事よぉ」

 「どれくらい」

 「うぅ~ん、こぉ~れ、ここえこぉ~」


 ぽんぽんと、あんおばあちゃんがひざを打つので、私はおひざの上に乗った。

 今から思えば、あんおばあちゃん、足、痛かったと思う、私のおバカ。

 「えぇ~かぁ~、大長老様から数えて、ばぁ~ちゃんは一四代目よぉ」


 「春奈はるなわ」

 「数はぁ~、まだ数えれんのかぁ~」

 「春奈はるなできる、いぃ~ち、にぃ~ぃ」

 「賢いぃ賢いぃうんうん、ならばぁ~ちゃんと数えよう、えぇかぁ~」

 「まいれっ」

 「おぉ~威勢いせいがえぇ~の、とうまで数えてみぃ~」


 私は指を折って数えた、と思う。

 「えぇ~ぞ、とうといぃ~ち、ばぁ~ちゃんのばぁ~ちゃん」


 そして薬指くすりゆび

 「とうと四、ばぁ~ちゃんじゃぁ、あそこにおるのは誰じゃぁ」

 「春奈はるなのおばぁ~ちゃん」

 「そぉじゃぁ~、数えてみぃ~」


 小指こゆび

 「とうと五」

 「そうじゃぁ、あそこにおるのは誰じゃぁ」

 「ママ」

 「幾つじゃぁ」


 小指こゆびを伸ばす。

 「とうと六」

 「次はだれじゃぁ」

 「春奈はるなっ」

 「そうじゃなぁ、幾つになった」


  今度は薬指くすりゆびを伸ばした。

 「とうと七」

 「そうじゃそうじゃぁ、春奈はるなは大長老様から数えて十七代目よぉ、むかぁ~し昔と言うのはのぉ、ばぁ~ちゃんのばぁ~ちゃんのもっともっと昔よぉ」

 話を思い起こすと、私はどうも大長老様の直接の子孫しそんみたい。


 葬儀そうぎをしていたあんおばあちゃんのお家は、田舎の旧家で、母屋おもやと離れが二軒、蔵が一つ。

 親戚しんせき中が集まっていて、母屋おもやと離れを合わせると百人ぐらいいたと思う。

 そして親戚しんせきと言うのが、肌の色も、瞳の色も言葉も違っていた気がする。


 だって、私は平たい顔族なのに、スージーお姉ちゃんはちがってた。

 金色の髪、二重ふたえで青いひとみ、スッキリと通った鼻筋、スタイル抜群ばつぐん

 ぜぇーんぜんちがぁーーーうっ。


 それに大長老様。

 私がおじいさんと言ったのは、たった一つの理由からだった。

 並ぶひつぎのひいおじいちゃんが白い髪で、大長老様も白髪はくはつだったからだ。


 でもひつぎのぞいた時、あ~思い出して来た。

 大長老様ぁ~、ひゃぁ~~~、ばくばくするぅ~。

 そのお顔は彫りが深く、鼻筋が通り、瞳の色は分からないけど、長いまつげ、彫刻の青年の様、超美形。


 でも、・・・肌は赤みがかり、とても亡くなっている様には見えなかった。

 ただ眠っているみたい、それに微笑ほほえんでいた様な。


 「神様が人をおつくりになる前、神様達はなぁ、いくさをしておったそうじゃ」

 「いくさ

 「喧嘩けんかじゃぁ」


 「喧嘩けんかをしてはいけません」

 「そじゃそうじゃぁ、でも、しておったぁ~」


 「どうして喧嘩けんかをしてたの」

 「一番の神様を決める為じゃぁ~」


 「じゃんけんにすればいいのに」

 「そうじゃな、そうじゃそうじゃ、しかしのぉ、神様達は、片方の神様がいなくなるまで戦ったんじゃぁ」


 「いなくなるまで、何処かに行っちゃたの」

 「うんにゃぁ~~~、炎とかみなりで焼いたのじゃぁ」


 「お魚みたいに焼いたの」

 「まぁ~、そうじゃなぁ、・・・近頃の電子れんじ、みたいなものかのぉ~」


 「黒焦くろこげだね、ママみたい」

 「春奈はるなっ、余計な事言わないっ」

 「いやいやぁ~、真っ白い灰になるまで、いたんじゃとぉ」


 う~~~ん、神様って、慈悲じひ深くないの、き殺すとかひどくない。

 「ふ~ん」

 「そして、一番になった神様はなぁ、色々な物を作るのが、じょぉ~ずな神様を呼び、残った灰で人をつくったんだとぉ~」


 「変なの」

 「そうじゃな、変じゃなぁ~、それから灰をねてねて、男は神様に似せて雄々おおしく、女は女神様に似せて、それはそれは美しくつくられたそうじゃぁ~」


 「春奈はるな、可愛いって言われる、綺麗きれいじゃないの」

 「えんじゃえんじゃ、それで」

 あんおばあちゃん、私もスージーお姉ちゃんみたいがよかったなぁ。


 「それでどうしたの二人しかつくらなかったの、今いっぱい人いるよ」

 「あぁ~、二人はなぁ、神様達から色々な祝福を受けてなぁ、大地からも色々なめぐみをもらったんじゃぁ~」


 「めぐみちゃんがいたの」

 「うん、お友達かいぃ」


 「そう」

 「そっかそっか、でもお友達じゃぁ~ないのぉ、めぐみと言うのはなぁ、ご飯の事よぉ、そして二人は神様に感謝をしぃ、お供えをした、そうするうちに少しずつ、人は増えていったのじゃぁ~」


 「ふ~ん、どうやって増えたの」

 「あぁ~それはなぁ、男がなぁ、女に」


 「あんおばあちゃん、あんおばあちゃん、春奈はるな七つだから」

 「あぁ~、ことちゃんかい、ええがのええがの」

 「ダメですっ」

 あんおばあちゃん、何処まで話す気だったんだろう。


 「神様の灰でつくられた光の種族はなぁ、歳も取らん、そのがらちぬのよぉ」


 「その人達は死なないんでしょう」

 「おぉ~そうじゃそうじゃぁ~、これはのぉ、黄金の種族になってから分かった事なんじゃとぉ」

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