第2話
僕が未来を見える様になる前はごく普通の高校生だった。普通というのがどんなものかわからないけど、とにかくテレビのコメンテイターとか新聞にあるような共通認識でいうのなら本当に一般的なステータスの家庭だった。昨今では世帯年収の二極化が顕著になってきているなんてことを耳にするのだけれど、収入面で見る限りはそれほど困っている様子はないし、
裕福と行った感じもない。それは僕が手にできる月の小遣いからもたしかなことだと思う。
確信して言えることもないのだけれども、それでもやっぱり中間に位置していそうなことだけは確かだ。上でも下でもない、中間に位置していているのはまあいいことだとは思う。というのも一応僕なりの見解がある。上は上で競争が激しそうだし、下になると僕の生活が困窮してしまう。ならば無駄な争いが生じないようにうまくやっていくには適した位置にいるのではないだろうか。そういった意味ではありがたく感じている。
僕はといえば高校二年生で、自宅近くの都立高校に通っている。偏差値はそこそこで、極端に低くはないといったところだ。特別な特色があるようなところでもない。一応のところ進学校として名を売っているところだが、この学校で特色あるものはなんでしょうか、こういった質問に対する答えとして、大人の事情のために用意された合言葉のようなものである。耳障りが良くて、マイナスになる要素でもない、ただ想像通りのすごい成果では無いということも暗に共有されていることでもある。それはさて置き、学業も普通、部活も特に目立ったもの無しの学校に通う僕はというと、同じように大した面白みの無い人間だった。ここまで書いていればわかる通り、この学校と同じで、大した成績な訳でもない。自分で言うのは変なのかもしれないが、少しばかりは勉強ができる方なのかもしれない。だけど、それのほとんどは予備校で教えてもらう効率的な単語の覚え方だったり、傾向となるポイントを押さえた問題の解法だったりする訳なので、なにも自分で一生懸命頑張って方法を見つけたとというわけではないのだ。
例えば予備校で学んでいることといったらこんな感じだった。英語の講師曰く、単語を覚えるのは何かに関連つけて覚えるのがもっとも良いです、ですので、海外ドラマなどで実際に使っている場面を見るけるといいでしょう。ですが、そうはいっても探すのは大変です。なので当校の教員の方々が撮りためた単語別場面ごとのイメージビデオを見て勉強しましょう!
そう言って見せられたのは、講師たちがやたらと面白おかしくした格好で会話を繰り広げるおふざけに近いビデオだった。
どこかの動画サイトみたいにニコニコとまではいかないまでも僕たちの年頃では笑ってしまうネタを詰め込んでいるわけなのだから、頭を働かせてなくても自然と覚えていけるようになっているわけなのだ。自分で想像力を働かせるわけでもなく、自分なりの覚え方でやる訳でもなくて、誰かが考えた中学生や高校生の学習で、しかも僕のような熱量の少ない生徒にも成績を上げさせる方法が編み出されているわけなのだから、すごいと関心する。
それから僕は無趣味といってもいい。部活動に入っていないし、ましてアルバイトをしている訳でも無い。どうして何も活動らしいことをしてないかといえば、特にやりたいことが目の前に無いからなのかもしれない。ならば自分で何かを見つけてみたらいいのではということにもなるのだが、残念なことにボールを追いかけて運動するゲームも、文化的な打鍵運動や創作活動なんてきっと向いていないと始めからきめているのだ。自分でもどうしてここまで興味が出てこないのか不思議でもある。だけど正直なところは、僕にとってはどんな活動だとしても、きっと意味なんて見出せないそんな気がする。
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