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水門がいる時計台のあたりからゴー、ゴーとうねるように異次元が渦を巻き、波の花中学校舎を仰ぐ空は天上の海のようになっていた。水門の感情は頂点に達しようとしている。優実とヤーミは立ち上がり行くよ、と言うと水門の方を向いた。
「スイモン、話があるんだけど」
「なんだ」
「あなたには同情するわ。デートで彼が自分の事ほったらかしにされるのはイヤよね。だけど、彼だって海とか川とか綺麗な所に連れてって釣りの楽しさを知って欲しかったのに。‥‥ちゃんと想っててくれたのよ」
ヤーミに淡々と言われてムキになって水門は叫んだ。
「俺だって‥‥彼と一緒にカフェでお茶を飲んだり買い物に付き合って欲しかったんだ!」
「カフェなんて私が連れってってあげるわよ。あそこに居る彼女だって、ね!」
そう言ってヤーミに唐突に指を刺された沙佳理は戸惑いながらも言った。
「そ、そうよ。あたしが買い物にも行ってやるよ。そんな男と行くより全っっ然楽しいじゃん!」
「おいおい、あいつは曲がりなりにも、一応男だぜ!」
沙佳理に応人が口を挟むのを横目に見ながら優実は水門に言った。
「異次元から来てせっかく彼氏ができたのに、こんな事して本当に残念ね」
「うるさぁあぁーーい黙れ!!」
激昂した水門は全開の攻撃を放つと、優実とヤーミを襲い二人は異次元の中に包まれた。
「鈴木さん!」
異次元の中にみるみるうちに二匹の魚の影が浮かび上がる。
「ま、まさか‥‥!」
見ていた一同が凝視したその時、二人は人間の体の残影に変わり光り輝いた。
魚のようなしなやかな体が姿を現すと、ヤーミの結っていた長い髪がなびき、優実のセピア色とヤーミの紫色の制服は体に硬化された鱗を纏ったものへと変化していった。
「‥‥‥‥‥」
皆の表情が固まった。魚の方がまだマシだったと‥‥‥
優実とヤーミは異次元の空に浮かんでいる。尚たちから見れば海上の魚を眺めているように。
「鈴木さん、ど、どういう事?」
尚が下から心配そうに尋ねると優実は言った。
「言ったでしょう。私たちは異次元からやって来る者たちから、この学校を守る為にいるのだと」
「チッ、元々魚のお前らに効かないのならば本物の攻撃をする!」
水門は異次元の中から無数の石礫を四方から放った!優実は滑るように回転した。下界から見ていた者たちは次々とその姿に魅入るように声を出した。
「シングルサルコウ、シングルトゥループ!」
優実はフィギュアスケートの競者のように舞いながら飛んできた攻撃を次々と跳ね飛ばして石礫を消し去っていく!!
「おぉっ!!シングルルッツ、ダブルサルコウ!!」
そこで皆どよめきが沸き起こった。
「ブロークンスピン、レイバックスピンからの、高速スピン!!!」
優実の高速回転で異次元がビッグウェーブのように大きな渦となると、ヤーミは水門へと突入した。
「私が勝ったら大人しくなってもらうわよ!!」
水門はさらに無数の石礫を放つとヤーミは魚のように高速の速さでかわしていった。異次元の海の中に一瞬隠れ姿を消し、目を眩ますと大きな異次元の渦から突如現れ、水門は叫んだ!
「くぁぁあぁっ!!!!」
ヤーミはニヤッと笑うと水門に喰いついた!!
「水門、敗れたり!」
水門はヤーミに捕まれながら地上に下ろされると異次元は消え去り、優実とヤーミの姿は元に戻った。
「そうだ、これ返さなきゃ」
尚は水門に写真を渡した。水門はその写真を見ながら彼との思い出を回想すると、次第に手を付いたまま大粒の涙を流した。
「彼は、釣りをしている時は純粋に楽しんでいた‥‥それなのに、俺は!!」
波校長が水門の肩を撫でると、穏やかに言った。
「いいのです。あなたはこの学校の生徒になって貰い、とりあえずはドッジボール大会に参加してもらいましょう」
「そういえば、忘れてた‥‥」
「さあ皆さん、始めましょう!!!」
「おはよう」
翌朝、優実は登校してきた尚と宏に話しかけた。
「鈴木さん、今度の休みの日、僕達釣りに行こうと思って」
「尚も?どうしたの?私がいるとやりにくいと言っていたのに」
「うん、やっぱり僕、魚が好きなんだ‥‥君も来る?」
「うん、行く!」
優実が笑うとヤーミがその顔を覗き込んだ。
「あら、すっかり潮らしくなって。コザカナにやられてどうかしちゃったの?」
「何よ!!」
優実とヤーミが言い合いを始めようとしたその時、マットが間に入ってきてへらっと笑った。
「僕も行くよ。装備をパワーアップしたから、爆釣だよ!」
「あのね、どれだけいい道具揃えたって魚がいなければ魚も穫れないのよ」
優実とヤーミがマットに突っ込むと水門も現れ寡黙に言った。
「俺も行くぞ。終わったらカフェだ」
「あいつらほんっとウッザい」
そう言いながら睨みつける沙佳理と応人。
青空の下、波の花校舎へと入っていく彼らの学校ライフはまだ続く!
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