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優実達がグラウンドへ駆けつけると、校舎を仰ぐ空がうねりを帯びた渦を巻いてまるでそこだけ一種の空間を造り出していた。ゴーン‥‥ゴーン‥‥とどこからともなく音が響き、彼女達だけでなくそこに集まっていた生徒達までも異変に気がついていて、それなのに誰もがこの校内の空間から逃げ出す事は出来なかった。
校舎の一番上にある時計台あたりから横一線に水色の光が輝き、それが異次元の扉が開くように広がると水がぐぉおおおーーと吹き出すように弾け、それと同時にドラの鳴る音をジャンジャン響かせながら人影が現れた!
「俺の名は、水門開(すいもんかい)!この学校は俺が乗っ取った!!」
現れたのは、名前とは裏腹に少女のように可愛くて愛らしい顔つきの、尚達と同じ位の少年だった。表情はちょっと暗めで何か闇を持っている感じがする。
「また変なのが現れたぜ。一体この学校はどうなったんだ?」
応人が呻くように呟くと、後ろから声がした。
「実は、この学校は絶えず危険に晒されているのです」
「校長先生!」
突如現れた校長の波華子に周囲は集中した。彼女は続けて言った。
「この学校は何故か異次元へと続く通り道が出来てしまい、それによって、異次元から異邦者がやって来るようになったのです」
「じゃあこの学校やばいじゃん!どうすんのよ」
沙佳理が叫んだのを尻目に波校長は空を見上げると、悲哀を帯びた眼で呟いた。
「しかし鈴木優実さん達がそれを防ぐから、この学校に居させてほしいと‥‥すなわち私が彼女達に居させるのは、彼女達がこの学校を守る為だからです!」
そんな波を見ながら校長、なんか違うよとそこに居た者達は思ったが、尚はそれって、人間へと変化した鈴木さん達も関係があるからなのではと思った。
「ふざけんじゃねぇよ!オマエら、やっちまうぜ!!」
かけ声と共に応人と子分達はグラウンドを走り出し、一斉に水門に向けて襲いかかった。水門は静かに口を開いた。
「水門は開いた。お前等、魚になって向こうの世界に行け!」
水門は手をかざし頭上から光のようなものが浮かび上がると、水が弾けるように異次元の流動となって撃った。
「ウギュぁあぁあーーー」
水門の攻撃を受けた応人は太刀魚になって空中を海のように飛び回り、子分達もその群れとなって空中を泳いだ。
それを見ながらヤーミは言った。
「あれを受けたら魚になって向こうの世界に行かされるから、気をつけなさい」
「やばいよ宏。僕達魚になったら途端にやられちゃう」
「嫌よ!私魚になりたくない!」
「皆見さん早く、こっちに隠れて!」
尚と宏は沙佳理と共にグラウンドの隅の方へ逃げるように走ると、水門は異次元の流動を放ちながら叫んだ。
「甘いぞ!!!」
攻撃を受けた尚と宏と沙佳理はそれぞれ小魚(名称不明)、ハゼ、サヨリになって宙に舞い上がった。
「あぁっ!!尚が本当にコザカナになった!!」
「連れ戻せば元に戻る!」
優実とヤーミが動こうとしたその時、突如マットが躍り出すように手に持っていた針を投げつけた!
「やったぜ!入れ 喰いだ!!!」
マットは次々と魚を針に引っ掛けて引っ張ると、魚になっていた尚や宏や沙佳理は人に戻った。
ぐぅおおお!!と太刀魚になった応人は銀色の長い体に鋸の刃のような鋭い歯を向けて空中を飛び回る!巨大な針を手にしたマットの体は金属のような輝きを放つと、何人も分身にわかれ地を蹴るや空中でジギングの動きで泳ぎ回った!
太刀魚はマットに喰らいついた!!!巨大な太刀魚を針で引っ掛けたマットは太刀魚達を次々と物凄い力で釣り上げ、もとい引き戻すと、人に戻った応人と子分達は意識が戻った。
「次は君だ!」
叫びながらマットは分散していた分身と共に水門の方向を向くと、水門目掛けて一斉に飛びかかった!!
「小癪な、釣り人の舎弟が!」
水門の頭上が再び輝き四方から飛んでくるマットに幾つもの流動を放った。
当たった分身は変化した流動に流されるように次々と合わせられ、いっしょくたになるとマットの持っていた巨大な針が絡まって互いに身動きができなくなり、そのまま地に屈した。
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