第5話》これはフォーメーションだったのです

 いやぁ、ついてるな。無限に入る鞄が手に入るなんて。あ、でも、全員に配られるやつか? まあいいか。手に入れたローブを装備しよう。


 俺は、マジックローブを鞄から出した。

 つやつやしたしっかりとした生地だ。色は同じ黒。防御力+30、魔防+30。物理防御もある!


 「これ、どうやって装備するんだ? 装着とか言うのか?」


 『マスターは、そのマジックローブは装備出来ません』


 「え? 何で?」


 『重量が5あります。マスターは、今現在1までしか装備できません。ですので、靴すら装備がないのです』


 「なんだって! 裸足なのは装備できないからなのかよ! うん? もしかして杖を装備していないのもそのせい?」


 『はい。本来は、武器も靴も装備してスタートになります。靴には防御力はありませんが、履いていないと素早さが半減されます』


 なんだって!

 慌ててステータスを開いて見ると、確かに素早さが250しかなかった。気づかなかったよ。


 「2レベル上げないとローブを装備できないなんて。それじゃ、手に入れても意味ないじゃん!」


 『そうですね。今装備しているローブをエンチャントするのはどうでしょうか? マスターはエンチャントをパッシブで持っていますので改良出来ます』


 「はぁ? それもスキルとか魔法なのか?」


 『いえ。特殊魔法で、何でもいいので三つの材料で行える様になっています。そして、レアものを入れる事で必ず成功します。今回は、マジックローブとMP回復の実を材料にいかがでしょうか』


 「うーん。レアを使うのは勿体ない気がするんだけど……」


 『エンチャントは、材料によって上がり方が違います。同じローブ系のレアでエンチャントするので、それなりに上がると思います。それに利点は、重量が変わらないという事です。これからいくらでもレアものを手にする機会があるでしょう。今回は、これで手を打つといいと思われます』


 ナビが言うのも一理あるな。そこにこだわって2レベル上げるとなると、大変かもしれない。何せHPが10しかないのだから。


 「よし、決めた。やる! で、どうやるの?」


 『はい。まず材料を地面に置いて下さい』


 「了解」


 マジックローブを地面に置き、その上にMP回復の実を2つ置いた。


 『材料に手をかざして、今回はローブをエンチャントと言うだけです』


 「わかった。ローブをエンチャント」


 手をかざした材料のマジックローブとMP回復の実が、キラキラと輝いて消滅した。


 ――ローブのエンチャントに成功して+1になりました。防御力が+20、魔防力が+20に変更になりました。


 やったぁ! 防御力がついた。


 「ありがとう、ナビ。あ、そういえば、杖がないけどさ、杖の代わりになるものってないの? 使うつもりなくても使っちゃうのは不便なんだよね」


 『では、フォーメーションを設定してはどうでしょうか? 直接魔法発動がパッシブにあるので、指の動きと合わせて発動する設定にするのです』


 人差し指を出している時とか? でも普段しない形がいいよな。


 『注意点があります。一度設定すると変更はできません。また、フォーメーションを設定すると片方から連続に発動する事も可能になります』


 なるほど。どうしようかな?

 まあ杖を手に入れるまでの間だし。忘れない形で、普段しない手の形がいいな。

 そうだ!


 「これなんてどうだ? コンコン」


 人差し指と小指をピンと立て、中指と薬指を親指とくっつけて、キツネの形だ。


 『はい。大丈夫です。では、その形でフォーメーションセットと言って下さい』


 「フォーメーションセット!」


 俺はこの時深く考えず、人前で魔法を使う事がある事にきづいていなかった――。

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