葵羽ルート 17話「裏の気持ち」
葵羽ルート 17話「裏の気持ち」
葵羽の話しは彩華の中でも衝撃的であったし、心が痛んだ。
大切な人が裏切られ、そして心を壊していくのを見ているのはどんなに辛いだろうか。そして、その原因が自分にあったと思い生きてきた。それは相当なる苦しみがあったはずだ。
そのために彼は自分が壊れないために他人に見えない大きな壁をつくった。
けれど、それはとても寂しかったはずだ。そんな彼は少しずつ彩華に近づこうとしてくれた。知ろう思ってくれた。
確かに彩華にとって彼の事を信じられないような不安を生んでしまった事もあった。それで、彩華も苦しみ、涙した。
だからと言って、真実を知った彩華は葵羽を怒る事が出来ただろうか?
出来るはずもなかった。
彼の苦しみはどうしたら癒えるのだろうか?
彩華はそう思った。
忘れる事はないし、大切の人の記憶。それを失くすのは、葵羽にとってよくないことだ。
葵羽自身、兄の光矢に言われた言葉はショックだったはずだが、兄の状態を理解していたからこそ、本心ではないとわかっていたはずだ。それに、兄の最後の手紙。それに、光矢の本心が書かれていたから。
葵羽は時間という力を借りて、少しずつ自分を取り戻してきたはずだ。
だったら、彩華に出来ること。
それは、傍にいて彼を笑顔にさせたい。
そんな風に考えたのだった。
彩華は彼にキスをされ、ボーッとなりそうな気持ちを何とか切り換えて、彼に応えるように自分からも口を開き、彼へのキスを贈る。
すると、葵羽が薄く瞳を開けこちらを見て、キスを続けながら微笑んだのがわかった。
長い長い口づけ。
少しずつ息が苦しくなってきた頃、葵羽は少し名残惜しそうに唇を話した。彩華は呼吸を少し荒くしながら、葵羽を見つめた。また、いつものようにこれでおいまいなのだろうか?そんな風に思ってしまう。
「………そんな物欲しげな表情は、駄目ですよ」
「そ、そんな顔してましたか?!」
「はい、してました」
「………それは、その………」
「さっき、あなたが教えてくれた本当のあなたの気持ち。それは私もおなじです」
「え………」
「私もあなたと会った後はいつも帰したくなかった。自分のものにしたくて仕方がなかったのですよ?………私は、裏の顔がいくつもありますね」
苦笑しながら、彩華の額に小さくキスを落とした。彩華は頬を染めた。
彼も自分と同じように、自分を求めてくれていた。それがとても嬉しかった。
「彩華さんは今日は帰らない、でいいのすよね?………私に全部をくれますか?」
「…………はい」
「それは良かった」
恥ずかしい会話をしているのはわかった。
けれど、その恥ずかしさに負けて本心を言わないでしまったらば後悔すると彩華は思った。
彼の言葉に肯定の返事をして頷く。
すると、葵羽は彩華を抱きしめたまま、大きなソファに彩華を押し倒した。それと同時に彩華にまたキスを繰り返す。けれど、それは今までに感じた事のない深く激しいキスだった。
葵羽の口や舌、唇の感覚を感じながら、全身が熱くなる。口が深くなった事で、彼の体がピッタリとくっついてくるのがわかった。
静かな部屋に荒い呼吸と、お互いの唾液が絡む音が響く。聴覚も、彩華を興奮させているようだった。
「……っっ………葵羽さん………」
彼の手が胸に触れた途端、彩華はビクッと体を震わせた。
わかってはいた事だ。
唇だけでは終わらないことを。それを望んでいたのも彩華。
けれど、キスだけでいっぱいいっぱいに快感を感じていた彩華は、これからどうなってしまうのだろうと、怖ささえも感じてしまった。
緊張しながら彼の胸に置いていた手が強く握りしめられ、葵羽の服を掴んだ。
すると、それに気づいた葵羽が、キスを1度やめた。けれど、彩華の首筋をペロリと舐める。彩華は「………ぁ………」という、人には聞かせた事のない甘い声を上げてしまう。
すると、葵羽はとても嬉しそうに笑みを浮かべた。
「彩華さん、もう1つ私には裏の顔があるみたいです。……少し意地悪したいな、と思ってしまう男の悪い顔が………」
「それは、少しわかってました………」
「そうでしたか。それでは、遠慮はいりませんね」
「え………」
葵羽は、そういうと彩華の耳元に顔を近づけて、とても低い声で囁いた。
「ベットに行きましょう。そこで、あなたの全てを私に見せて………甘い顔も、とろけた瞳も……ずっと見たい、触れたいと思っていた肌も。そして、見た事もないあなたの表情を私にみせてください」
甘い甘い誘惑の声。
彼の表情は真剣な中にも熱をもっているのがわかった。
頷く事しか出来ない。そう思ってしまいそうだったけれど、彩華は震える声で小さく言った。
「葵羽さんの事も全部見せてくれますか?必ず、裏の顔のあなたも好きになります………」
「………後悔しないでくださいね」
「はい」
そう言うと葵羽はソファに横になっていた彩華を抱き上げた。いつもは子どもを抱き上げている方だが、大人になってからこうされると怖いと思ってしまい、咄嗟に彼にしがみつくと、「可愛いですね」と、葵羽は嬉しそうに笑った。
葵羽がゆっくりと歩いて連れていってくれたのは寝室だった。大きなベットの向かい側には、立派なオーディオが置いてあり、普段自宅にはないような大きなスピーカーも設置されていた。彼らしい寝室だな、と冷静に考えながらも、彩華の鼓動はどんどん早くなっていく。
彩華をゆっくりとベットの上に下ろすと、葵羽はそのまま彩華を見下ろしながらベットに膝をつけた。
そして、熱くなった指で彩華の頬に触れる。それが心地よくて彩華はつい目を細めてしまう。
「お望み通り、沢山私を知ってください。その対価はもちろん、彩華さん自身です」
「………はい」
「………いや、対価はいらない……いつでも私を求めて欲しいです。それは私にとって幸せな事なんです」
「じゃあ、沢山キスしてくれますか?」
「もちろん。でも、恥ずかしいって言わないで、全部私に見せてくださいね?」
「え、それは………」
「ダメです。恥ずかしがっても見せてもらいます。隅々まで、そしてあなたの奥深くまで………ね?」
彼の言葉はとても妖艶で、彩華は一気に体がきゅんとしてしまう。
葵羽が彩華の体に唇を落とし、服を脱がせながら、ゆっくりと彩華を誘導するように優しく触れる。気づくと服を下着を脱がされていた、という状態だった。
全てが初めての感覚で、彩華は葵羽に翻弄されながらも甘い快楽に溺れていく。
彼の少し意地悪な言葉と裏腹な指や体の動き。そんな紳士的だけど男らしさがある彼に、ますます夢中になってしまう。
彩華は、そんな予感を感じながら、初めの濃厚な甘い時間を葵羽と過ごした。
涙が溢れてくるぐらいに幸せな夜だな。
彼を感じながら、彩華はそう心から思った。
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