混沌の狼が生まれた切っ掛け(誕生の裏話)

路地裏の本棚

命の危機を感じた時、物語は生まれた……。

 「混沌の狼」は、私の中で最初に明確な形で表に出せた物語でした。今回はこの物語が誕生した「切っ掛け」について、私自身の振り返りという形でここに残したいと思います。


 幼い頃から1人遊びが好きで、特に頭の中で物語を思い描くことが好きだった私ですが、カクヨムで小説投稿を始める前から、違った方法で想像を形にすることをしてました。


 とは言え、恥ずかしながら私は絵が大の苦手で、数回だけですが、小学生の頃に書いた漫画、と言っていいのかどうかも分からない下手なイラストと支離滅裂なストーリーを描いたことがありました。

 それも衝動に駆られ、というより、衝動に振り回される形で生み出したものでした。正直、人に見せられる類のものではありませんでした。それ以外だと、ふと思いついた武器、剣や刀、槍、それもミニチュアレベルの物を紙で作って遊んだりと、今考えても奇妙な遊びをしてました(笑)


 昔の私にとって、頭の中に思い描いたものを形にするという行為は、このささやかな工作や漫画(?)制作くらいだったと思います。


 そうこうしながらも、私の頭の中では、これまでに見聞きしてきたアニメや漫画、小説やドラマなどをベースとして、次々と設定やキャラクターが誕生し続けました。大半は混沌の狼において使われなくなったものも多いですが、私個人としてはそれが楽しかったのは確かです。


 そんな私に、大学生の時に転機が訪れました。当時の私には、よく話しかけて来る一学年上の先輩と多少の交流がありました。その方との出会いは自分から話しかけた訳ではなく、講義などで一緒になることが多かったので、自然とお話しする機会が出来たからというものです。結構前の話なので具体的にどんな話をしていたのかと言うことは覚えてはおりませんが、盛り上がったことは確かです。


 しかし前期の最後の試験が終わった日は違いました。その日私はその先輩から「テストが終わったら〇〇駅の喫茶店でお茶しようよ」というメールが入ってきました。私はそれに従って指定された駅まで電車に乗って向かいましたが、その時は先輩の姿はありませんでした。

 いつになったら来るんだろうと待つこと2、30分経った頃になってようやく先輩がやってきました。しかしその時の先輩の様子はいつもとちょっと違っていました。


 その時のいつもの私服姿ではなく、ぴっちりとしたスーツ姿でした。「あれ? 後輩とちょっとお茶するだけなのになんでめかしこんでるんだ?」と思った私でしたが、次に驚いたのは、その先輩の後ろから知らない若い男性2人が先輩の名前を呼びながらやってきたことです。

 先輩はその2人の男性に私のことを紹介し「じゃあ、あの喫茶店で一緒にお茶しようか」という風に切り出し、私は3人についていってその喫茶店に向かいました。


 喫茶店に到着し、4人テーブルに案内されてそこに座った私達は、しばしの間お互いの自己紹介や雑談などをして時間を過ごしましたが、20分ほど時間が経った頃になり、先輩を読んだ例の2人の若い男性の片方が「実は僕達、こう言うことをしてるんだけど……」と言いながら茶色い大封筒を取り出し、中身を次々とテーブルの上に置き始めました。


 出されたものは、ある宗教組織のパンフレットでした。そうです。私はこの時「宗教勧誘」をされていたのです。例のスーツ姿の先輩もその宗教のメンバーで、大学内で孤立している学生を勧誘する為の役割を担っていたのでした。


 しかし私はそれに対して冷静でした。というもの私自身、1人遊びが好きという性格なので、そこまで人と一緒に遊ぶということに執着していなかったのです。その上大学でも孤立していたという訳ではなく、ゼミで一緒になった友人がそれなりにいました。そんな中でこの先輩はかなりしつこく、そして一方的にこちらの方になれなれしく接してきたので、確かにお話自体は楽しかったのですが、内心ではうっとおしさすら感じ始めておりました。

 それに加え、大学などで1人でいる人に声を掛けてそう言った勧誘をする人間がいるという件を私はネットなどで以前から知っていたこともあり、その可能性を疑っておりました。


 話は逸れましたが、そんなこともあって私は冷静に彼らに「自分は宗教に入るつもりは毛頭ありません」と告げて自分の注文した分のお金を机に出してその場を立ち去りましたが、背後から「神を信じなければ救われることはない‼」と叫ぶ若い男性の声が店内に轟いたを覚えております。


 正直その時は家に帰るまで、自分達のしたことをばらされない為に命を狙われるのではないか、という恐怖で心が押し潰されそうになりました。なんとか家に辿り着いたときはほっとしました。


 その日は怖くて眠れませんでしたが、次の日になるとその先輩は特に私に絡んでくることもなく、それ以降その先輩との交流はありません。勿論メールアドレスも変更したので、向こうから連絡が来ることもなくなりました。


 当時はとにかく怖かったですが、その事件からしばらくしてから、私の頭の中に「カルト宗教組織とそれに対抗する武装組織との戦い」という設定が浮かび上がってきました。それが今の「混沌の狼」の原型になった設定です。


 その頃の物語設定では、局長や副長も含めて、構成員はすべて男性のみになっていて、女性キャラが1人もいませんでした。女性キャラが頭に思い浮かぶようになったのは、それから1年後のことになります。

 実はその時、簡単な登場人物紹介と物語の冒頭部分も手書きで大学ノートに20ページ前後で書いたことがあります。冒頭の描写から一連の流れの大本は同じでしたが、今以上に無理くりな流れになっていて、あの時点では私は小説を書こうという気を失ったのを覚えております。それでも、物語を頭の中で思い浮かべることをやめることはありませんでした。今にして思えば、この行動自体が私にとって本能的な物なのだなと思っております。


 再び物語を形にしようと思ったのは、それから3年経過した頃でした。その頃になって「結構設定が出来て来たから、せめて設定集くらいは書こうかな」とふと思いついたのが切っ掛けでした。さっそく自分のノートパソコンのWordを開き、思いついたキャラの設定や組織、そして武器や格好などを次々と書き出していきました。


 その途中でMASTERを宗教組織から、単なるテロ組織という形に変更したのを覚えております。理由としては、この宗教の教義なり組織構成を考えるのが面倒になったからです(笑) なんとも情けない理由ですが、細かいところまで作り込みたいという自分の性格を考えると、余計な部分にまで手を広げて物語を書くことに取り組めなくなるという可能性もあったので、この判断は今でも正解だったと思っております。


 それから1カ月も経たないうちに「折角設定まで書いたんだし、書けるところまで物語を書いてみるか」という思いから、第一章にあたる「黒狼の眼覚め」を執筆し始めました。

 それからかれこれ数年の月日が流れ、最終回まで書いたこの小説を投稿し続け、また他の方々が執筆された小説を読む日々を送る私ですが、今でも「何か新しい小説を書けたらいいな」という思いは残っております。


 創作というものは本当に不思議なもので、どこに、どんな形でそのアイデアが浮かんでくるかは全く予想が出来ません。それがこれまでの人生経験の下に出来るのか、ふとした時に思い付いた展開が物語になるのか、あるいは自分の恥ずかしい趣味をベースにするのか、理由はそれぞれだと思います。そもそもの話になりますが、混沌の狼自体が、そう言った理由が融合して生まれたものですので……。


 なんとなく纏まらない感じになってしまいましたが、これからも様々な物語から色んな事を吸収し、新しい小説を生み出せればなと思っております。

 


 

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