013 VS通り魔4
意識が朦朧とする中、リナは息苦しさに喘いでいたが、それだけだった。
武器もない、酸素もない、首を掴む手を払う力もない。
こんな生活をしているのだ。いつ野垂れ死んでもかまわないと考えていたのに、それでもリナはあがこうと、無意識に蹴りを通り魔に叩き込んでいく。しかし、体格差が災いして威力がない。
このままでは死ぬ。リナも、通り魔も同じことを考えた。そんな中、ミサは頭を動かさないようにして脳震盪の回復を待ち、棍棒を掴むために目だけで探している。
もう限界……誰もがそう考えた瞬間、リナの手は力なく落ちた。
通り魔の男はこれで終わりだと思ったのだろう。首を掴んでいた手をゆるめた。
その一瞬だった。
びゅっ……!!
「が? があああぁぁぁぁ……!!!!」
突如、通り魔の意識の外から煌めいた白刃が、リナの首を掴んでいた腕を切り裂いたのだ。
その正体を探ろうと、視界を巡らせると、いた。
膝を畳み、地面にナイフを持ったままの片手でついた、金髪に染めた少女の姿が。
「が、がが……?」
通り魔は一瞬狂気に駆られた。それでも状況を確認しようと常人越えした眼差しを動かす。
何故生きている? 死んでいないからだ。
何故ナイフを持っている? 俺から盗んだからだ。
では何故、
何故黙ったまま身構えている?
性格が変わった? 何かの思考のスイッチが入った? 違う、意識が飛ぶほどブチ切れているのだ。
じゃあ何故、ガムシャラに襲いかかってこない?
まさか、まさか? まさかっ!?
……俺を殺そうとしている?
通り魔はナイフを構え、その勢いのまま駆けだした。しかし、同時にリナのもう片方の、ナイフを持っていない方の手が動く。
背後の壁に何かを擦りつけ、そのまま投げつけてくる。
何だ、と通り魔は考えるが、その前に答えがでた。
ピカッ……!!
それはクロが用意した護身具、マグネシウムとマッチ箱に使われている赤燐等を混ぜ合わせて作られた手製の閃光弾だった。
閃光に視界を奪われ、通り魔は目を覆い、タタラを踏みつつも後方に下がろうとする。
ダンッ!!!!
しかし、何かを強く踏みしめる音がしたかと思うと、次の瞬間にはリナが通り魔の懐に入り込み、ナイフを深々と、鳩尾めがけて刺し突いた。
そのまま相手を突き飛ばし、地面に倒してから飛び退く。いつの間に抜いたのかまた盗んだ別のナイフを、今度は通り魔の顔面めがけて突きだした。
「あ、あが……」
鳩尾への刺突、そして飛び出た眼球に直接刺されたナイフにより、通り魔は死んだ。
ザクッ、ザクッ、ザクッ…………
それでもリナは、ナイフを刺しては抜くを繰り返した。
リナは……止まらなかった。
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