011 VS通り魔2
武器にも相性がある。
ナイフと刀では刃渡りが違うように。
刀と銃では間合いが違うように。
銃とバズーカでは威力が違うように。
目的と用途に応じて、武器は多岐に渡って存在する。
だからこそ、その武器ではこの武器に立ち向かうことができない。場所が悪いから向こうの武器の方がこの武器より使い勝手がいい。それらを総じて『相性の良し悪し』と呼ばれるものが、武器を使って闘う度に生まれてしまう。
そして、ミサの棍棒は通り魔のナイフに対して有効な武器となった。そもそも叩き壊す棍棒相手では、切り裂くことに特化し、頑強さの優先度合いが低いナイフ等簡単に折られてしまう。
例え数を用意していても、相手の武器が壊れないと思えば大した驚異にはならない。ならば投擲、と考えても路地裏の狭さではうまく身動きがとれない。そして、運良く逃げられたとしても、
パパン、パン!
今度はリナの拳銃が狙いを定めている。しかもミサと通り魔が闘っている間に取り付けたのか、
結果、射線を避けるために、自らに不利な武器を持っているミサと近接戦闘を行わざるを得なかったのだ。しかし、相手は元暴走族の関係者、通り魔よりも圧倒的に戦い慣れしていた。
(やっぱり……動きが素人くさい)
刃渡りの小さいナイフを二本まとめて叩き折り、顔面に振り降ろした一撃をかわされながら、ミサは内心で通り魔の戦い方を分析していた。
(不意打ちに特化しているからってわけでもない。むしろ何か……)
大振りの一撃をしゃがんでかわし、そのまま身を沈めてリナの援護射撃の射線から外れながら、四つん這いで地面に手をつき、威力をつけながらつっこんでいく。
しかし、今度は通り魔の靴に仕込まれたナイフを、身体を起こしてかわさなければならなかった。
体勢を崩しつつも、どうにか武器は手放さずに通り魔の方を向き続ける。
(大きな力を使っていたはずが逆に振り回されて、身体が追いついていないような……)
横目でリナを一瞥してから、棍棒を握り直す。流石に鉄製なので、その重量から、ミサの腕はすでに疲れで握力が落ちかけていた。
そもそも服といい、武器もみんな旦那譲りなのだ。いくら修羅場を潜っているとはいえ、本来戦闘担当ではないミサでは、やはり荷が重かったのかもしれない。
「リナ、交代!」
「やだメンドい」
「てめぇ後でぶっ殺す!!」
等と言いつつも、リナは銃口を上に向け、ビルの上に取り付けられている配管や補強用の鉄材に弾丸を当てて、通り魔に当たるように外し落としていく。
今ので弾が切れたのか、リナは弾倉を取り替えながら、ミサの隣に移動した。
「エアコンのやつがあれば結構効くんだけどね~……ところで外側でエアコンと繋がってるあれってなんて名前?」
「知るか」
取り留めもない雑談だが、息を整えるには十分だった。
ガララ、と物同士がぶつかり合う音が響く。同時に身構えた二人の前に立ち上がったのは、所々巻き付けた布が捲れ、取り付けていた鞘が数本落ちた、あの通り魔、のはずだ。
「うげぇ……」
「そりゃ目も隠すわ……」
男の顔に対しての印象はなかった。
美醜を感じる以上に……顔面から飛び出さんばかりに盛り上がった眼球の異形さに戦慄を覚えたからだ。
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