アクトゥワリサード(2)
能面との戦闘を終えた景壱は気がつけば寝台の上に寝転がっていた。
記憶はハッキリしている。ナイフを握っていた感触もある。あれが夢だとは思えなかった。
ふと時間が気になりそのままの状態でスマホの画面を見る。
すると、身に覚えのないアプリケーションが目に入る。それは
何だろうと興味を惹かれ景壱は何も考えることなくそれをタップする。
【ようこそ、砂島景壱】
すると、真っ黒な背景に白い文字がお出迎え。
それよりも、なぜ本名が表示されているのかわけがわからず少しだけ怖くなった景壱である。
【はじめる】
最初の文字と入れ替わるようにして表示された【はじめる】をタップする。
瞬時に画面は切り替わり、アイコンにもあった正二十面体が画面の中心でくるくると回り始めた。
それを見て何かしらのロード中なのだろうと考えた。
くるくる回る正二十面体を見続けること数分。
やがて画面全体が一瞬だけ真っ白になったかと思うと景壱の本名が画面上部に表示された。その横に【生存ポイント】その下には【称号】【ユニーク情報】【ショップ】【アイテム】と書かれたボタンが映し出された。
生存ポイントのところに2000とあるが何を意味しているのかさっぱりわからない。
それから、何が売っているのだろうかと、課金もしたことない景壱はただの興味本位でショップをタップした。
すると、形や色の違うナイフ、忍びを思わせる手裏剣、クナイなど
下へ、下へスクロールさせてゆくと一番下に、
【オプターティオー】
と書かれた正二十面体のアイコンを見つけ、その横に表示された交換生存ポイント数を見て開いた口が塞がらなくなる。
【9999999999999】
「…………」
このオプターティオーと書かれたやつ以外のアイテムの交換生存ポイント数は500か10000くらい。対して、オプターティオ―は桁が違う。流石に兆まで行くと言葉を失ってしまう。
でも、その圧倒的存在感に興味を惹かれるのも事実。もしも交換したらどうなるのか思考を巡らせる。
そもそも、この生存ポイントの意味がわからない。どうやれば増えるのかが不明である。
またあの空間に行けば何かわかるのかもしれない。根拠のない確信を景壱は抱いていた。
「どうやって行けばいいんだろう……」
寝台の上で目を瞑りそんなことを考えていると、いつの間にか眠ってしまっていた。
翌朝、もう一度スマホの画面を確認する。そこには正二十面体のアイコンは顕在していた。もう夢とか妄想とかではないのかもしれない。
登校中、授業中、昼休憩、ずっと昨日のこと──特にどうやればあの空間に行くことができるのかを考えていた。
五時限目も六時限目の今も先生の目を盗み、スマホ画面に表示された自分の本名と生存ポイントを眺めたり、ボタンをタップしたりしていた。
称号をタップしてみると、
【試練を乗り越えた者】
と言う称号を手に入れていた。
それから指を動かしユニーク情報を見ると、昨日の戦闘で使った照準器に似た片眼鏡の情報が載っていた。
【モノクルサイト】
それがあの片眼鏡の名称らしい。
【百発百中のモノクルサイト。照準を合わせるには、片眼鏡を掛けている方の目を開き、片方の目を閉じる必要がある。そして、五秒の間、的を見続けなければならない。的が定まれば照準マークは緑色に変わる。しかし、定まっていた的が照準外に出てしまった場合は百発百中の効果を失う】
これがモノクルサイトの説明らしく、昨日の戦闘でやった使い方は間違っていなかったことがわかった。
そして、ショップをタップしようとした時だった。
「スマホを弄るな、没収だ」
六時限目の地理の先生に見つかってしまった。
それから、授業が終わると職員室に連れて行かれ説教を受けた挙句、スマホは一週間没収と言うことを言い渡された。
自業自得なので何とも言えないが、これで昨日のことについて一週間はわからずじまいとなってしまった。
とは言っても一週間でどこまでわかるのか曖昧である。
「ただいま」
夕方のこの時間は誰もいないのに癖でついつい言ってしまう。
靴を脱いで玄関を上がり、一直線に自室へと向かう。
スマホを没収されて特にやることも思い浮かばないので、妹──
「いたっ!」
ダイブした時、景壱の脇腹に硬いものが刺さった。
ジンジンと痛む脇腹を抑えつつ起き上がると、そこには没収されたはずのスマホがあった。
「どうなってんだ……」
脇腹の痛みよりも、スマホが帰って来た喜びよりも、なぜここにあるのか理解できないことに不安を感じた。景壱は自分のスマホを凝視する。
すると突然、スマホがバイブレーションを始め、
『他のプレイヤーがあなたを対戦に選びました』
スマホからボイスロイドでも搭載されているかと思ってしまうほどのロボ感満載の声が聞こえて来た。
『ステージに転送します』
スマホにそう言われる。すると、景壱の体は徐々に薄く半透明になって行った。
「は? え?」
慌てて体を触るも箇所によっては貫通するのでどうしようなかった。
『転送完了 ステージ──
脳内に響く転送完了の声と共に目を開き、続けて場所の名前を聞いて驚いた。
「通ってる学校じゃん」
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