第2話 迎え梅雨
朝からぐずついた天気だった。まるで、僕の心を映し出しているようだ。
「早く帰りたい…」
そうつぶやいた瞬間、
「どうしたのwwwそんなに学校が嫌なんww?」
……こいつ…人の気も知らないで…
「そうだよ。目の前にいる誰かさんのせいd」
僕の言いたいことは最後まで言うことはなかった。なぜなら―
目の前にいたクラスメイト、田中が僕の頬を引っ叩いたからである。
「お前、口の利き方には気をつけろって言ったよな?」
やっぱり、こいつには歯向かえないや。
「…すみませんでした。」
「分かればいいんだよw分かればwwww」
田中はそれだけ言うと、満足そうに教室から出て行った。
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・
放課後、僕は傘をさしながらある通りを歩いていると、気になる看板を見つけた。
「『喫茶rain』か…」
妙に惹かれるなにかがあったのか、気が付くと僕は扉の取っ手を手前に引いていた。
カランコロン
「いらっしゃいませ。カウンターへどうぞ。」
「どうも…」
カウンター内にいた女の人が微笑んだ。
「お飲み物はどうしましょうか?」
「えっと…カフェラテで…」
「かしこまりました。」
それだけ言うと女の人は奥へと姿を消した。
店内で一人になった僕はスマホを取り出しメッセージを確認した。やはり、田中からのメッセージが半分を占めており、思わずアプリを閉じてしまった。すると、
「おまたせしました。」
僕の目の前にカフェラテが運ばれてきた。
「いただきます。」
一口飲んでみると、ちょうどいい温度でとても飲みやすかった。ほんのり甘く心が温まると同時に僕の目からは涙が零れた。
「なにか悩み事でも?」
女の人は優しく聞いてきた。僕は悩みを吐き出した。
「実は―。」
女の人はなにも聞かず黙って話を聴いてくれた。
全てを話し終えると女の人は、
「怖かったですよね。実は私もクラスメイトから下にしか見られていないときがありまして…けれど、人生で見てみると意外と何てことないことだったりするんです。実際卒業してから振り返ってみると、ほんとちっぽけなことで悩んでたんだなーって思ったんです。って言っても、今はそれがすごく辛い事にしか思えなくなっているので、紙に書き出してみたりするといいと思いますよ。」
と言ってくれた。
たしかに、相談するのは気が引けるし、紙に書き出すなら出来そうだな。
スッキリした気持ちでカフェラテを飲みほし、窓の外に目をやると、ちょうど雨が止んだようだった。
「もう、帰らなきゃな。ごちそうさまでした。」
「はい。ありがとうございました。」
カランコロン
『喫茶rain』から出た僕は雨上がりの空を見上げた。そこには、雲の切れ間から覗く透き通った青空があった。
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