降りしきる雨
琴乃葉
第1話 小糠雨
疲れてしまった、何もかも。いっそ楽になれたら―
そんなことを考えながらとぼとぼと歩いていると、
「あっ、雨だ。新学期早々ツイてないな」
しとしとと雨が降ってきた
仕方ないので、小走りに雨宿りできる場所を探した。すると―
「ん?こんなところに喫茶店なんてあったっけ?」
私の目の前にこじんまりした雰囲気の良さそうな喫茶店を見つけた
「『喫茶rain』か…ほかに入れる場所も無いしな…」
カランコロン
「いらっしゃいませ。カウンターへどうぞ。」
入ってみるとそこには、黒髪ポニーテールが特徴的な女の人が優しく微笑みながら迎えてくれた
「あ、ありがとうございます」
「お飲み物はどうしましょうか?」
「えっと、なにか温かいものをお願いします」
「かしこまりました。」
女の人は私の注文を聞くと、奥に消えていった。キッチンにつながっているのだろう
私はぼんやりと店の中を見回してみた
あまり広くない店内、柔らかい光を出している小さくて綺麗なシャンデリア―
「お待たせしましたホットミルクです」
運ばれてきたホットミルクは優しい甘さで冷えた心に沁みわたっていくようだった
「ところで、お客さん…なにか悩み事でもあるんじゃないですか?」
「なんでっ…」
「なんでって言われましても…この喫茶店に入ってきたからじゃ理由になりませんか?」
女の人はこの喫茶店について話してくれた
「ここ、『喫茶rain』は雨が降る時のみ開店します。そして、入れる人は貴女のような悩みを抱えた人だけなんです。よかったら、話してスッキリしませんか?」
私の視界がじわっとぼやけた。そしてぽつりぽつりと口から言葉が零れた。
いきなりの引っ越しで周りの環境に馴染めず、毎日に不安を感じていること…全て話したら心の
「どうですか?悩みって意外と他人に話すとスッキリするんですよねー…って、こんなこと話していたら雨止みましたね。雨宿りとしてはよかったかしら?」
「ほんとありがとうございました。また会えるといいですね。」
カランコロン
「また会うか…できれば悩みがない状態で会いたいもんですね。」
そんな彼女の独り言は誰も居なくなった店内にぽつりと響いた。
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