人を愛する

人が愛しいんだと、ある人は言った


私にはそれが分からない


名を知られているというだけで

通りがかりに言葉の刃を向けられる貴方がどうして、人を愛せるの

人の群れの片隅でひっそり息をしている私でも、愛せないそれを


私はそこまでの領域に達せない

いつか変わるものなの?

死ぬことばかり考えていた私が、

老後を心配する程度には死ぬのをやめたように?


急に悲劇に襲われたあの人だって

本当に急で

襲ってきたのはほかでもない、「人」


救いの言葉をさしのべるのも「人」なら、

追い打ちをかけるのも「人」


疲れるんだ、とても とっても

人と人が違うことが、面倒くさくて いやなんだ

心が見えなくて、恐れてばかりで


どうか私をこれ以上傷つけないで

私からは絶対に傷つけないから

私も人を愛してみたい


でも、私だって人間だから

返ってこない愛を注ぎ続けることなんてできないし

仇で返ってきたらもう、口もききたくない

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る