3-9 残す
「ねえ…、かをる子
その…、深い地下にある、かをる子姉の本体って…、どのくらいの大きさなの?」
サッちゃんが、かをる子さんに聞いた。
サッちゃんは、『かをる子』をきれいにka-wo-ru-koと発音する。
そのwoの発音が、実に自然なのだ。
「うん?大きさ?」
と、かをる子さん、『大きさ』の具体的な意味がわからなかったようだ。
「ああ、それ、わたしも知りたいな。
大きさって、かをる子さんのエネルギーの大きさのことだよ。
ねえ、サッちゃん、そうだよね?」
と、あやかさん、サッちゃんに聞いた。
サッちゃん、大きく頷いた。
それを見て、あやかさん、さらに確認のために付け足して。
「かをる子さんは、地下に、どのくらいのエネルギーを残しているの?」
「うん?残して…いる?」
と、かをる子さん、今度は、あやかさんに聞き返した。
「そう、かをる子さんの持っているすべてのエネルギーのうち、地下には、どのくらい残しているのかってことよ」
と、あやかさん。
「ああ、なるほど、そういう感覚での『残す』か…。
そうだね…、地上に出ているエネルギーの中心は、この、かをる子の体を作り、維持するためのエネルギーだからね…。
それが…、う~ん…。
で、そうだね…、はっきりしないけれど…、70パーセント…、いや80パーセントくらいなのかな…」
「すると…、地下には20パーセントくらいは残っているということなのね」
と、あやかさんが確認すると、
「いや、違うよ。
逆だよ。
地下にあるのが80パーセントくらいだよ。
サチとあやか、地下にあるエネルギーの量を聞いていたんだろう?」
「えっ、ええ、まあ、そうだったけれど…。
え~っ、でも、まだ、そんなに、地下に残っているのね」
「残っているって…、それで、さっき、どう捉えていいのかわからなくなったんだよ。
ずっと言ってるだろう、地下にあるのが本体なんだって。
だから、それを、残している分だなんて考え方はしたことがないんだよ」
「そうか…」
「それにね、地下の本体の周りには、わたし以外の、余分なエネルギーもけっこうあるんだよ。
だから、そっちのことを聞いているのかな?とかなんとか、いろいろ考えてしまったんだよね…」
「余分なエネルギー?」
「ああ、わたしを形成しているエネルギーとは別のエネルギーでね…。
地下の、さらに深いところから湧き出てくるエネルギーだよ。
全部は必要ないもんで、余分なものは捨てるんだけれど、それを遊びで龍の形にして放出していたのが、妖魔なんだよね…」
と聞いて、おれ、疑問が急に湧いて、つい、本題には関係ない質問をしてしまった。
「でも、妖魔は、きれいな形で月齢に従って、大きくなったり小さくなったりするよね?
これは?」
「だから、それが遊びなんだよ。
妖魔を作るときに動きを決めておくんだよ」
「動きを決めるって?」
「う~ん、そうだね…、現代的な言い方をすると、あらかじめ、動きをプログラミングしておく、と言うとわかりやすいかな?
ちょっと違うんだけれど、まあ、似たようなものだよ。
満月までは、あのように動き回るだけにしておいて、日ごとにエネルギーを増やし、満月以降は、外に出るたんびにエネルギーを放出させて、小さくしていく…。
そのエネルギーで妖結晶ができるようにしてあるから、満月の時に仕留めると、大きな妖結晶となる…。
その分、強大なエネルギーを持っているので、もの凄く強いけれどね」
「なるほど…」
「わかったかい?
ククク…、長い間持っていた疑問が解けて、ホッとしたろう、ククク…。
それじゃ、話を戻すけれど…。
ねえ、あやか、わたし自身のエネルギーについてだけれどね。
この体を作るのに必要な分だけ、ここに持ってきている。
ただそれだけのことなんだよ。
当たり前のことだろう?」
「それだと、そのエネルギー全部持ってきたら、すごく強いかをる子姉になるの?」
と、サッちゃんが聞いた。
「それはできないよ」
と、かをる子さん、すぐに『持っきたら』というサッちゃんの仮定を拒否。
「どうして?」
と、サッちゃん。
「それは、わたしが…、わたし全体が、ここに出てくると言うことになるだろう…。
そうしたら、そのあと、どうなるのか、わからないじゃないか…」
「うん?」
「全部、こっちにきてしまったらね、今、わたしが…、だから本体がいるところがどうなってしまうのかわからないだろう?
戻るところがなくなりでもしたら、地下からのエネルギーの補給もどうしたらいいかわからないし、だから、わたしだって、どうなるのか、ということだよ。
ちょっとやってみようなんてやるには、リスクが大きすぎると思わないか?」
「そうか…」
と、まだ、半分納得しきれないような顔をしているが、サッちゃん、とりあえずわかったような返事をした。
それにしても、かをる子さん、このような質問にまで、ちゃんと答えてくれているんだと、おれ、感心した。
だって、ねえ、今までの話、ある意味、自分の短所に直接繋がるような感じのことじゃないですか。
だから、普通なら、隠しておくようなことだと思うんだけれど。
「それじゃ、何パーセントくらいまでなら、持ってこれるの?」
と、今度はあやかさん。
「そんなこと、やってみなければわからないよ」
と、かをる子さん。
そのとき、チャイムが鳴った。
美枝ちゃんが来たようだ。
あやかさん、次に言おうとしたことを引っ込めて、とりあえず、話はここで中断。
さゆりさんが、すぐに立ち上がって玄関に出て行った。
その動きを受けて、黙って話を聞いていた吉野さんが立ち上がって、テーブルの上を片付け始めた。
それを見て、サッちゃんも立ち上がって、すぐに手伝い開始。
おれも、最後のポテトフライ一つを口に放り込んで立ち上がり、片付けに加わった。
食器を下げ終わると、吉野さん、
「こっちはわたしがやるので、もういいですよ。
あとで、コーヒーをお持ちします。
サッちゃんも、今日は向こうで話を聞きたいでしょう?」
と、サッちゃんも食堂の方に戻るようにと促した。
食堂に入ると、あやかさん、入り口のところで待っていて、おれの顔を見ると、ニコッとして、
「場所を変えるよ」
と、客間の方を顎でさした。
みんなも、もう、向こうにそろっているようだ。
話し声から、美枝ちゃんだけでなく、北斗君たちも一緒に来ていることがわかった。
あやかさんと並んでソファーに腰掛けると、少しの間雑談。
落ち着いた頃に、まず、あやかさん、さっきから、かをる子さんと話していたことの内容を美枝ちゃんたちに伝え始める。
いつも思うんだけれど、あやかさんって、こういうの、すごく上手だ。
きっちりとまとまっていて、やや時間はかかるものの、ほぼ、完璧に伝える。
おれなんか、聞いていて、復習になる。
途中でコーヒーが来て、やや、間が空いたが、すぐに続行。
これで、別々にいたときにあやかさんが得た情報は、ちゃんと、美枝ちゃんと共有されたことになる。
「早いほうが良さそうですね」
と、あやかさんの話が終わったあと、すぐに、美枝ちゃんが言った。
もちろん、妖結晶を、お父さんの会社の金庫から持ってくることについて。
「わたしもそう思うの。
明日、みんなの都合は?」
と、あやかさん、美枝ちゃんに聞いた。
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すみません、腰痛で、かなりペースが落ちそうです。
まあ、ぎっくり腰というヤツ。
動くのが億劫で、時間があっても、つい、ゴロゴロしてコロナウィルス関係のテレビを見てしまいます。
リアルタイムでもの凄いものを見ているんだな、と、思いながら、動き全体、自粛しています。
で、ペース、遅くなりますが、今後も、よろしくお願いいたします。
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