3-6 実は…
というところで、おれ、すごく気になることが出てきた。
せっかく生じた話の合間、ちょっと話を飛ばしちゃうかもしれないけれど、もう、そんなこと気にしないで、思い切って聞いてみた。
「ねえ、かをる子さん…、萱津が到着口から出てきたときのことなんだけれど…、で、おそらく異変に気が付いたからなんだろうけれど…、すぐに何か口に入れましたよね。
あれは妖結晶ですよね?」
「ああ、あの時ね…。
そうなんだろうね」
「あの時、アイツから来る気配が、すぐに、大きくパワーアップした印象を受けたんですけれど…、ということは、萱津…でなくて…その、かをる子さんの敵、アイツも妖結晶で、力が増すということなんですか?」
「ふ~ん…、龍平もあれを感じたのか…。
わたしもね、驚いたのは、そこなんだよね。
アイツの力が、数倍に跳ね上がった感じがしたからね」
「そうか…あの感じは…。
そうなんだね、あれは人間の萱津じゃないんだね。
そのことって、かをる子さんの敵が、妖結晶のエネルギーを吸収したと言うことなんだよね?」
と、あやかさん。
「そうなるんだろうね…」
「もう一度飲んだときも、また、さらにパワーアップしましたよね」
と、おれ、ずっと不思議に思っていたことに話を繋げた。
「そうなんだよね…。
アイツの力…、あの時も、さらに倍近くに膨れ上がったんだよね…」
と、かをる子さん。
不可解なことなんですよ、と、一言付け足したいような顔をして言った。
「ということは、その、かをる子さんの敵って、妖結晶のエネルギーを、そのまま、ストレートに取り込んで使えるっていうことなんでしょうかね?」
と、おれ、さらに、疑問の中心になっていることを聞いてみた。
「う~ん…」
と、かをる子さん、少し考えるような間を取ってから。
「あの状況からは…、そうとしか考えられないよね…。
う~ん…、なるほどね…。
となると…、どのくらいまで、吸収できるものなのか…」
どのくらい?
そうだよ、あの時、かじって飲み込んだのは、カプセルに入った少量の妖結晶。
おそらく、人間だった萱津が、自分のパワーアップのために用意していたものだろう。
だから、人間のパワーアップに適した量だったはず。
空港での萱津は、それを2度飲んで、飲むたびにパワーアップした。
どのくらいまで、パワーアップできるか。
だから、もっと大きな妖結晶だったら、アイツはどうなるんだろうと思うのは、思考上の当然の方向性だ。
仮に、『湖底の貴婦人』のような大きな妖結晶をガリガリと丸かじりされたら…、堅くてかじれないかもしれないし、それに、これって、考えただけでも、ちょっと、もったいない気もするんだけれど、でも、ここは、あくまで、仮定の話として…。
小さなカプセルに入った妖結晶であれだけのパワーアップになるんだから、大きな妖結晶のエネルギーを吸収できたとなると、いかに、かをる子さんが大きなエネルギーを持っているとはいっても、かなうものなのかどうか…。
「あの時の萱津のエネルギーって、かをる子さんと比べて、どうだったの?」
と、あやかさん。
「多いか少ないかの話なら、もちろん、比べものにならないくらい、わたしの方が多いよ。
でもね…、今のわたしのエネルギー、そのほとんどは、この体を維持するためのものだからね…」
「戦うという意味では?」
もちろん、あやかさんの興味はこのこと。
戦いに使えるエネルギーで比較してどうなのか。
「う~ん…、そうだね…」
と、返して、かをる子さんの話はそこで止まってしまった。
「はっきり判断できないの?」
と、あやかさん。
「判断ね…。
それなんだけれど、エネルギーの量を、どう考えていいのか…。
この辺がね…。
う~ん…、実は…、戦うと言われてもね…、わたしには、何をどうやってアイツと戦うのか、わからないんだよ…」
「えっ?」
あやかさんだけではなく、みんなも、『えっ?』の心境。
「だってさ…、わたし、今まで、戦ったってことないからね…。
もちろん、人間に寄り付いているときには、その人間が戦ったことはあるよ。
でも、それは、人間同士の戦いで、それを感じていただけだからね。
そのまねならできるんだけれどさ…」
「なるほどね…。
相手が人間なら、か…」
「あっ、そうそう、そのこと、例えば、なんだけれどね…」
と言って、かをる子さん立ち上がり、椅子の後ろ側に行って、空いているスペースに立った。
なんだか、急に目が生き生きしてきた。
皆が注目していると、体の周りがもやっとし、そのもやっとしたものが徐々に濃くなり、やがて渦を巻きだして、かをる子さんを覆った。
と思うと、モヤモヤが消え、かをる子さん、戦闘ゲームなんかで、よく美少女が着ているような、ちょっと露出度の高い鎧を着けていた。
頭にも、ヘアーバンドのような、銀色の甲。
中央に、大きな赤い宝石。
かをる子さんの気品ある美しい顔にピッタリだ。
軍を率いる女王様といった感じ。
右手には、剣を握っている。
鎧兜がちょっと洋風の感じがするのに、剣は純粋な日本刀。
アンバランスのようでいて、逆に斬新な感じ。
ただ、鎧は、服の上に着いていた。
もちろん、それでも格好いいんだけれど、ちょっと…でなくて、うんと残念な感じ。
服がなければ…、かをる子さん、グラマラスな体つきだから、超、すごいかも。
「こんな姿で戦えば、魅力的だろう?」
と、かをる子さん、ニコッとあやかさんに笑いかけた。
後ろを向いてみていたあやかさん、露骨に『やれやれ』という顔をして、
「服を脱いでやれば、うちの人を始め、男性は喜ぶと思うよ。
でもね…、最近、そんな鎧作り、やっていたの?」
「うん、まあ、夜、暇なもんでね。
ゲームを見てたら、いいなと思ってね。
私に合ったもの考えて、詳細なイメージ作りをしていたんだよ。
うまくできたんで、早く見せたくてね…」
「でも、最近は、服は本物を着ているんだからね。
戦いになった時、服を脱がなくっちゃ、それ、着けられないよ」
「そういう時は、最初から、服も、自分のイメージで作っておくよ…。
それより、この鎧、本当に、銃弾、はじき返せるんだよ」
なんだか、かをる子さん、とても楽しそう。
でもな…、かをる子さん、人間相手の戦いなら、その経験を生かすことはできるんだろうが、今回の相手は、変なエネルギー体の怪物だ。
相手の弱点もなにも、いや、そもそも、相手がどんな存在なのかもはっきりとわかっていない。
確かに、どう戦っていいのかわからない、というのは納得できる。
と言うことは、この鎧、日の目を見ないかも…。
うん、ちょっと残念だな。
かをる子さん、鎧を消し、椅子に戻って、また、話を先ほどの話題に戻した。
「戦いというか…、アイツとの直接的な接触はね…、やられた時の、鳥に寄り付いているときの3回だけ…。
まあ、そのお陰で、どうやられたのかはわかっんだけれど…。
だからといって、わたしとしては、そのあと、何もしていないからね」
「攻撃は、しなかったのね」
「だって、攻撃のやり方なんてわからないし…。
次から、アイツがいることに気が付いたときは、離れて観察していただけだからね」
「そうなのか…」
と、あやかさん、ちょっとしょんぼりした感じ。
当然、簡単にやっつけることができるんじゃないの、と思っていたのかも。
そのとき、有田さん、
「それで、かをる子さん、その、鳥の時、どのような攻撃を受けたんですか?」
と、具体的なことを尋ねた。
「うん、それがわかったのは3度目の時だったんだけれどね。
何か、細いものが伸びてきてね…。
これ、たぶん、物質とまではいっていないような、濃度の濃いエネルギー体なんだと思うんだけれどね…。
それに吸われたように思うね。
わたしの意識は、その細い管のようなものが、わたしが寄り付いていた鳥に触った途端、電撃を受けたような感じではじかれてしまったんだけれどね…」
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最近、書くペースが遅くなっています。
つい、コロナウィルス関連のテレビを見てしまっていて…。
ウィルスの特質を想像しながら現在の日本の対応を興味深く見ています。
ねえ、情けないほどに無能な指揮官のために、ずるずると敗北していく現状って、小説よりも驚きの連続ですよね。えっ?こんな時に、こんなことやってるの?って感じで。
このウィルス、その特徴、わかってきただけでも今までにない感じで、これを、名前が付いているから未知ではないなどと言って時間を無駄にしている様も、滑稽ですね。現場の人間が苦労するわけです。
老人ばかりでなく、最近は若い人も苦しむことがある帯状疱疹、あれは、水疱瘡のウィルスが体にずっと潜伏していて引き起こされる病気のようですが、このウィルスも同じように、体内で長く潜伏していくんじゃないかとか、小説的には、人の遺伝子に何らかの作用をしないのかな?などなど、勝手なこと考えて…
まあ、だから、小説、あまり進んでいないということなんです。
でも、一応は頑張っていますので、ペースは遅くなりますが、これからも、よろしくお願いします。
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