第2話 その能力に徐々に気づき始める
横断歩道を渡り切って、歩道を歩いていたぺし子の横を2台の車が通り過ぎていった。後ろの車が前の車にピッタリとくっついている。いわゆる煽り運転ってやつだ。
ぺし子が「あらまぁ」と思った…途端、白バイがどこからともなく出てきて後ろの車は、あえなく御用となった。スピード違反かな? あとで聞いたところによると、追い越し禁止車線で前の車を追い抜こうとしたから捕まったらしい。ふうん、運転しないからそういうことはわかんないけど、煽ってるやつは捕まっちゃったんだだね。今日はなんだかスッキリすることが2回もあったな。
しかし、ぺし子はふと考え込んでしまった。
コンビニの駐車場でのおっさんの事故も、煽り運転の車が捕まったのも、偶然といえば偶然だけど、ぺし子のその時のどす黒い願望が瞬時に叶えられたような気がした。
「どけ、ババア!」と言われた瞬間はすっごく頭にきて思わず「死ね」と心の中で言ってしまった。が、別にオッサンに対して殺意を持ったわけじゃない。おっさんが事故ったのは、ぺし子のことを「ババア!」と言った天罰だ。だけどその天罰を下したのはホントに天、つまり神様なのだろうか? 神様ってそんなに瞬発力あるんだろうか?
もし自分が無意識に望んだことがそのまま起こるとしたら? ぺし子がオッサンに天罰を下したことになり、つまりはぺし子が神ってことになる。ぺし子はそれまでの人生で、色々とやらかしてきたことは少なくないが、人に殺意を持ったことはない。本気で「死ね」と言ったわけじゃなから、オッサンは死なずに済んだ。今回は大目にみてやったのだ。…すごいなぁ私、とぺし子は自画自賛した。
煽り運転のこともそうかもしれない。「あらまぁ」とぺし子が思ったとたん、白バイが登場したわけだ。「あらまぁ」という穏やかで単純な4文字ではあったが、「あらまぁ、あの馬鹿運転手、マジむかつくウジ虫は公開処刑にして頭の皮剥いでやればいいのに!」みたいな、かなりエグイことを思ったのだ。
しかし元来、優しい性格の(だと自分では思っている)ぺし子だから、すぐさま気持ちを変えて、お母さんのように「悪さするとおまわりさんに逮捕されちゃいますよ」と同時に考えたのも確かである。すると白バイが現れたというわけだ。
ぺし子はもしかしたら、自分はなにかしらの「恐ろしく都合のいい能力」を持ってしまったのではないかと思った。ためしに「袋の中の醤油せんべいよ、お買い得30パーセント増量大袋になれ!」と言って袋の中を見た。願いは叶わなかった。なんだ気のせいか。。。
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