「出会い」

双子は自宅へ帰るために

神社の石段の上で少女と別れ、

少女はまだ残っていた僕らの方を見る。


「ねえ、お姉ちゃんたちは…」


…その時、カツコツと石段を上る音がした。


上ってきたのは一人の年配の男性で、

その手には大きな旅行カバンが握られている。


男性は少女を見ると、

驚いたような顔をする。


「おや、夜行列車で揺られている時に

 流れ星が落ちていくのが見えたから、

 寝起きで慌てて降りて来たんじゃが、

 …もう、先客が来ておったか。」


…その男性の顔に、

僕はどこか見覚えがある。


すると、少女がおずおずと聞いた。


「おじさん…あんまり地元じゃ見ない顔…だあれ?」


すると、男性は「ほっほ」と笑い、

一枚の名刺を差し出した。


「天文学の博士でな、名をヨコミゾというんじゃ。

 いずれはこの辺りに大学を構えようと資金集めを

 している最中でな…ところで嬢ちゃんは流れ星は見たかい?」


それに、少女は困ったように目を泳がせると、

神社の裏手を指差す。


「流れ星ならここに落ちたの。

 …でも、大きな塊は空に飛んでっちゃった。

 青い小さなかけらだけなら地面にあるけど。」


すると、ヨコミゾ氏は

「ほうっ」と神社の方へと歩き出し、

クレーターを見て大興奮する。


「おお、これは間違い無く隕石が落ちた跡だ。

 青いかけらはその断片か?嬢ちゃん、

 落ちた時のことをもうちょっと詳しく

 話してくれないかね、ええっとメモは…」


と、カバンをゴソゴソしたところで

ヨコミゾ氏はハッと気がついたような顔をすると、

バツが悪そうに少女の顔を見る。


「ああ、嬢ちゃん。もしかしてこの辺りに宿はあるかね。

 流れ星に夢中になって駅を降りてしまって、

 宿のことを失念してしもうた。辺りに知り合いもいないし…」


すると、少女は困ったように首を振る。


「あの、この辺りに宿はないんです。

 …もしよかったら家に泊まっていきますか?

 寝具はお母さんに話したら貸してくれると思うし、

 お父さんはどうするかわからないけど…。」


その表情と顔のあざを見て、

男性は何か察したかのように

少女の頭にポンと手を置く。


「そうか、だったらお父さんに泊めてもらえるか、

 私からも話してみよう。なあに、そういう人は、

 面白い話を一つ二つすれば許してくれるさ。」


そして、男性はカバンの中から小さな麻袋を二つ出す。


「さ、嬢ちゃんも手伝ってくれ。

 その話のタネになるものを拾わんとな。

 親御さんに話をするのはその後だ。」


少女は驚いたように袋を受け取るも、

どこか嬉しそうに地面に落ちたかけらをひろう。


その光景を木々の陰から眺めた僕らは、

次の願いを叶えるためにキューブに話しかけた…

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