「メモ」

僕はユウリの言葉に耳を疑う。


病院、いや美術館にもいた銃を持った青年、

…あれが僕の未来のすがた?


僕は必死に否定する。


「いやいやいや、そんなことないって。

 僕が将来あんなにカッコよくなるわけないし、

 第一身長だってあんなに高くないし、

 声だってイケメンボイスだし!」


それを聞いたユウリが僕に白い目を向ける。


「それ、なんか自慢に聞こえる。」


「…えっと、ごめんなさい。」


でも、あの青年と女性がなぜあの場にいたのか。


ナンバーずを破壊して回っているのはわかるとして、

そこに至るまでの経緯が僕には分からなかった。


でも、それを聞けるかどうか、

再び彼らに会えるかどうかも怪しいところ。


…未来は連続していないから。


あの女性の言葉が嫌でも耳に残る。


だが、何はともあれ、僕は昨日の美術館のことも含めて、

二人に自分の身に起きたことを話しておくことにした。


考えてみれば、下手に隠すからこそ、

こうして互いに傷つける結果となってしまったのだ。


ユウリもやっちんでさえも僕のする話に耳を傾け、

ラリーで移動した時間が割と早めであったこともあり、

夕暮れまでに時間に余裕を残して僕は事のてん末を

話し終えることができた。


「…そっか。マサヒロくんはナンバーずと意識を共有したからこそ、

 私たちより先に彼らの正体が分かったというわけね。」


ユウリの言葉に僕は素直にうなずく。


「で、どうするんだ?マサヒロの話じゃあ、

 俺たちはラリーを止めることはできないようだし、

 俺は、このまま参加し続ける方向でいいと思うけど?」


やっちんの提案に、

ユウリは「そうね」と同意した。


「と言うか、もう抜けられないでしょう。

 ルールにはスタンパーになった以上、

 参加者は強制的にラリーの場所に飛ばされるってあったし、

 せめてラリーがなぜ行われるのかその理由でもわかれば、

 …あ、そうか。」


そう言うと、ユウリはゴソゴソとポケットを探り、

中から四つ折りの紙切れを出してくる。


「なんだよ、それ?」


たずねるやっちんに、

ユウリは紙を広げながら答えた。


「さっきのラリーで未来の私からもらったメモよ。

 ほら、スマホをひろってもらったでしょ、

 あの時に一緒に渡されたものなの。

 何かヒントになるかもしれないと思ってね。」


そうして僕らはメモをのぞき込み、

全員が頭のてっぺんに「?」を出した。

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