No.04 「持ち出しロボット」

「楽屋裏」

大型アリーナの控え室。


トントンと一本のタバコを箱から出すと、

髪とヒゲを伸ばした小さな黒眼鏡の男は

それを口にくわえる。


「ああ、これ?煙かったら言ってくれ。

 三年前までは金欠でご無沙汰していたんだが、

 最近無性に欲しくてな…まあ、こんな状態だからさ…」


そう言って百均ライターでカチリと火をつけ、

思い切り吸い込んでから長々と白い煙を吐く。


「えーっと…あーあー、そうだった。

 まず、どこまであんたが知っているかは

 わからないがとりあえず教えておこう。

 …現在、ナンバーずは十二体いる。」


『禁煙』と書かれた貼り紙を完全無視し、

男は二口目を吸う。


「ナンバーはそれぞれについているが、

 前のが壊れりゃ次がそのナンバーになる感じ、

 壊れちまう理由は個体によって様々だが…

 まあ、大方十二体はいると思ってくれればいい。」


そう言うと、男はタバコを口にくわえながら

奥に置いてあったギターケースを手に取ると、

中から長身のマスケット銃のようなものを取り出す。


「で、こいつがナンバーずを破壊するアイテムだ。」


銃には引き金と弾倉がなく、

引き金部分には小さな四角い穴、

弾倉部分には琥珀色の液体の詰まった

ボトルが一本、取り付けられているのみだ。


「…要はこいつが欲しかったんだろ?

 そのためにここに来たと。」


男は暴発の可能性を全く考慮に入れず、

ぽいっと投げやりに銃を渡す。


「…ああ、そうそう。言うのを忘れていたが、

 ただ持っているだけじゃあ、

 そいつはその辺のくず鉄と一緒だ。

 キューブについていた端末をセットして

 ようやくスタート地点になる。」


男の言葉の通りに端末を差し込むと、

琥珀色の液体がかすかに光ったように感じられた。


「この銃は子供の持つキューブに反応し、

 ナンバーずのいる位置まで飛ぶことができるアイテムだ。

 ただ、仕留められるのはナンバーずが動きを止めた時、

 スタンプを押された時点から数分以内だと思ってくれ。」


そして、男は先手を打つように

首を振ってこう続けた。


「どちらにしろ、向こうに行けるのは

 子供がスタンプを押した後だ。

 その後の采配は任せるが一筋縄じゃあ

 いかないと思ったほうがいい。」


そしてボソッと、


「…そんな顔するなよ。

 俺もできていくルールを後付けで

 知っていく他ないんだからさ。」


と続ける。


「あと、先発の人間がいることは言っておこう。

 それが誰かは自身で確かめてくれ。

 最後までたどり着けば自ずと目的も達成できるさ。」


男はタバコを鏡台の机でもみ消すと、

キューブの影響で別の場所へと転移する相手に対し、

パチンと指を鳴らしてこう告げた。


「そうそう、三年越しになるがこうも言っておくか、

 じゃあ、新たなブレイカーとして楽しい冒険を。

 愛と平和でラブ&ピース!」

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