「ユウリの目的」

そうして見せられたデジタルの新聞記事には、

昨年の日付と『品川ミカちゃん(11)』という

名前と女の子の顔写真。


「いなくなったのは冬休みの半ばだった。

 彼女は他校の子とバディを組んで参加していたの。

 でも、その子の話を急にしなくなって。

 ラリーに行くって言ったのを最後に学校に来なくなったの。」


目元を腫らしながらユウリはうつむく。


「だから、私もラリーに参加することにした、

 ミカに何が起きたのか、今どこにいるのか知りたかった。

 でも参加してみたら、こんなに怖いことだったなんて…

 本当にごめんなさい。」


そうして僕らに謝るユウリの背中は本当に小さくて、

二週間前に転校してきたその日から始めて、

僕は…ああ、こんなに華奢な子だったんだな、

と改めて感じた。


「じゃあさ、謝るくらいなら

 俺たちの勇姿を最後まで見て行けよ。」


「え?」


すると、やっちんがユウリの前で仁王立ちし、

腕を組んで見せる。


「ぶっちゃけ、今回一番手柄を立てたのはマサヒロだ。

 だけど、俺だってやるときはやるし、成り行きとはいえ、

 参加したんなら腹くくってクリアまで突っ走るぜ?

 逃げもビビりもしない…な、マサヒロ?」


それは、いつものやっちんの見栄きり。

だが、僕も「そうだね」と相槌を打つ。


「だろ?だからメソメソ泣くなよ。

 見たとこ、ユウリはラリーの知識があるみたいだし、

 チームの頭脳として働いてくれ、俺たちはその手足だ。」


そうして握手のために右手を出すやっちん。


「大丈夫、俺たち簡単に死なないし、裏切りもしない。

 お椀の舟に乗ったつもりで行こうぜ?」


その言葉にユウリは僕らを見た後、

ぷっと小さく笑って見せる。


「…私たち、一寸法師なの?可愛いわね。」


そして、やれやれと言わんばかりに首を振った後、

やっちんとついでに僕の手を握る。


僕もやっちんと手をつなぎ、

これで三人分の輪っかができた。


「私が知っている限りのことは教えるけれど。

 本当に、頼んでもいいのかしら。」


やっちんはそれに「もち、あたぼうよ」と力を入れる。


「ユウリは自分のできることをしろ。

 俺たちは俺たちができることをする。

 目指すはミカとかいう女の行方を見つけることと、

 スタンプラリーの全制覇だ!」


そして全員で「おうっ」と掛け声一発、

気合いを入れる。


その瞬間、僕らとユウリは友人になり、

スタンプラリーの初日は終わりを迎えた。

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