「近所のヒッピーおじさん」
「ほう、君たちが新しい
スタンパーになるんだね?」
ゆるいロン毛に小さな黒丸メガネ。
口からアゴまで髭を生やしたそのおじさんは、
駄菓子屋のばあちゃんのカウンターに
座りながらそう言った。
なんでも、ばあちゃんの孫にあたるらしいが、
噂だけで本当かどうかはよくわからない。
「すたんパー?」
やっちんがウサギをかたどった巨大グミを
お金と一緒にカウンターに置きながら、
おじさんにたずねる。
「そう、スタンプラリーに参加する子を
俺たちはそう呼んでいるんだ。」
そう言って、おじさんはお釣りを渡すと、
僕とやっちんと、その後ろでモジモジ
しているユウリを見る。
「参加はキミたち三人でいいのかな?
二人がよくつるんでいるのは知ってるけど、
そっちの後ろの子は初めて見るなあ。」
そんなおじさんに、やっちんはペリリッと
包装を剥がしながら説明をした。
「こいつ、ユウリっつうの。俺たちの学校の同級生。
スタンプラリーもこの子から教えてもらったんだ。」
そう言って手のひらほどの
グミを大口開けて食いちぎる。
「ほうほう」
興味深げなおじさん。
「じゃあ、ユウリちゃんの友達で、
他に知っている子がいるんだ?」
ユウリはその言葉にモジモジしながらも、
こくんと小さくうなずく。
「うん、他の学校の子が話してくれたの。
スタンプが全部集まればお願い事が叶うって。
私も…その、お願いしたいことがあるから。」
そう言って、小さくなるユウリに、
おじさんは指でハートを作って見せた。
「ラブ&ピース、誰かは誰かと愛で繋がっている。
いいねえ、いいねえ。それで仲間と冒険か。
じゃあ、ラリーの参加を許しちゃおう。
人数分あるから、みんなめいめい持って行くんだよ。」
そして、カウンターの下からゴロゴロ出してきたのは、
手のひらほどの三つの四角いキューブ。
立方体で、てっぺんに
小さな黒い長方形のでっぱりがある。
「この黒い部分は取り外しができるんだ。
これをスマホやパソコンに繋げると、
ルールやその他の細かい情報が出てくるよ。
まずは接続して、いろいろ試してみるといい。」
そうしてめいめいキューブをとっていくと、
おじさんはもう一回ハートマークを作ってみせる。
「じゃあ、スタンパーとして楽しい冒険を。
愛と平和でラブ&ピース!」
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