第11話 俺の気持ち(広夢視点)
「·····何やってんだ、俺」
凛の病室から出て、ドアを閉めたあと。俺は、思わずため息をついた。
あんな喧嘩だったというのに、思わず、凛への想いを口走ってしまうところだった。
それだけならまだしも、凛は、俺の想いに絶対に気づいていない、これが今日の告白未遂の収穫。
「ありがとう」
そう嬉しそうに笑った顔を見ていると、なんだかなぁと思ってしまう。俺が、恋愛感情を凛に持っていると知った時。凛は、あんなふうに笑ってくれるだろうか??
それに、凛が抱えている悩み。これを、自分が受け止められるかも不安だ。あんなに激しい感情の渦巻く凛の心は、凄く強いはず。俺は、すぐに心が折れるし、入院生活での負担など、分からない。
俺が支えられるのか。そして、俺と交流することは凛にとって負担ではないのか。
これは、俺の心に重くのしかかった。
ガラガラガラっ
「ばあちゃん、今日は遅くなってごめん」
ほとんど独り言のように呟き、中に入る。
すると。
「ばあちゃん!!起きてたのか」
ばあちゃんが、珍しく起きていた。
病気とかとは関係なく歳のせいで体も弱ってきているのに。
ばあちゃんは、俺を穏やかな目で見ていた。
「広夢、ちょっとこっちに来なさい」
命令口調だけれど、提案するような、誘導するような、不思議な口調で、ばあちゃんが言う。俺は、誘わられるがままに椅子に腰掛けた。
「広夢、なんか悩んどるね」
―断定。
やっぱり、年の功だろうか?
「悩むことも大切だけど、あんまり悩みすぎてもいけない。相手の気持ちは推し量ることはできても本当のところは相手にしかわからんのだから、思い切って行動してみてもいいんじゃないかね? あまりゆっくりしている暇も、ないかもしれないよ。」
対人関係の悩みだと、どうして分かったのだろう。
でもまぁ、そんなことはどうでもいい。
大切なのはー
「ゆっくりしてる暇がないって、どういう意味?」
もしかして、命に関わる病気なのだろうか? あんなに元気そうに笑っていたけれど、車椅子だし、もしかしたらそんなこともあるかもしれない、、、
想像していることが怖すぎて、ばあちゃんを凝視する。
ばあちゃんは、そんな俺の視線を静かに受け止めて··········目を閉じた。
最初は考えているのかと思ったけど、どうやら。
寝ているようだ。
「はぁぁぁぁぁぁ」
でも。そう、悩んでいる暇も無いかもしれない。行動しておけばよかったと、後悔したくない。
「ありがとな、ばあちゃん。また来るから」
入ってきた時とは対照的に、少し微笑んで部屋を出た。
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