第10話 病室にて2(凛視点)
「ごめん」
広夢くんの、つらそうな声を聞き、私は後悔し始めた。なんで、こんなことを言っちゃったんだろう?ひどいことを言ってしまった。ただ、私は広夢くんが羨ましかっただけなのに。ほんと、私は私が嫌いだ。
「私こそ、ごめんね。ごめん。こんなこと、言ってもしょうがないのに·····」
広夢くんを見れなくて、俯く。
つい先程までは仲良く勉強していたのに、なんでこうなっちゃったんだろうか。
「ごめんね。傷つけるつもりは」
「·····」
言葉を重ねるけれど、あれだけ酷い言葉を言ってしまったあとだもん。広夢くんが聞き入れてくれないのも、自然なことだ。
「本当に、ごめんね。やっぱり、無理だったのかな。もう来なくていい、っ?!」
言いながら、広夢くんを見ると。その顔が、凄く近くて、思わず赤くなってしまう。
「な、何?」
そう言うと、広夢くんは静かに私を見つめながら口を開く。
「本当に、ごめん。凛が、すごい重いものを抱えて悩んでるんだなって分かった。それなら、毎日能天気に暮らしてる俺なんかが凛に会う資格はないのかもしれない。」
「いや、そんな·····!」
何が言いたいんだろうか?
だからもう会わない? 会えなくなっちゃうの?私が病気のせい? こんな卑屈なせい?
「でも。俺は、会いたいんだけど」
「え?」
「あの、なんか告白みたいだけど。あの、俺は凛のことをもっと知りたいと思ってて。だから、その。」
知りたい。その言葉は、私を暖かく包み込んだ。あんなに突き放してしまったのに。まだ、私のことを知りたいと言ってくれる広夢くん。
「ありがとう。嬉しいよ。そんなふうに思ってくれてるなんて。ごめんね、こんな空気にしちゃって。次も、会ってくれる?」
「う、うん」
広夢くんは、確かに頷いてくれた。
「ありがとう·····ほんとに。じゃあ、あと何回かだけ。話し相手になって下さい」
「喜んで」
その夜。
「知りたいだって。知りたいだって!!きゃーーー!」
ベッドの上で、ひとり小さな声ではしゃぐ。
私には、広夢くんがそんなことを言ってくれたのが夢みたいで。
これは、きっと神様がくれたご褒美。
その夜、私は幸せな夢を見ることが出来た。
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