第7話 謎の少女(広夢視点)
俺は、今週もばあちゃんのお見舞いだ。
親友のーという感じの付き合いではないがー佐藤泰斗が所属するバスケ部では、今週試合があるらしい。
「広夢も来いよ!」
そう誘われたけれど、俺は頷くことができなかった。だって、この前喧嘩した時に、母さんと約束したんだ。
「ばあちゃんのお見舞いは、しっかりと行く」
約束は守らなきゃ!という思いで守っているのではない。俺はそんな真面目ではない。
喧嘩した時、母さんが言ってたんだ。
ーお母さん(この場合は俺のばあちゃん)に、私だって会いたいよ。もう、あと何回会えるかも分かんないんだからー
ぼそっと呟いてただけだから、もしかしたら本人は言っている自覚はないかもしれない。というか、無いだろう。
でも、その瞬間、ちょっと思ったんだ。
俺が一緒にいるだけでなにかできるなら良いかもな、って。
だからー俺は、内心試合行きてえとか、バスケ部途中入部ありだって言ってたな、、入りてえとか、そんなことを思っても口には出さない。少なくとも、あと一年は。
「おはよっす!鈴木さん!」
「あらあら、元気ね。でも、あまりうるさくしないでね。」
「すいません。あ!おばあちゃん!元気?」
挨拶って、してると気分が良くなるよな。
俺は、基本的に挨拶が好きだ。だから、ここでも挨拶する。
うるさいかもしれないけれど、間違いなくその方が雰囲気が明るくなるし、外のくうきっていうもんを運んであげられる気がするーきっと、病院の雰囲気が怖いからっていうのもあるんだろう。ほんのちょっと。
人を元気づけるのも好きだ。看護師の鈴木さんとは仲がいいし、名前の知らないおばあちゃんとも仲がいい。
·····元気づけられる人、いないかなー?
俺がそう思い、広場を見渡すと。
あ。
腕に点滴を付けて電動車椅子に座る、1人の少女。その子は長い髪を下ろしていて、なんだか大人っぽくて。でも、愛嬌のある顔っていうの?よくわかんないけど。不思議な子だ。なんでこんなとこに?入院してるのか??
目が合ったまま、なかなか、その少女から目が離せなかった。少女も、目を見開いて俺を見てくる。勘違いではない、はず。
なんだ、これ。
自分に驚きながら、そっと目線を外して背中を向ける。その途端。
「あの!!!」
え?俺??
混乱した思考回路のまま、一歩、二歩、と進む。。そのまま歩き去るか·····?
いや、振り向く。目が合ったが、なんだか自信が無い。声をかけられるなんて、まさか知り合い?
とりあえず、その少女の元に歩く。近づくと、車椅子に座っているせいかその子はやけに小さくて(本人に言ったら怒るだろうか?)、一生懸命に生きている感じがした。
「何?俺たち、会ったことあったっけ」
少女が俺を見つめていて、俺も見ていたから、見つめ合う形になっていたことに唐突に気づき、思わず冷たく言ってしまう。
「いえ、そういう訳じゃなくて。」
なんだか悲しそうな顔をしながら、考え込んでいる。俺のせいか?なんでそんなに悲しそうな顔してるんだよ。
「あの、私、凛です。3階の、305号室です」
「あ、うん」
なんて返せばいいのかわからなくて、でも、いくら気になるとはいえ、初対面の少女ー凛ーに対してじっくりと返事を考えるのもなんだかおかしくおもえて。混乱して、冷たい相づちを打つ。俺、なんか冷たくね??
何も言わない空間が嫌で、俯いてしまう。
やばい、今の俺、最高に、、なんというか、なよなよしてるし、女々しい。
「来週、同じ時間にここで会えますか」
凛の方から切り出してくれた。ほっ。
って、え?!こ、ここで会う?!って、なに、これ?え、こんなに簡単に誘われた?!
「ぇ、、ぁ、うん」
驚きすぎて、俺が慌てて顔を上げて返事をした時には、既に凛は歩み去っていた。
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