第4話 前向きな思いと運命の出会い(凛視点)
いつも通りの毎日。
起きて、ぼんやりと時間の経つのを感じる。
ご飯を食べて、少し中学校の勉強をしてみたり、テレビを見てみたり、広場に行ってみたり。
ただ、勉強はここ最近していない。諦めたくはないけど、やっぱり感じる。時々、なんとなく息苦しくて夜に起きること。嫌な予感がすること。
些細なことだ、と笑い飛ばしてしまえることだけれど、それは少しずつ私の不安を掻き立てる。
でも、もうそれも人生。だから、諦めて今を楽しむーと言っても楽しみなんてないけれどーことにしたんだ。
そんなある日のこと。
私は、朝起きて、急に思い立って朝早くに広場に出てみた。少し寒くて、でもそれを感じるってことはまだ私生きてるんだ、なんて思ったり。
ふと、空を見上げて思う。
5年後も、ここからは同じ空がみられるのだろう。
でも、それを私が見ることは、多分ない。
その時、私はどうなっているのだろうか。
·····気分が落ち込んでしまった。
涙が零れないように、心を落ち着かせて、ゆっくりと前を向く。
ーでも、それは今は考える時じゃない。まだ生きてる。それが大切なんだー
そう、自分に言い聞かせて。
「おはよっす!鈴木さん!」
「あらあら、元気ね。でも、あまりうるさくしないでね。」
「すいません。あ!おばあちゃん!元気?」
急に、騒がしい声が聞こえた。
みると、私と同い年くらいの男の子。
背がすごく高くて、20センチ差?くらいだと思う。まぁ、私が車椅子だから実際はもっとあるんだろうけど。
その子は病院には場違いな明るい声で、でもそれは嫌とかではなくて、むしろ、外の明るいくうきを運んできた。
ふふ、と思わず笑ってしまう。
すごく元気な人なんだな。
この人のおかげで、しんみりせずに済む。
ーあ。
私がその人を見て微笑んでいると、不意に目が合った。
その瞬間、その人から目が離せなくて。
これは絶対に絶対に絶対に何かの縁。
そう思った私が、恥ずかしさとか遠慮とかをかなぐり捨てて声をかけるまでに、そう時間はかからなかった。
「あの!!!」
走ることは少し不安なので、大きめの声を出す。その人は一歩、二歩、と進んでから振り向いた。目が合って、少し首を傾げた後にこちらへ歩いてくるのが見える。
·····良かった。気づいてくれた。
私にとって、それは大きなことだった。
「何?俺たち、会ったことあったっけ」
「いえ、そういう訳じゃなくて。」
その人が私に向ける冷たい視線に、言いたいことが言えずもどかしい。そして、考えて考えて、ようやくでてきた一言は。
「あの、私、凛です。3階の、305号室です」
「あ、うん」
これ以上何を言えばいい?もう一度、自分に問掛ける。
「来週、同じ時間にここで会えますか」
そういうのが、精一杯だった。
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