6:「市場にて」~物々交換~

「あらコナマちゃん!今朝も来てくださったのね。おはようございます。お願いってなんですの?」

 コナマ、と呼ばれたその少女。年頃は12~3歳くらいであろうか、とテツジは見当を付けた。そして気付いたことがあった。

(子供……?そういえば俺は今まで、この村で子供を見たことが無い!

 何故だ?たしかにここは環境が厳しい。育たないのか?しかし、俺のいた世界では、ここより環境が厳しい貧しい国でも、いや、むしろそういう国の方が子供は多いという例はざらだった。妙だな。何かありそうだ)

 そしてその少女の姿を観察してみる。先ほどのケイミーよりさらに縮れた短い、赤い髪。その髪も顔も服も土埃で薄汚れてはいるが、顔立ちはなかなか可憐で、なにより普通の人間と変わったところが無い。

(だがこいつは、下半身が……!)

 子供らしい丈の短い服の裾から見える、すんなりとした両脚。だがその肌は、チャコールグレーのゴワゴワした鱗に包まれていた。足先の指は短いががっしりと太く爪も大きい。そしてなにより、地面に垂れた大きく太く長い尻尾。

(知っているはずの動物だ。何だったか……イグアナ?それともワニか?)

「あのねオーリィ、アタイね、今すっごくシケててサ。ツブツブが全然無いんだヨ。でもね、やっぱりオーリィの蛙が欲しくて……これなんだけどサ」

 見た目の年齢よりさらに幼さを感じる、やや舌足らずの声でそう語りながら、少女は大きく膨らんだ懐から何かを取り出した。

「……まぁ!とっても立派な大鼠じゃないですこと、コナマちゃん」

(鼠?あれが?!いや確かに……鼠だ。だがあの大きさは何だ!)

 コナマが尻尾をつまんでぶら下げているその「鼠」。腹の膨らみようが、優に大人の拳2つか3つ分はある。

「今のアタイのとっておき。これとネ、蛙……交換して欲しいんだけどナ……

 お願いだヨ、オーリィ」

「あらあら!お願いってそれですの?そんなに遠慮なさらないで。こんなに立派な鼠じゃありませんか。もちろんよろしいですわよ。ただ……」

 と。そこまで言ったオーリィの顔つきが、急に固い真剣な表情に変わったのを、テツジは見逃さなかった。

「『とっておき』というのは?『今シケてる』ともおっしゃったわね?鼠が捕れていないということですの?でしたら、これを私に下さって本当に大丈夫?だって『あれ』が……」

「うん『それ』はネ、大丈夫だヨ。埋めてあるのがまだあるし、いざとなったら鼠は農場でお仕事すればいつでももらえるからサ。今日はオーリィの蛙が欲しいんだヨ」

(?『あれ』だの『それ』だの、何の話だ?気にはなるが……)

 さてはたして、何か重要なことなのだろうか?それすらテツジには見当がつかなかった。ただその時、その一瞬の二人の妙に深刻な顔色には、確かにかなりの違和感を感じたのだが。

「わかりましたわ。では交換ということにしましょうね。ただどうしましょう、こんなに大きな鼠と交換では釣り合う蛙はなかなか……そうね、これならいかがかしら?私も今日のとっておき。特大の……黒ガマガエル♪」

 オーリィがタライから取り出した真っ黒なガマ、あの鼠には流石にやや及ばないものの、充分に匹敵する大きさ。そして、それを差し出した時の最後の一言と笑顔は、子供をあやすようなおどけたものであった。

(フン、この女も、子供相手ならあんな表情をするんだな。だが少々……)

 切ないものだ、と思ってしまったテツジ。どんなに優しい表情を見せても、肝心の両の眼があれでは、と。しかし、すぐにそんな自分を嗤った。

(つまり俺にも、そう思うような心がまだ残っているということか?

 しっかりしろ、くだらんぞ、未練だ、そんなものは!!

 俺は同情なんてものは、とっくに捨てたはずだったろうに……!)

「うわでっケー!!こんなガマ、アタイ初めてだヨ!いいノ!?」

「もちろん。他ならぬコナマちゃんのお願いですし、こんなに立派な大鼠と交換なんですもの。私もうれしいですわよ。

 ……テツジさん、こちら素敵ないただきもの。今日のお昼はちょっと期待なさってくださいね」

(いや、うすうす覚悟はしていたがやはり、あの鼠は食用なのか。多分今までのメシでも出されたことがあるのだろうな。干した蛙を旨い旨いと食っていた俺だ、いまさらといえばいまさらだが、あらためてあの鼠を見ると……なかなか精神にこたえるな)

 と、その時隣の店から、中年女の店主が声を掛けてきた。

「おやおや、ホントにずいぶん立派だねぇ、その鼠。オーリィ、少しだけどこれをあげるから持っておいきよ。『匂いコオロギ』!」

「まぁ!ありがとうございます。でもよろしいんですの、いただいて?高価なものですのに」

「いいんだよ、さっきのあんたの歌でさ、今日は早くからあたしのところもお客がたくさん。おかげさまでバッタがすっかり売り切れちまったよ。そのお礼さ。『匂いコオロギ』は大鼠料理にゃ欠かせないだろう?

 大切な新入りさんに食べさせる鼠じゃないか。美味しく作っておやりよ」

 虫屋の女店主がオーリィに差し出したそれ。死んだ虫を乾燥させたもののようだが……「コオロギ」と耳では聞いたものの。大人の親指ほどの大きさといい、真っ黒な色といい、トゲだらけの脚といい……生理的に圧迫感を覚えさせるそのビジュアルは、テツジの知っているあの秋の虫の概念をはるかに超えていた。

「あのそれは……どうやって使うものなんです?」

 流石の強情なテツジも、これは聞かなければ不安だった。

「干した『匂いコオロギ』のはらわたはね、名前の通り、とても香ばしい香りがしますのよ。この世界のスパイスの一つなんです。大鼠はお味が旨味でしっかりしている分臭みも少々強くて。それを消すのにこれを使うんです。

 お腹からワタを取り出して、お塩と一緒にすり鉢でよく混ぜて、鼠のお肉に摺りこんで下味に……定番レシピ!

 のこった頭や胴体は、鼠スープの時一緒に煮込むといい隠し味に……」

(なかなか……精神に……こたえるな……

 俺は食い物には、好き嫌いを言わない主義なんだが……!)

「ン?新入り?あっ、そーか!変なデカブツがそこに居るから誰だコイツって思ってたンだけど、お前が今度の新入りなんだナ?」

 図らずも知ってしまったこの世界の料理の実態に胸焼け顔のテツジを、そうズケズケと言って指をさすコナマ。無遠慮はなはだしい振る舞いに心中苦笑いしながらも、だが、実はテツジにとってはそれはむしろ痛快であった。

(『変なデカブツ』か!まぁ確かにそうだな、今の俺は。フフ、こいつはいい!

 どこの世界でも子供だけは同じと見える。正直だ。嘘が無い……

 いや!しかしいつかは、こいつもずる賢い大人になってしまうんだろうがな!

 俺にあんな仕打ちをした、あいつらみたいに……!)

 テツジの胸に束の間おとずれた爽やかな感情。しかしそれを、彼は油断だと思いなおした。彼の憎悪と猜疑、その源である「あいつら」。二度と思いだしたくも無いその面影を、強いて思い出すことでその油断を修整すると、ちょうどその時、またあの聞き捨てならない反応が。

「それでオーリィが、今度は『お隣さん』なんだよネ……そっかぁ……あの時はいろいろあったけド、今は……良かったネ、オーリィ!」

(いろいろあった、だと……?しかもそれは、こんな子供でも知っているようなことなのか?くそっ!あの女にいったい何があったというんだ?)

「……っていうかオイ、デカブツ!!お前、オーリィにワガママ言ったりメーワク掛けたりしてないだろナ?……ン?どうなんだヨ!!オーリィはな、この村のアイドルなんだゾ!美人でキレイでカワイクって、キレイでカワイクて美人で……おまけに村一番の美人なんだからナ!!

 あ、それとオーリィが美人だからっテ、エッチなことしてないだろナ!!」

(ぐっ……よりによってこの娘……ただ美人としか言ってないだろうそれは!!

 俺の一番、カンに触るその言葉を……!いや待て待て、落ち着け……ここは落ち着け。こいつは所詮子供だ。甘やかしてくれる大人に懐いて、『美人』の意味もわからずに、大人どもの言葉を無邪気に繰り返して使っているだけかも知れん。よくある話だ。俺が大人気なくなってどうする……)

「あ、でもナ?エッチなことはナ?オーリィがいいヨって言ったら、してもいいからナ!まずチッスから始めて、チッスわかるチッス?それからナ……」

(いや……こいつは大分ませてるな……全部意味がわかって言ってる気もしてきたぞ、ううむ、そもそも……

 俺は、子供は相手にしたことが無いから苦手なんだ。頭が痛い……!)

 へどもどし始めたテツジと、妙な方向に話が進んで流石に少々困り顔のオーリィ。ところがそこへ。

「何バカ言ってんのよ、このこどもバカトカゲ!ほんと生意気なんだから!!」

「ア痛!……うわ、ケイミー!さっき帰ったんじゃねーのかヨ?!」

 不意打ちで頭を叩かれたコナマが振り返った背後に、あのケイミーの姿。

「耳飾りを片方落としちゃったの。さっき飛び降りた時かなって……あった!

 良かった~、これお気に入りなのよ」

「道理で……何か何となく、その辺でケイミーの臭いがすると思ったんだヨ。さっきズ~ッとオーリィの隣にいたからサ、臭いが移ったんだとばかり……」

「臭いがわかっててコレ、見つけられなかったのアンタ?なんか焼きがまわったんじゃないの、ヘボ猟師!!」

「ヘボ言うナ!!」

「あら?ちょっとそれ……黒ガマ?!ヘボのくせに随分フンパツしたわね?」

「いえそれはね、コナマちゃんがこれと交換して欲しいとおっしゃるものですから……ほらどうですこれ!大きな鼠でしょう、ケイミーさん?」

「……!ちょっとオーリィ、アナタってば!!あああ言わんこっちゃない、一番タチの悪いのにさっそく引っかかって……こらコナマ!!」

「あーもゥ、だからケイミーが居なくなるまで待ってたのにサ……うるさいんだよネ、コイツ」

「アンタね……黒ガマは!オーリィのお店でも一級品のいい蛙なのよ!数も少ないし味も良くて、しかもその大きさなら!小粒4つだって買う人は買うわ!!それに引き換え!確かにその鼠、けっこう大きいけど、アンタが本気出したらその程度の駄鼠、いくらでも捕れるでしょーが!!」

「いえまぁ、私は小粒2つがガマの決まった売値ですし、種類はあまり……。

それに重さでいくとこの鼠の方がずっと重いですし…」

「安すぎだって言ったでしょーーーー!!それに重さとかの問題じゃなくて!

レア度の問題なの!!

……ちょっとオーリィ、ごめんアナタは黙ってて、話が進まないから。

とにかくコナマ!その黒ガマはオーリィに返しなさい。交換なら交換でもいいけど、そっちの普通の灰色ガマくらいにしときなさいよ!」

「嫌だイ……カプリ!ヘヘ~ン、もう一口食べちゃったもんネ~~~ダ!!

……ていうかコレ、うめェーーーーーーーーー!!皮プリップリだヨ!!」

「あっコラ!!ちょっとこのバカまったくもぅ!!」

「うふふ、美味しいでしょうコナマちゃん。残りも早めに召し上がってね?」

「わーい、アタイ、オーリィ大好き!!」

「はぁ……しょーがないわねこのバカトカゲったら……いいことコナマ、今日はもういいから、今度何か捕れたらオーリィにおごってあげなさいよね」

「わかってるヨ、うっさいなァ……」

(くっ……うるさいは、こっちのセリフだ……いつまで続くのかと思ったぞ。

俺はこういうキャンキャン騒がれるのも苦手なんだ……!)

「で?コナマ、アンタまだちゃんと自己紹介、テツジさんにしてないでしょ?『チッス』とか余計なことばかり言ってたけど!!」

「ヤ?誰だそのケツジっテ?」

「そ・こ・の・一際大きい人!新入りさん!あとケツジじゃなくてテツジ!!」

「あ、そかそか……オッス、テツビン!!」

「わざとやってるわよねこの口がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「イテテテテテテテテテテ!ほっぺたつねンじゃネーヨ、カンコ鳥!!

……オッス、テツジ!!」

「ようやくまともに挨拶したわね」

(オッスはまともじゃないだろう!!まぁ名前をちゃんと覚えただけでも……)

「もっぺんわざと間違えようと思ったけド、流石にくどいかもって空気読んダ」

(もしかして最初からわざとか!!こ、この小娘……手がつけられん……)

「アタイはコナマ。『こどもドラゴンのコナマ』だゾ。カッチョイイだロ?」

「コナマちゃんは、こう見えても村一番の大鼠猟師ですのよ。匂いで獲物を探すのが得意で、巣穴に隠れた大鼠を掘り出して捕まえるんです」

「まぁ『ドラゴン』って言っても、多分コモド島のあれだけどね」

(こども……コドモ……コモドオオトカゲか!!)

「そーだヨ。お腹から下がナ、トカゲみたいになってるんだよネ……ホラ!!」

服の裾を、自分でいきなり捲り上げた。なるほど、へその下あたりからタイツのように肌が鱗ですべて覆われている。が、問題なのはこの際そこではない。

……下に何も穿いていない。

「だっ……ちょっとアンタ!パンツとか腰巻くらい穿いときなさいよ!!」

「アタイ尻尾が邪魔で、そーいうの穿けないんだヨ。見た目『タイツみたい』だから大丈夫ダイジョーブ!」

「肝心なところは丸見えだって言ってんの!!」

「だから大丈夫だってばサ。これ以上細かく描写しなかったら、カクヨムの倫理規定でも多分セーフセーフ」

「あああああその雰囲気ぶち壊しのメタ台詞ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!

……ちょっとそこのアナタ?!アナタよア・ナ・タ!!ここら辺の数行は、読まなかったことにして!!いいわね?!」

「ヤ?ケイミー、それもめっちゃメタいゾ??」

「誰の尻拭いだと思ってんのォォォォォこのバカトカゲ!大ヴァカトカゲ!

……ガキババア!!!」

「アッこらカンコ鳥!!バカでも大ヴァカでもいいけど、その『ガキババア』はやめろヨ!!新入りにバレちゃうだロ!!」

「ハッ、隠し通せるとでも思ったの?ずうずうしいバーサンだわねまったく!!

……あのさテツジさん、コイツ、歳いくつだと思う?」

(???いや、どう見ても)「12~3歳くらいだと思いますが……」

「騙されちゃダメよ!コイツね、これで実はアラセヴだから!!」

「アラ……セヴ??」

「……around seventy years old!!70歳とかその辺だから!!」

「……なっ……70??」

「あ~あ、バラされちゃったナ~。もうちょっと新入りの事騙してよーと思ったんだけどサ。アタイはナ、ここに来る前、いっぺん死んだのが68歳なんだヨ」

「……ろっ……68??」

「ウン。チョーローちゃんが言ってたけド、こんなに若返った姿で生まれ変るのは始めて見たってサ」

「4~5歳くらいの誤差の方なら、この村にはけっこう普通にいらっしゃいますけど、コナマさんみたいな例は、多分後にも先にも無いんじゃないかって。長老様、そうおっしゃってましたわね」

「アタイ、ここに来る前は生まれつき心臓が悪くてサ、病院を入ったり出たり。一生の半分くらい、病院暮らしだったンだヨ。だから子供の頃は全然外で遊べなかったし、学校にもあんまり行けなかったナ……この体はサイコーだ!!どんなにカケッコしても、飛んでも跳ねても木に登っても、川で泳いだってヘッチャラ!!アタイは、この若さピチピチの体で、ワクワクこどもライフを毎日満喫してるんダ!!

……自分がホントはオバーチャンだなんて思い出したら、キョーザメだロ?だからナ、テツジお前もナ、アタイのことはナ、うんと子ども扱いしていーからナ!!呼び方もかわいく『コナマちゃん♪』とか、いっそ『おいコナマ!!』って呼び捨てでもいいゾ。オーリィ、お手本♪」

「ハイそれでは僭越ながら……コナマちゃん可愛い可愛い可愛い!!」

「オーリィのほっぺたスリスリ気持ちいい~!大好き!!」

「あのねオーリィ、いつも思うんだけど?そこまでコイツに合わせてやらなくてもいいんじゃない?すぐ図に乗るからコイツ……」

「でもねケイミーさん!女というものは!いつまでも若く美しくありたいものですわ。おわかりでしょう?!」

「ま、まぁ、ね……急にそんな真顔で切り返されるとちょっと引くけど」

「ましてや、コナマさんは、こんなに可愛らしい姿に生まれ変わったんですもの。それをお楽しみになるのはお気持ちとして当然です。女の遊び心!!そこに水を差すのは、野暮というものではございませんかしら?

……ハイ、コナマちゃん可愛い可愛い可愛い!!」

「くすぐったいヨ、オーリィ、キャハハハハハハ!!」

「やれやれ、変なところでノリがいいんだから、このコったら」

(やれやれは…こっちの台詞だ!!この世界に子供が見当たらない理由が、こいつを観察したらわかるかと思ったのに……そもそも子供ですらないとは!!完全に騙された!一章まるごと、俺の一人相撲もいいところだ。おまけにこの女3人のバカ騒ぎ。ただの作者の悪ふざけじゃないか!そこの…お前、頼む!この章は全文読まなかったことにしてくれ。

 俺は、シリアスイメージを崩すわけにはいかないんだ……!)

「ヤ?なんかメタいこと思ってない、コイツ?」

(人の心中独白を…読むな!!)

「まぁいいわ、ねぇちょっとコナマ!ここでアンタに遇えたのは都合がいいわ。ここんとこアンタ大分シケてるでしょ?普段だったらヘボって言ってやるんだけど、実はあたしもさぁ……大シケ。昨日の火の日の朝市、店出せなかったし。

……原因は、アンタも大体わかってるでしょ?」

「……あの『狐』だよナ?」

「そう。まったく、今まで狐なんて見たことなかったのに、どこから……?とにかく!これ以上、あたし達の狩場を荒らされてたまるもんですか!獲物が捕れないと市にも出せないし、自分達で食べる分まで農場で買ってたら大損だし!第一『狐の方が畑の兎や鼠をよく退治できる』なんて思われたら、最悪あたし達クビよ。冗談じゃないわ!『監督』に知られる前になんとか……!

……今日は二人で作戦会議といこうじゃないの、狐狩りの!!」

「オッケー、いいゼ。どこで待ち合わせるヨ?」

「ていうかアンタそのガマ全部食べちゃいなさいよ、活きが悪くなるから。あたしもさっきオーリィから買った蛙2匹残ってるし、朝ゴハンそれで済ませるわ。会議はその辺の隅っこで食べながらでどう?『鉄は熱いうちに』、なる早よこういうことは」

「ガッテンだ!……じゃ、オーリィ、テツジ、またね!!」

「ではまたお会いしましょう。狐狩り頑張って!……ふふ、行ってしまいましたね。『ケンカするほど仲がいい』、なんだかんだで名コンビなんです、あの二人は。私にとっても…大切な人達ですし……」

(俺にとっては、やれやれやっと行ってくれたか、助かった!だが……この女は妙に名残惜しそうな顔だな。別にこの村からあの二人が居なくなるわけでもあるまいに、大げさな。フン、『大切な人達』か……

 俺にはもう必要の無いものだ……!)

「やれやれ、やっと行ってくれたか、助かった」

 そこへまた、一人の男が。自分の思っていた言葉とオウム返しに同じ事を言われて思わずギクリとしたテツジ。自分が少し過敏になっているのを自覚した。

(この男は確かにあの時の……よし、こいつからなら何かいい情報が聞きだせるかも知れん。油断は禁物だが、少し余裕は持て。そしてじっくり観察だ)

 現れた男には、大きな水牛の角があった。(続)

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