第15話 必要性

 図書館でバイト中の事です。 先輩の沖田さんと同じく職員の美々さんが喧嘩をしています。


「紙の本が大量になくなったので、この図書館も完全にGノート化をしましょう」

「それでは本の良さを後世に伝えられません」


 美々はデータを貸し出す最新の技術の導入を進めたいらしく。沖田さんは紙媒体の良さを主張しています。 わたしは争う二人に挟まれて困っています。


 首を傾げながら子供の絵本くらいは紙の本でもいいのではと思います。 空調の効いた図書館でただ走り回るだけではもったいないてす。 読み聞かせも文化の一つです。 などと考えていてもケンカの中には入りません。


 机の上には折鶴かあります。 わたしは試行錯誤のすえ、鶴を折れるようになりました。


 しかし、何か忘れているなと首を傾げていると……。 カレンダーに目が止まり思い出すのです。


 あ!


 七瀬の誕生日が近い! Gノートがあればこんなミスはしません。

やはり、完全Gノート化は仕方ないのでしょうか……。 仕事も慣れてきましたが少し苦手な事があります。 沖田さんと美々さんの関係です。 本が好きなのは共通していますが仲は悪いです。


「歌葉さん、これ書庫にお願い」


 沖田さんから何冊か本を渡されます、中にはGノートの使い方なる本があります。 はーと、しみじみ思います。 そして、仕事か終わると、わたしは図書館の帰りに、例の雑貨屋に寄ります。 この雑貨屋はGノートが無くて見つけたお店です。

改めて考えるとGノートの存在は微妙です。 深く考えても仕方ない。前向きに生きていきましょう。


 雑貨屋に入るとおばあさんが出迎えてくれます。


「友達の誕生日祝いが欲しいのです。店の物を見せてもらっていいですか?」

「はい、喜んで」


 わたしは店に置かれた雑貨を見て回ります。ブレスレットにペンダント、髪ゴムにメモ帳……。 わたしはパンダのオリジナルキャラクターのマグカップを見つけます。


「高校生の七瀬には幼稚だけどいいか……」


 と、呟きます。 値段も高くないです。わたしはマグカップを持ってレジに向かうのでした。


「お願いがあるの、これをプレゼントラッピングできる?」

「大丈夫だよ」

「ありがとうございます」


 綺麗にラッピングされたマグカップを受け取り、雑貨屋を後にしました。 Gノートがあればきっと通販でプレゼントを買っていた。


 雑貨屋を後にして、七瀬の家に向かいます。この時間なら七瀬は家にいるはずだ。それから、普通にわたしは七瀬の家に入ります。七瀬は玄関で「よ!」と挨拶をして部屋に招かれます。


「はい、誕生日プレゼント」


ラッピングされた箱を鞄から出して七瀬に渡します。


「ほ、ほ、う。プレゼントを選んだ感がありますな」


 素直に喜べと思うのであったが七瀬だしなと気にしません。


「なんか、七瀬の部屋久しぶりだね」

「まねー」


 Gノートでオンラインメッセージをいつもしていたので部屋の中まで入る機会がなかったからです。ここで七瀬がGノートを取り出さないところが偉いと思うのであった。彼氏でも他の友達でもGノートを使う相手は沢山いるのに……。

 

 七瀬はポテチを取り出してわたしにすすめるのであった。うん、ポテチの味がする。わたしは七瀬と一緒にポテチを食べるのであった。小一時間、七瀬の部屋でまったりしてから帰路につくのです。七瀬との関係にもGノートは必要無く。わたしはもうしばらくGノートを買い替えるのを待とうと思ったでした。

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