第10話 還すお金
今日は図書館で働くかの回答期限である。天気もあいにくで小雨が降っていた。完全に気分はブルーである。
……。
言葉も出ないとはこのことであろう。それでも、わたしは約束の時間に図書館に着くと奥の部屋でしばらく待たされていた。このまま終わらないかと考えていると。
偉い人が入ってきて目が合うのであった。わたしは直ぐにうつむき脅えるのであった。
「前にも言ったけど他でバイトして還すより、ここで働いた方がいいかと思うのだがね」
還すお金があるのだから、何処かで働かなければならないのでこの図書館で働くのも悪くはないかもである。
「はい……」
即答したつもりが曖昧な返事になってしまった。そして、偉い人の眼鏡が光り、わたしは観察されている気分だ。
「返事が曖昧だねえ。ここで働くの?」
「はい……働かせてもらいます」
言ってしまった。もう、後戻りができない。
「決まりだ、雇用契約書とシフト表を持ってくるように言っておくよ」
偉い人は立ち上がり部屋を出ていく。そして、また、しばらく待たされてから、女性管理職の人が入ってきて、わたしは色々説明を受ける。
仕事内容は本の整理に幼児スペースの飾りつけの設営だ。また、高校生だと配慮されてシフトは少なめであった。やはり、わたしはまだ子供なのであろう。
そんな事を思いながら帰路に着く。
わたしは数日後と書かれたプラスチックの髪飾りの引換券を見る。雑貨屋に寄っていこう。手作りなので完成しているか不明の数日後だ。
雑貨屋の前に着くと灯がついている。
わたしは入口のドアを開けるとおばあさんが座っていた。
「こんにちは……」
おばあさんはこちらを向き会釈をする。
「髪飾りだね、さっきできたばかりさ」
サンゴ色のハートの髪飾りを取り出すのであった。
「綺麗……」
プラスチックでも子供のわたしには丁度いい。早速、左側の髪に着けて鏡を見る。黒髪に輝くハートは心が落ち着く気がした。わたしは満足して自然と笑みをうかべる。
「着けて帰ってもいい?」
「はいよ」
おばあさんは微笑んで頷くのであった。
「おばあさん、大好き……」
思わずおばあさんの胸に飛び込み、わたしは幸せの絶頂であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます