第8話 七瀬の自慢話

 雑貨屋からの帰った後の事であった。わたしがドラくんにエサをあげていると。


「歌葉、お友達からメッセージが沢山きているわよ」


 母親のGノートに七瀬のメッセージが山のように送られてきたそうな。渋々、母親のGノートを見ると、内容は彼氏ができたとの自慢話である。決して相談ではなく自慢であった。


 七瀬の自慢話でわたしは呪いを行う感情に近くなっていた。メッセージには七瀬の相手はサッカー部のレギュラーであるとのことが書いてあった。


 わたしは仕方なくオンラインメッセージで対応する。白い犬と柴犬がGノート上に立体映像で表示される。それから、チャットを始めると、わたしのウェブキャラクターの白い犬は『へえー』を連発する。自慢話にそれしか思い浮かばなかったのである。


『歌葉、聞いているの?』


 七瀬の問いに、もちろん、聞いていないのであった。そのまま、聞いていないと返したかったがオンラインメッセージを終える事にした。


『あ、母親のGノートだから切らないと……』


 わたしは強引に白い犬のウエブキャラクターを消してしまう。七瀬の『あんた、Gノートを早く買いなさい』のメッセージが最後に表示されるのであった。しかし、七瀬の女子力なら彼氏もできるのは納得するのであった。


 わたしは自室に戻りベッドに横になり天井を見上げる。恋ってどんな気持ちなのであろう?人生は川の流れのようであった。わたしは今、高校生……。きっとまだ子供である。今日は『突然のラブストーリー』を読む気分になれない。


 恋人が突然に隕石のように降ってくる訳がない。イヤ、逆かもしれない。

運命の人のもとに隕石のように落ちられたら……。


 うん?窓の外にドラくんがいる。エサをあげてから時間が経っていた。わたしは窓を開けて中へとドラくんを入れてあげる。


「ドラくんは恋をしたことがあるの?」


 わたしはドラくんに話しかけるのであった。しかし、ドラくんは下に降りて行き、再びご飯のようだ。わたしの相手をしてくれるのはドラくんですらない。


 独りか……。


 そう『突然のラブストーリー』の続きがあるのを思い出す。仕方がない、読んでみるか……。


『ご主人様、そんな素っ気ない対応では死神になってしまいますよ』


 相変わらず両極端な死神兼天使だ。


『セ、カ、イ、ノ、オ、ワ、リ』


 また、意味深な文書が出てきた。七瀬の自慢話を聞いて世界の終わりもいいかもと思えていた。

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