第7話 美味しい紅茶


 わたしは最近流行りの甘いお茶を飲んでいた。 台湾では普通らしいのだが大手飲料メーカーが試しに出した商品が空前の大ヒットしたのであった。 日本で何故こんな物がヒットするのかは謎である。


 で、本題はGノートでした。


 この調子だと期末テストも受けられない気がする。 わたしは数日後と書かれたプラスチックの髪飾りの引換券を見る。 わたしは頭をかきながら困惑する。


 よし、決めた。


 少し早いが雑貨屋に行ってみよう。 わたしは玄関に行くとドラくんがいた。


「ドラくん、ドラくん、一緒に雑貨屋に行く?」


 ドラくんは大きなあくびをして丸まるなるのであった。 眠いのか……。わたしは一人で雑貨屋に行くのに少し戸惑いを感じた。


 外に出ると少し暗くなっていた。


「急ごう、冬の日暮れは早い」


 ドラくんに話かけると立ち上がり一緒に行ってくれるらしい。 わたしはドラくんと共に坂を上がって雑貨店を探す。


 確かこの辺だったはず。 辺りを見回すと店内が暗い雑貨店を見つける。


 店休日か……。


 わたしはダメもとで入口をノックする。 すると、中の照明がつき、おばあさんがやって来る。 店休日だとガッツリした直後なので、わたしは店の中に入れる事に驚いていた。


「あ、あの、わたし、相談したい事があって……」


取り乱すわたしにおばあさんは店内の椅子に招き寄せる。


「あ、ありがとうございます」


 わたしが座るとおばあさんは「今、紅茶を入れるよ」と言って店の奥に戻る。 それから、数分後におばあさんはティーカップに入った紅茶を持ってくる。


「砂糖は幾つ?」

「え、え、一つで……」


 おばあさんはゆっくりと角砂糖を紅茶に入れる。


「それで、悩み事かい?」

「はい」

「わたしもあなたくらいの年頃には色々と考えたものだよ」


 わたしはGノートを壊してしまった事、Gノートが無いと生活が出来ない事、図書館の本をダメにしてしまい働いて返さなければならない事をデタラメな順番で話していた。


 おばあさんはあごのしわを触りながら考えてくれていた。


「Gノートは今の時代は必要だよ。でも、休息は必要だね。その借りた本を飽きるまで読んでからでもGノートは遅くないよ」


今の時代は必要か……。 でも、このGノートの無い時間は特別であった。 それでも『突然のラブストーリー』を読み終わってからでも大丈夫と言われた事に少し安堵した。


 そして、紅茶をすすめられて、わたしはティーカップを手に取りゆっくりと紅茶を飲むのであった。


 美味しい……。


「おばあさん、この紅茶は?」

「特別なお客様にお出しする一杯だよ」

「そんな、わたしなんかのために……」

「大丈夫、わたしもちょうど飲みたいと思っていたのさ」


 優しく微笑むおばあさんにわたしの心は癒され気がした。 特別な紅茶を飲み終わると、わたしはまた数日後に来る事を約束して帰路に着いた。

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