第4話 Gノートの憂鬱
その日の夜の事である。
壊れてしまったGノートを机に置き、『突然のラブストーリー』を読んでいた。
ベッドに横になりまったり気分だ。
『ご主人様、わたしは死神でもあるのです、わたしの運命次第では世界が滅ぶかもしれません』
突然のシリアス、さっきまでのラブパートは何だったのだ。 これも演出かな……真面目に書いているはずなのに……。
『とりあえず、胸を揉んで下さい』
は???
『天使としてのご奉仕です』
主人公は手をブルブルさせているらしい。 ま、普通は胸を突然に揉んででは困るよな。 主人公が手を伸ばすと……。
『ご主人様のエッチ!でも、素直なご主人様は大好きです』
この辺りは死神兼天使のミーサの設定上必要なセリフなのか……?
やはり、三流小説だ。
読むのを辞めようか迷ったがGノートとは違いデータを消す事が不可能なのでもう少し読んでみる事にした。
うん?
わたしは窓に近づくと雨音が聞こえる。 雨か……。 明日の天気はどうであろう?
Gノートが無いと天気予報にも不便する。
やはり、明日ショップに行こうかな……。 とにかく天気予報だ。
わたしは下に降りて行き、母親を探す。 リビングでGノートを使いテレビを見ていた。
「ねえ、明日の天気が分かる?」
「雨が上がって、晴れるみたいよ」
母親はGノートを少し操作しただけで明日の天気予報を教えてくれる。 わたしは下に来たついでに買ったばかりのインスタントコーヒーを入れる。 ほのかに香るコーヒーはわたしの機嫌をよくしてくれた。 このコーヒーは『突然のラブストーリー』の主人公がコーヒーをよく飲むので買ってみたのだ。
ふふふ、少し大人に成った気分だ。
わたしは自室に戻るとコーヒーを机の上に置く。 それから、窓に近づくと冷たい雨を確認する。 明日には上がると言っていたが、雪にならなければいいがと思うのであった。 カーテンを閉めると机の上のコーヒーを少し口にする。 改めて今日起きた奇跡のような出会いはGノートが無かったからであることを深く考えるのであった
『数日後』と書かれたプラスチックの髪飾りの引換券を見直す。
あの雑貨屋のおばあさんはGノートを持っているのであろか……? Gノートの立体映像能力によって遠隔診断も当たり前の時代である。 また、行政手続きもGノートが無いと不便である。
わたしは再び窓に近くと扉を開けて外の空気を感じる。 思うのは、この世界はとても息苦しくてわたしはGノートを蹴り壊すほど疲れてしまった事だ。
とにかく、今晩はこの『突然のラブストーリー』だけだ。 わたしはベッドに座り、再び読み始めるのであった。
それから、しばらくすると眠気に襲われる。紙媒体の本は初めなので汚さないようにと緊張したからだ。 そう、Gノートを使った読書しても久しぶりであった。
まして本なんて強制的に読まされる物だと思っていた。
わたしは慣れない事から疲れは増していくのであった。 いかん、目がチカチカしてきた。 今日はこれくらいにしておこう。 わたしは本を置き、寝る準備を初めるのであった。
「歌葉、お友達からメッセージが届いているわよ」
下から母親の声がする。
母親のGノートのアドレスを知っているのは七瀬だけだ。 中学からの悪友でなんだかんだで、つるんでいる友達である。 寝ようとして返事が欲しいとな。
この苦労がイヤになってGノートを蹴り壊したのに……。
「歌葉!どうするの?」
わたしは渋々下に降りて七瀬に返事を返す事にした。
えーと、母親のGノートなので最初は自分のウェブキャラクターを選んでと……。
わたしはいつもの白い犬にする。
『すまん、今から寝る』
えー終了と。
何通かメッセージが来ていたが見るのも面倒くさいので消去と。 わたしは二階に上がり寝ることにした。
『リン♪』
階段を上がろうとした瞬間に七瀬からメッセージが届く。 あー面倒くさい。
わたしはオンラインメッセージを選ぶ。 これはメール的な物からチャット風にメッセージをやり取りする機能に切り替えたのであった。
『わたしは寝たいの!要件は?』
七瀬のウェブキャラクターは柴犬であった。Gノートの立体映像で白い犬と柴犬が喋りだす。
『なに言っているの?返事も返さずに……』
えぇーと。
わたしはGノートを蹴り壊したと言い心配かけたと謝る事から始めた。 この調子だと幾つかの廃人ゲームでも同じ騒ぎが起きているなと頭をかく。
とにかく、七瀬経由でリア友は大丈夫と……。 廃人ゲームの方はいいや。
もう、寝よ……。
わたしはGノートを母親に返して今度こそ寝るのであった。
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